二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 銀魂 * 我が愛しのロクデナシ ( No.9 )
日時: 2011/02/26 22:17
名前: 燕 (ID: /kFpnDhT)





 答えは風の中




 コーヒーには砂糖とミルクをたっぷりと。それが銀時流だった。其れはもうコーヒーというよりは只の砂糖と牛乳の飲み物であった。


「ヅラァ、高杉がまたやらかしたらしいぜ」
 甘ったるい香りが漂う。その銀色は如何でもよさそうな口調で言った。
「———やらかした、とは?最近はそのような情報入ってこないが」
「・・・ああ、性格に言やあ、まだ未遂さな。っつうか、手下にやらせてるだけだとよ」
「へェ、銀時、お前もようやく新しい話題に敏感になったか。それはいいことだな」
「いンや、こないだ来たんだよあのちび助。信じらんねーだろ?」
 その言葉に俺は、コーヒーを掻き混ぜる手を止めざるを得なかった。
「・・・高杉が?お前を訪ねてきたのか、此処へ」
「ああ・・・、あいつはほんと、よくわかんねえ」
 俺は再び手を動かしつつ、銀時の阿呆のような眼に視線を移す。
「・・・・・・其れで銀時、斬らなかったのだな?」
「悪ィな、ちったぁ警戒ぐらいはしたけどよ。斬る気になれなかった。あいつももう、なんか人生に疲れたような感じだったし」
 其れは貴様の見間違いだ。心の中で小さく思った。奴は殺されるまで死なない。いずれまた、牙を剥く。今以上に激しく。


「俺達と高杉は、敵なんだよなぁ・・・・」
 銀時が小さく呟いた。俺も今、同じことを考えていたので少し驚いた。
「誰の所為なのかねェ」
 他人事のように、うわ言のように男は言う。高杉は、松陽先生を殺した奴の所為で、世の中の所為で、幕府の所為だと言うだろう。俺だってそうだ。
 ———だが、銀時は?

 高杉の言葉を借りれば、のうのうと生きて白夜叉を殺した銀時は、もう憎しみを覚えないのだろうか。
 耐えているのならば、俺はこの男を本気で凄い奴だと思う。おそらく、そうだ。一番辛い筈の男が、幾つもの怒りと叫びを殺して、今を生きているのだ。

 其れでは高杉は。そして俺でさえ、まだあの風の中で覚束ない呼吸を繰り返しているというのか。


「なぁ、ヅラ」
「・・・・・・何だ」
「俺ァ、てめーらが居たから・・・・・・」


 その呟きが、紡がれることはなかった。

 哀しげに伏せられた血の色をした眼。その姿は、まるであの頃と同じで。俺は目頭が熱いのを必死で堪えた。

 春を告げる風が、ふわりと。ただ、優しく弱く。
 其れはあの頃の血生臭さを少しだけ背負って、ゆっくりと、只ゆっくりと、血みどろの俺達を背を押してゆく。