二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【リク】ボカロ曲を好き勝手に【募集】 ( No.144 )
日時: 2011/07/09 13:44
名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

 きみは夜空の向こうにいたのかい?


#02 世界は同じく寂れて


 少女の姿をしたおばけはぼくに言った。

 「あの夜空の向こうで、あの遠い場所で、銃声が沢山聞こえる」

と。しかしぼくはそこまで耳はよくない。彼女の言葉に耳を傾けず、ケーキを頬張ると、頬が落ちそうなくらい美味しかった。どこかで銃声が鳴り響いても、それでもケーキでほっぺたは落ちるのだった。彼女がケーキを美味しそうに見つめていたので、食べれるのか不明だけどとりあえずケーキを刺して彼女の口へと持っていく。
 彼女は口を開いてケーキを食べた。……うわあ、幽霊って実体を消せるのか。
 
 筋道の通らない不条理な夢に、どろどろ溶け出す現実。夢はぼくが見ているものか、彼女が持っているものか。あるいはぼくは現実に居るのか彼女はぼくの夢か。矛盾が今の現実にまで押し寄せてきている気がする。孤独感かなあ。幽霊とあーんしてるし。
 
 「あ」

彼女が何かを思い出した様に、目を見開いた。すると、顔を押さえて泣きじゃくった。
 どうすればいいのかぼくは分からなかった。ただ彼女を見ているしかなかった。

 「自分の名前が、分からない」

名前を失くしたのかな。死んでしまった時に忘れたのかな。ここに名札でもあればきっと思い出せるんじゃないかな。なんて。

 「星が言ってる、空が呼んでる。でも私、何も分からない……!」
「ぼくが、手伝っていいかな」

彼女に聞こえる星の声をしるべに、ひねくれた僕の旅はざ・えんどと言うか、ぎぶあっぷと思われた場所からまだ全然沢山続くのだった。人生そんなもんだな。
 皆に裏切られ、誰かに見透かされ、壊れてしまった、ぼくの素直さを探す——旅に。今度は、幽霊の彼女と一緒に。手を繋いで。



 ——立ち上がったぼくは、旅立ったのさ。