二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 星のカービィ 幻想の魔筆  グリル戦決着…! ( No.237 )
日時: 2011/07/05 17:31
名前: 満月の瞳 (ID: A2bmpvWQ)

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背中に、重い衝撃。
自分体がバウンドして、跳ね上がる。
そして、また叩きつけられる。
肺の酸素がつまって、一瞬呼吸が止まる。
苦しい、痛い。
意識は、ギリギリ途切れることはなかった。
しかし、視界はぼやけて、視認ができない。
吹っ飛ばされて、痛みとともに体が軽くなった。
叩きつけられて、痛みとともに、体が重くなった。

鉛のように、重い。

命のように、重い。

グリルは、数メートル離れたところまで、とばされていた。
折れたホウキの持ち手部分を、しっかりと握りしめて。
三角帽子が、擦り切れて汚くなってしまう。
ひどく荒い呼吸を繰り返して、グリルは霧のかかった意識の中で、思った。

あぁ、僕ちんは負けた。

その言葉だって、重い。
負けたということは、ドロシアを守れなかったということに等しい。
自分は負けた。

そもそも、この戦いが、グリルにとっては賭けだったのだ。
命と命を天秤にかけた戦いだった。

わかっていた。
実力では星の戦士に到底及ばないこと。
なぜなら、ドロシアが『よんだ』人物だったから。
負けることはわかっていた。
だけど、絶対に勝たねばいけなかった。
自分の誓いを、果たさなければならなかった。
自分の使命を、達成しなければいけなかった。

勝つために。
確実に息の根を止めるために。
殺し合いをした。
そして負けた。
完敗だった。
途中まではいい線をいっていた。
しかし、途中で相手の戦法に引きずり込まれた。
しかも、グリルの結界空間で。
グリルの最大限の実力を発揮できる場所で、負けた。
これはもう、笑うしかないほどの完敗だ。

「……」

骨は折れてない。
痣はたくさんあるけど。
けど、体力はもうないに等しい。
戦えない。
そもそも、立ち上がれない。

グリルは、さめきった心の中で、静かに自らの状態を確認した。
そして、悟った。

勝てない、と。

この状況を打破することは、不可能。
考えても考えても、思いつかない。
何もかも練りつくした。

これはもう、死ぬしかないと。

「(僕ちんの…負けだ…あいつに殺されるのを待つしかない…—————)」

ザァ…—————

空間が風に吹かれる砂のように、消えていく。
グリルの魔力が尽きたのだ。
現実離れの空間は、徐々にもとの屋敷の中に戻っていく。
次の瞬間には、グリルは廊下のレッドカーペットの上に仰向けに倒れていた。

「教えて…」

気が付いたら、倒れているグリルのそばに、カービィが立っていた。
カービィの表情には、申し訳ない、苦しい、そんな気持ちが描かれていた。

「どこに…ドロシアはいるの…?」

「どう…して…?」

カービィの質問を流し、独り言のようにグリルは呟いた。

「どうやって…僕ちんのあの攻撃を…かわしたの…?」

なぜカービィは生きられたのか、それが不思議で仕方なかった。

「…かわしてなんていないよ」

「え……っ!?」

カービィの言葉の意味が分からなかった。
しかし、それは本当に一瞬だった。

「う…そっ…!!」

カービィのピンク色の背中は、真っ赤な血に染まっていた。
皮が深くえぐれている。
しかもそこらじゅうが痣だらけだ。
下手したら、グリルよりもずっと重症かもしれない。

「グリルの魔法、すっごく強くて…うまくかわせなかったんだ」

「じゃあ…!なぜあそこから…!」

「ブロックに潰されかけたから、必死に走った。かわせなかったっていっても、潰されはしなかったんだ。でも、すっごく痛かったから大変だったよ。いてて…」

「…!」

なんて奴だ。
普通なら、激痛で倒れてしまうほどの傷なのに、そのまま走り続けたというのか…。

「おまえは…いったいなんなんだ…」

驚愕のあまり、思わずグリルはそう問いかけてしまう。

「ボクは、星の戦士カービィ!」

太陽のような、明るい笑顔をカービィは惜しげもなく見せる。

「星の戦士…カービィ…」

グリルは復唱してしまう。

「グリル、君は…無理して悪の皮をかぶっているでしょ」

「!」

「だって君、笑ってても全然楽しそうじゃなかったし、泣きそうだった…」

「…だったらなんだっていうのさ…」

「君は、ドロシアをかばっているんだね」

「…!」

「…何かドロシアに危険が迫っているの?ボクはたぶんドロシアに呼び出されたんだと思う。もしかしたらボクは何か協力できるのかもしれない…!」

「違う!おまえがっ—————!」

声を荒げたグリルは、痛みに顔をゆがめる。

「…僕ちんは止めないといけないんだ!!ドロシアを…!!このままじゃドロシアは死んじゃう!おまえのせいで!!」

「え…—————!?」