二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 異世界の危機〜魔法募集中!!!〜 ( No.509 )
日時: 2011/08/18 20:13
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)

35 新種の魔物

一方、円堂と守がサッカー勝負をしていた頃———


「で……新種って、いないじゃない」

ここはレクレット森林。魔物の出現率はとても高いが、弱い雑魚モンスターばかりしか襲って来ない。
当然のように、美麗と鈴は武器を使わなくても、楽に突破のできるところだ。しかし、ここ最近、魔物の動向がおかしくなり、レクレットでさえも、命を落としてしまう人も続々と現れている。
そして、先日。王である嵐に頼まれ、新種の魔物の討伐にやってきたのだが、一向に姿を現さない。体が大きいのであれば、隠れられる場所は限られてあるはずなのだが、どんなに探しても、見つかるのは雑魚ばかり。

「美麗、帰る?」
「帰れるわけないでしょ。情報も手がかりもないなんて…恥ずかしくて国に帰れないわよ」
「それにあの下種共(げすども)に笑われるのは嫌だよね」
「鈴、犯罪者みたいな顔してるからやめなさい」

森に入ったのは確か早朝だったのが、今ではもう太陽が沈みかけている。このままでは、真っ暗な夜の道を歩いて帰ることになってしまう。魔物の動向が一定ではない今の状況で夜道を歩くのは危険すぎる。

「野宿だね」
「はぁ…今回ばかりはしょうがないわよね…後少し探しましょ」

ドカドカと前を歩いていく美麗に、ゆっくりながらも、歩きながらついてくる鈴。しばらくの間、その状況が続いていたが、一気に雰囲気を変えてしまう出来事が起きる——

「ガァァァアアア!!!」
「鈴!!魔物よ!!」
「分かってるよ。僕の耳はそんなに悪くない」

一瞬にして美麗は大きな鎌を造りだす。鈴も背中から剣を抜き、戦闘態勢に入る。彼女たちが武器を用意するということは、相当強い相手、もしくは手の内が分からない未知の敵、でなければ、本能的に手と足が先にでる。

「この唸り声…僕は聞いたことないけど、美麗は?」
「あたしもよ…新種?」
「その可能性が高いよね」

そんなやり取りをしているうちに、唸り声をあげていた魔物らしき奴は木をなぎ倒しながら、地面に足音を響かせ、ドカンドカンと歩いてくる。奴が動くたびに、地はゆれ、弱い魔物たちは逃げていく。だが、正体はまだ見えない。

「美麗…僕は左から行く」
「じゃあ、あたしは右から行けばいいのよね?」

相手は見たこともない魔物、そうなれば、今は鈴の頭脳に懸けるしかない。彼女の頭脳はずば抜けて良い、本をたくさん読んでいる秋と同じくらいだ。彼女の命令に従っていれば、大体の確率で失敗することはない。

「ガァァァァゥゥ!!!」
「出た!!」

魔物の正体は、一言で言うと、大きな熊だ。体長は五メートルほど、全身は焦げ茶色の毛で覆われ、瞳は血のように赤く、鉤爪は剣のように鋭い。あの爪で引っかけられれば、大量出血するに違いない。肉ごとえぐられてもおかしくはないだろう。

「夏未と同じくらい強いんだから楽勝よね?」
「う〜ん、ちょっと分からないな〜はっきり言うと少しやばいかも^^」
「……」

純粋と言うべきか、無駄にキラキラしているその笑顔に、美麗は言葉を失った。そうこうしている内にも、熊は美麗と鈴に狙いを定め、突進してくる。まともに食らえば、命の保証はない。

「とにかくやるわよ!!」

勢いよく振り下ろされた熊の右腕は、美麗にあたることはなく、地面にめり込んだ。

「氷雪冷花(ヒョウセツヒョウカ)!!」

高くジャンプし、木を蹴りあげ、方向転換をし、熊の動けない右手に攻撃をしかけた。
いくつもの氷で造られた花々が、突き刺さるように奴の右手にぶつかる。直後に氷の花は光を反射しながら、儚く舞い散った。

「少しはダメージが……うそ!?」

攻撃された右手に傷が残ったのは一瞬だけ、美麗が着地すると同時に傷は跡形もなく消えてしまった。

「どういうこと!?」
「美麗!今はできるだけ攻撃を仕掛けよう!!」

さっきまでのあの笑顔とは違い、今は表情が険しくなっている。これで炎愁が腕だけをやられたとすれば、すごい話だ。
すぐに次の行動へ移り変わる。ポケットから白いヨーヨーを取り出し、振り回し始めた。

「これでどう?氷柱地獄(アイシクルヘル)!!」

熊の頭上からいくつもの大きくて図太い氷の柱が光のように速く落ちてきた。腕に足に、何本も刺さり、血が飛び散る。熊は刺さった氷柱を抜こうと、暴れ出した。

「今回は効いたみたいね」
「もっと攻撃を仕掛けるわよ!!」

大暴れしだした熊は、左右にまだなぎ倒されなかった木々を抜き取り、二人にめがけて投げつける。その程度の攻撃、彼女たちには効かない。すぐに避けられる。
だが、それが誤りだった。避けるのに少し時間をかけてしまい、奴は氷の柱を抜き取った。そして——。

「傷がまた治ってる!?」
「チッ…美麗!!一斉に攻撃をしよう!」

焦りが災難を呼んでしまう。それは分かっている。焦ることによって、周りが見えなくなり、自分をコントロールできなくなってしまう。しかし、この状況で焦るな、と言われた方が無理な話だ。相手はただでさえも体の大きな相手、しかも今まで見たこともなく、話も聞いていない。どうすればいいのか。考えれば考えるほど、心が乱れてくる。

「氷破壊(アイス・ブレイク)!!」
(相手は地の属性のはず…なのにどうして効かないの……?)

地の属性—本来は氷と水に弱いのだが、この熊に関しては何も分からない。話にも地の属性だと聞いているし、どこから見ても地の属性を持っている。地属性の魔物には鋭い爪があり、ほとんどが体格の大きな魔物だ。この熊もそのうちの部類に数えるだろう。
美麗と鈴の属性は氷。この戦いでは、圧倒的に有利——のはずだが。

「こいつ、本当に地なの!?氷が全然効かないじゃない!!」
「美麗…もしかして、弱点狙わないとダメなのかもしれない」

必死の判断の末、たどり着いた答えはこれしかなかった。氷が効かない、傷口がすぐに修復する……考えられるとすれば、弱点がある。そこを狙えば、倒せるかもしれないが、問題はそれがどこにあるかだ。無駄に攻撃を続ければ魔力と体力が徐々に奪われ、最終的には底をつき倒れ、あの熊にやられてしまう。どうにかそれだけは回避したい。しかし、攻撃をしなければ弱点はつかめない。

「弱点って、どこにあるのよ!?」
「今、考えてる!!」

——どこだ…弱点は!?
熊の全体を見渡す。どこも弱点らしき場所はない。ただ気になった場所が二か所—右肩と胸の中央に十字架のマークがある。あれは一体—

「美麗!!避けてるだけじゃ、体力が奪われる!今から僕の言う通りにして!!」
「分かったわ」

その直後。美麗の頭上から熊の左腕が振り下ろされた。気が付いた時には、もう遅かった。鉤爪が目の前にまで接近していたのだ。当然避けることはできない。

「美麗ぃぃぃいいい!!!」

あの時、自分たちと同じくらいの黒い影が、飛び込んできたのは気のせいだろうか。