二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 中編その1.強襲 ( No.99 )
- 日時: 2011/10/22 18:02
- 名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)
*最強姉弟とほしいモノ*
みんな、みんな、変わったね…?
どうしてその瞳にそんな炎が宿るのか、どうしてその言葉は冷たいのか、どうしてその脚にそんな怒りを宿すのか…
私にはワカラナイ。
もう感じなくなったはずの恐怖はまたやって来る。
聞こえた話は深く心をえぐった。円堂さんの話だった。怖くなって走った、走った、離れたくて、聞きたくなくて…。
耳に蘇る低い声。
円堂さんが何?彼が悪いの?本当に?何で?
気分が悪くなってきた。足を止めると走った疲れが一気に溢れて足の自由を奪う。階段の踊り場でしゃがみ込んだ。
しゃがんで、足の自由を奪ったのは疲れじゃ無い事に気付いた。わずかな距離しか走っていないのに、こんなに走りたくないと思うなんて今まであり得なかった。
邪悪の根源、呟いてみて背筋を冷たいものが走る。円堂さんの声を思い出す、表情を、彼を慕っていた仲間達を。
ラ「…違うっ…お願いします、どうか…」
やっぱり、あの人たちとは敵同士。
事実を受け止めたくない、そう思った。夢だと、悪夢だと・・・・・・そうであってほしかった……。
*
「…ラピス?」
ラ「!」
————どうして、こんなにも優しい声で。
ラ「ミストレ、さん…」
ラピスが顔を上げる。と、その表情を見てミストレが少し驚いた表情になった。彼女に近付く。
ミ「泣いていたのか?」
涙ぐんだ目、瞬きをすると雫が頬を伝った。
彼女は慌てた。ここで不自然に思われてはいけないと思い、言い訳を探す。
集まりに自分だけ呼ばれなかったのは、疑われているからかもしれないと思ったからだ。
ラ「…えっと、王牙に来る前に飼ってたペットが死んじゃった事思い出して…^^;」
この良い訳は別に不自然でも無かった。ラピスは優しいとミストレは感じていたから納得できたのだ。
よろめきながらラピスは立って、寮に戻ろうと提案する。それにミストレは頷いて、階段を降りはじめた。
*
帝国戦が始まり、前半は0−10という圧倒的な点差で負けていた。
魁渡が確実にイライラを募らせ始めた頃、彼の耳に力強い言葉が届く。仲間を鼓舞する、情熱に満ちた……。
円「なんだなんだ、皆どうした!!まだ前半が終わったばかりじゃないか!勝利の女神がどっちに微笑むかなんて、最後まで分からない。そうだろ!」
点数での勝負は決まっている——雷門イレブンは肩で息するだけで反応を見せなかった。
驚いて円堂を見る魁渡に、カノンは笑顔で言う。
カ「あれが、円堂守——俺のひいじいちゃんなんだ!」
心に響く、円堂守の声。
魁渡と、もう1人それを強く感じた人物がいた。
木陰で試合の様子を見守っている転校生。彼は思いもしなかっただろう。
この試合で、自分の〝今〟が大きく変わることを……。
*
ヒビキは断言した。奴は本当に勝利を信じているのだ、と。
勝ち目の無い試合であっても、最後まで勝利を諦めないでいられる。その心の強さは、真っ直ぐな彼に仲間と奇跡を授け続けたのだ。
その時、カノン達について調べていたバウゼンがヒビキの元にやって来た。
バ「2人の少年、どちらもあの時代とは異なる時間が流れています。」
ヒ「この時代から派遣された、か…」
タイムワープで別の時代に飛んだ人間は、過去世界での時間を共有しない。よって、こうして調べればすぐに分かってしまう。
バウゼンには引き続き調べろ、と令を下してヒビキは小さく呼吸をした。諸君、と響く声で議員たちに呼びかける。
ヒ「我々はこれから始まる歴史の分岐点に揺さぶりを掛ける。」
——豪炎寺修也、円堂守の人生に大きな影響を及ぼした人物が…、帝国学園との練習試合に現れなかったら…?——
*
寮—と言っても個人部屋—に戻ってミストレに「また明日」と言うと、ラピスはベッドに倒れ込んだ。
もふもふとした、王牙の印象に会わない優しい色合いの掛け布団を握り締める。
ラ「…私は、敵なんだ…」
嘘をつかないといけない。
ラ「嫌…でも、円堂さんが……魁渡もがんばってるのに…」
弱い、私は…弱い。
挫けたかった、でもそれは許されない。———父親も母親も、必死に頑張ってから挫けたのだから、自分だって…。
ラ「まだ、がんばれる…ラピス・フォルールはまだ…」
乾いた涙の跡。顔を洗おうと思ってベッドから降りた。洗面所へ向かうと、今さっき自分がいたベッドの近くにある窓の外で物音がした。
不審に思い足を戻す。
次の瞬間部屋に響く、鼓膜を破りそうな鋭い音。
目を前で散る透明なカケラ。
それは手に届きそうな、体に触れそうなほど…。
ラ「…ウソ、」
窓を壊したのは男。右手に武器が見える、恐らくそれで強化ガラスを砕いたのだろう。
男「王牙の生徒……絶対に許さんっ!!!!」
ラ(八つ当たり?!)
男「俺の…を…!!!」
ラ「!」
男が飛びかかって来る。ラピスは何とかそれをかわすも、男の身軽さに驚きを隠せない。
彼の過去に何があったかは知らないが、命を狙われているのだと言う事は彼の発する殺気から悟れた。
近くにあったサッカーボールを男に向けて蹴ろうとして、自分を取り囲む空気の異変に気付いた。呼吸をする度に体がそれを拒絶する。
ラ「……???!」
動きが鈍る、そこを突かれた。
男の両手がラピスの首を掴む、蹴り損ねたボールがドアの方へ転がって行くのが見えた。
ラ「かはっ…!!!」
男「許さない、許さない…!!!!!!」
憎悪に満ちた表情に、ラピスは何も抵抗できなくなっていた……。
*to be continued...*