二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- ( いっつ、まいふぁみりー! ) ( No.71 )
- 日時: 2013/08/23 18:30
- 名前: ゆう ◆Oq2hcdcEh6 (ID: pvHn5xI8)
俺の兄貴は、駄目な男だったんだとよ。
——俺はそうは思わなかった。一人の女を愛し、軍人になる夢を捨てて、駆け落ちまでしやがったんだから。
腹立たしい兄貴だと思ったけど、でも、駄目な男だとは思わなかった。寧ろ格好良いとさえ尊敬できるぐらい、良い兄貴を持ったとは思っている。
まあ、軍人の両親にゃ理解できねえんだろうけど。
そんな兄の愛した女を一度見たことがあるが、綺麗だとか、そんなレベルじゃなかった。女神を本当に見たような、そんな錯覚をするぐらいに、美し過ぎる女だった。
その時は未だ学生だった兄の隣に寄り添って微笑んでいて、良いところの出身なのか知らないが、上質な服を着ていたと思う。俺の親も向こうの親も交際していることは知らなかったみてえで、俺だけの秘密だと二人にウインクされた。兄貴のウインクは正直気持ち悪かった。
駆け落ちする、と二人に言われたのは兄貴が学園を卒業した頃だ。軍人にならず、二人でひっそりと暮らすんだと妙に清々しい顔で言われたのをはっきりと記憶している。
幼いながらに言ってはいけないのだろうと理解していた俺は未だ親にそのことを言ってない。だから親は兄のことを軍人になる意味がないと言って出て行ったと思いこんでいる。まあ、駆け落ちの為に出て行ったといってもそれはそれでキレるんだろうけど。
俺は兄のことを軽蔑している。それはもう、本当に。だけどそれはあくまで軍人を目指す人間としてであり、一人の男としては本当に尊敬している。
「ふうん、つまりエスカバはブラコンなんだね」
「何でそうなんだよ! ンなわけねーだろ」
「……その話に少し聞き覚えがあるな。恐らくだが、その女というのは白い髪に赤い目をした女だろう?」
これだからミストレに話すのは嫌だったんだよ。——それぞれお互いの家族がどんなのか話そうぜ、ってときに二人とも両親やら妹弟やらの凄い話を聞かせてくれたから俺も兄貴の話をしてやろうと思ったのに!
話を聞いていたんだが聞いてないんだか、ミストレの感想に腹立たしさを覚えているとバダップが顎に手を当て何かを考え始めた。バダップの挙げた特徴は確かにあっている。記憶が曖昧なんだけどな。
「おう、多分それだったと思うけど。何で?」
「……若しもそれが正しいなら、お前の兄が駆け落ちした女は俺の姉だ。数年前から行方知れずになっているが、……そうか。そういう事情だったのか」
「は?!」
バダップが溜息を一つ吐いてから少しだけ思案したような表情を浮かべ、しかし驚愕の事実を話しだす。バダップの言葉に驚いたのは俺よりも先にミストレで、自慢の髪の毛をくるくると指先で弄りながら身を乗り出してきた。うぜえ。
「バダップの姉を落とすなんてエスカバの兄は相当イケメンだったんだね。こんな弟なんだからきっと格好良くないと思ってたんだけど間違いだったみたいだ。そりゃブラコンにもなる」
「いやだから何でだよ! でも兄貴はどっちかっつーと母さんに似てすげえ格好良かったけどな」
相変わらずミストレのマシンガントークに呆れつつ、いつものようにツッコミを返す。自分から言ったくせに俺の発言をさらりと無視して、ミストレはバダップに姉がどんな人なのかと問いかけた。
バダップは少し考えるようなそぶりを見せてから首を横に振り、余り覚えていないと呟く。
「美しい人だったということは憶えている。……というよりは、両親の姉に対する評価がそれだったからな」
「……ふうん。見てみたいな、バダップの姉君。オレより美しいのかな」
バダップが美しいという言葉を使うとは思わなかった。何だか一人だけ取り残された気分で黙っていると、ミストレは俺にちらりと視線を寄越して、にやりと笑った。此奴、良いこと考えてねえ顔してやがる。
「エスカバは可哀相だね。お兄さんみたいなイケメンになれなくて。……ああそういうつもりじゃないよ。君にもきっと良いところはある筈さ。まあオレの美しさには敵わないけど? 大丈夫だよ、君にもいつか」
以下省略。此奴の話にはついていけねえ。
*
バダップにお姉さんが居ればいいなとかエスカバがブラコンなら良いなとか思った結果が此れ。ミストレちゃんごめんね今度ミストレちゃんには妹か弟がいる設定で話書くよ。王牙では何だかんだとサンダユウさんが一番好きだったりするんです。バダップは銀髪っぽい髪の毛だけどお姉さんは生粋のアルビノだと私が得をします。