二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: デュラララ!! とある非日常と少年二人 ( No.4 )
日時: 2011/02/03 21:52
名前: 五十嵐 ◆geiwiq3Neg (ID: ADUOsQyB)
参照: 椎羅⇔五十嵐




一見すると、池袋は今日も相変わらずの“日常”であふれ返っていた。
しかし着々とまた…“非日常”がその街に忍び寄る——————



————池袋

その街には何故か妙な噂話ばかりが流れ込んでいる気がする。いや、いずれも本当にあった出来事である。
…漆黒のバイク、バーテンダーの男、ダラーズ、黄巾賊…。
時の話題は全て池袋に集中していると言っても過言ではない。
しかし、そんな池袋も…黄巾賊が内紛した後からは、たんと何も起きずに、池袋に日常が戻っていた。

「……ふぅ」

そんな町の頭上に浮かぶ鉛色の空を見上げて、望月 雅はふと溜息をついていた。

「…この所平和続きだね、池袋も」
「そうですねー、おかげで暇で暇で、暇で暇で暇で暇ってくらい暇な訳で暇です、ハイ」

溜息ついでに雅が空を見上げたままそう呟くと、傍らにいた少年も頭の後ろで手を組みながら口を開く。

そんな少年の言葉を聞き雅は苦笑を浮かべた。
相変わらず親友———もとい不知火 智弥はいつもの調子だ。彼の普通とは少しズレた喋り方は特徴的である。
そんな彼がどことなく楽しそうに見えるのは…俺だけだろうか?
さっきから落ち着きの無い様子で辺りを見渡しては、フンフンと鼻歌を唄っていた。

…俺達は見たままの、少し不真面目な高校生。
警官に見つからぬよう周りに気を配りながら、時折こうして街に出ては時間を持て余す。


そうだ、先に言っておこう…どうしても智弥に言っておかなくてはならない事がある。
彼は最近ここに越してきたばかりだからおそらく知らないだろう…池袋で手を出してはいけない住民の事を。

「智弥、この池袋には…手を出してはいけない奴がいるってのは知ってるか?」

なので俺はまず率直に相手にそう尋ねてみたが…智弥は勢い良く首を横に振った。
「何ですソレ…近づいたらヤバい人とかいるですか?」
まぁ…何故か顔は嬉しそうなままだったのだが。
だが俺はあえてその事には触れず、説明口調でこう言った。

「いいか、良く覚えとけよ。これは俺も最初は友人に聞いた話なんだけど…

 まず、一番危険なのは平和島静雄って男。バーテン服とグラサンで一目見たら分る。
 絶対に近づくなよ、俺も何回か見かけたけど…とにかく危険だ、本当マジで。
 そして二番目。折原臨也…相当ヤバい事に首突っ込んでる人みたいだから、まず関わらないほうがいい。
 後、“ダラーズ”」

「…“ダラーズ”??」

すると、ダラーズと聞いた瞬間に智弥は意外にも反応を見せた。
俺と同じく、智弥は興味のある事にしか興味がない、といった感じで
今回もまた聞き流されているのだと思っていたのだが…

「…あぁ、何か最近ここらで噂になってるカラーギャングの集まりだとよ。…正臣から聞いた話だと」
「…、そう言えば正っち、たんと姿を見せなくなりましたです。
 ———学校に入ってきた時に親切にしてくれた数少ない人だったから、とても悲しいです…しゅん」

そう言えば、黄巾賊の内紛があってから…紀田 正臣を見なくなった。
俺達のクラスメイトで、仲が良かった訳ではないが…結構ツルむ仲だったから…心配ではある。
俺がやけに情報通になったのも、正臣が俺にたくさんの事を教えてくれたからだ。
なのに…アイツ、何も言わず消えてしまいやがった。何があったのかは知らないけど…


「…あれ?みやっち、アレアレ!アレって!」

と、そんな時隣でピョンピョン跳ねながら、急に智弥はそんな事を言い出した。
「?」
疑問に思って智弥の指さす方向を見てみると…思わず俺は絶句した。

「!!!……うっ…わ…。お前相当ツイてないな…逃げるぞ!!」
「え、ちょ、何?あのバーテンっぽい人、何か珍しいねって話そうとしただけでありまして!
 だからそんなに怒られる様な真似は———」
「それだよ馬鹿!それがマズいんだよ…アイツが平和島静雄!!」

そう。
智弥が指差す先には、黒いコートを纏った奴と言い争っているというレベルではない程
白熱した喧嘩を繰り広げている————— 平和島静雄がいた。
一見すれば優男風だが…ああ言う怒っている時は超危ない。あいつ…平気で電柱もぎ取ったりするから。

「うわ…」

しかも、現に持ち上げてんぞあの男…自動販売機を片手で!周りからは悲鳴に近い声が上がっている。
つーか、あの黒コートの人…大丈夫なのか…いや、それより逃げるのが先決。

「ああ言う輩は、絶対何が何でも手を出しちゃいけない奴なんだよッ!分ったか、絶対だぞ!」
「大事な事だから二回言ったですね、ハイ。んー了解了解」

とりあえず手を引っ張る形となってしまったが、あの二人組が見えなくなるまで走り続けた。
そしてついに見えなくなった所で、改めて智弥に向き直る。
だが、智弥は二人のいた方向をじった見たまま固まっていた。そして、彼の口からポツリの言葉が漏れた。


「みやっち…僕、初めて自販機持ち上げてる人見たです。凄いというか、最早美学を感じた訳でありまして…!
 嗚呼、どうやってあんなのになれたのか“過程”が知りたいです!

 と、言う事で今日は帰ってあの人の事調べるですGoodbye!!」


「は?え、ちょ…ちょっと待—————…」

———くそ、遅かった…。
智弥が一人で自問自答して、走り去ったのを見て、俺はしまったと反省した。
しかも帰ると言っておきながら、あの二人の方へ走って行くし…まぁ追いかけないけど。

アイツが“知りたい”と思ったら最後、その知欲を満たすまでとことん追求する完全主義。
そんなアイツを追った所で止められる自信も無いし、平和島静雄…アイツには死んでも会いたくない。

だって普通に考えて怖い。

“現実”ではアイツ…平和島静雄はぞくに言う無敵。完全無欠な存在なのだ。強さで言うなら主人公以上。
たまにいるじゃん、攻撃しても死なない無敵キャラ。しかもそういう場合、攻撃力半端ねぇし。
大魔王の城の近くとか徘徊してさ…とにかく逃げるしか無理って言う。戦ったら最後、殺されるって言う。

…そんな奴に俺が、もし絡まれてみろ…死ぬ。確実に殺される。


「ったく…“だから”俺達は学校を抜けて来たんだろうが阿呆…」

俺は、智弥の消えた方向を見据えたまま、またまた溜息をついた。
雅は無造作にポケットから携帯を取り出し、時間を確認すると…ゆっくりと口の端を吊り上げ笑う。
そして、何事も無かったように一人…池袋の人混みの中へと消えていった。