二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【REBORN!】白銀の風、黒の舞姫【標的1.5更新】 ( No.111 )
日時: 2012/10/26 20:58
名前: 月那 ◆7/bnMvF7u2 (ID: IsQerC0t)
参照: http://ameblo.jp/allen-riyunkio-exorcist/entry-11386137051.html


 【ツナ目線】

  標的2.5「篠原鈴」


 昼休み、オレ達はいつものように屋上にいた。

「はあーっ。やっとゆっくりできるー」

 手すりにもたれ、ため息をつく。

「ったく、なんなんすかね。アイツ。いっぺんシメてやりましょうか」
「いやいや、獄寺君、それはダメだって!」

 獄寺君の言う”アイツ“というのは、謎の転校生・篠原くんのことだ。
 ————なんであんなことになったんだろう・・・・・・。
 HR(ホームルーム)で起きたことを思い出したオレは、深くため息をついた。

 「・・・・・・」「・・・・・・」「・・・・・・」

 そんなオレの様子を見てか、獄寺君、山本、エンマも黙りこむ。
 いつもより少し強い風に当たりながら、オレはあの朝の出来事を振り返ってみる。


     ◇◇◇◇◇


  ——回想中——


 「も、もう。やめてよ、リン」
 「いーじゃん。久しぶりなんだし」

 転校生からのハグとキスを、京子ちゃんは本気で嫌がってはなさそうだった。いや、恥ずかしがっているのかもしれない。そんなふたりに、

 「ほらそこ、イチャつくな。・・・篠原、前に戻って自己紹介の続きをしろ」
 「は〜い」

 先生に注意を受け、不満そうに戻る転校生。周りのクラス一同が、ぽかんと見ているのと、嫉妬の目で睨んでいるのには気がついてはいないさそうだった。

 京子ちゃんの席の傍から前へと向かって歩き出す転校生。先ほど被っていたフードが外れ、今は動く度に高く結んだ長髪がゆらゆらと揺れていた。
 そして前に立つ。黒板の前に立った転校生の少年は、下からズボン、ネクタイ、そして白シャツとその上に灰色のパーカー、といった変わっているようにも見える、ごく普通の格好をしていた。窓から吹いた風に揺れる髪は、透き通った黄色。いや、オレンジに近いかもしれない。あの色はたしか・・・琥珀色、と聞いたことがある。その琥珀色のやけに長い髪をポニーテールにしていた。少年は硝子のように透き通った、髪と同じ琥珀色の瞳を前に向けて、口を開いた。

 「えっとぉ。名前は、篠原鈴。『すず』って書くけど、『リン』って読むから。・・・・・・もし、『すず』って呼んだ奴は・・・———殺すよ?」

 そう言って少年——篠原君は微笑んだ。だが、微笑んでいるはずの顔に、怒りマークがついていることに気づいたオレは、畏れを感じた。まるでリボーンが笑ったときと同じ感じがする。
 そんな退いているオレたちを篠原君は気付いているが無視し、自己紹介を続ける。
 篠原くんは長く揺れる髪を触りながら、

 「あ〜、髪はこんな色だけど、別に染めてるわけじゃないから。ハーフだから、気にしないで」
 「どこの国とのハーフ?」

 クラスのだれか男子が言った。篠原君は、「・・・イタリア」と、サラッと言い返す。すると周りから、「だから、ハグやキスをしたのかー」「ハーフかっけぇー!」「獄寺君と同じじゃん」「ねぇ、篠原くんかっこよくない?」という、様々なざわめきが起こった。

 ————へぇ〜。獄寺君と同じかぁー。
 ふいにオレは前に座る獄寺君を見る。獄寺君は篠原君を睨んでいた。そんな獄寺君の様子を見て少し苦笑いする。————恐いよ、獄寺君!!

 「あ」

 篠原君は何かを思い出したかのように声を出した。そして、

 「ちなみに京子とは ———」

 そう言った瞬間、教室は張り詰めた雰囲気となる。みんな、言葉を止め、篠原君の次の言葉に耳を澄ませた。俺は思わずゴクリとつばを飲む。そして、篠原君は口を開き、

 「———“いとこ”だ・・・・・・」

 から。と、言おうとしたんだろう。けれど、教室中に「ヤッターッ!!」と歓声が上がり、その言葉は掻き消された。もちろん、男子たちの歓声だ。オレも思わず、ほっ と肩を落とす。

 「静かにッ」

 先生の一声でシーンと静かになった。

「篠原の紹介はこれくらいでいいな。 えっと、じゃあ。篠原の席は・・・・・・沢田の後ろが空いてるな」

 そう言われると、篠原君はこちらを向き、歩き出した。が、その直後。
 ——ズドーンと転んだ。しかもオレの机の脚につまずいて。
 ——グシャッ。と音がした。けれどオレは「ちょ、大丈夫?」と声をかける。
 その声に反応した篠原君は、額をぶつけたのだろうか、額を抑えながらも起き上がり、

 「ああ、大丈夫」

 と言いながら、下敷きにしてしまった自分のカバンを見る。そして、

 「大じょ・・・あぁァァッ!!」

 教室に響くぐらいの大声を出した。

 「ど、どうしたの!?」

 オレは思わず驚く。しかし篠原君は転んで下敷きになったカバンの中身を見ながら呟く。

 「——が」
 「えっ?」
 「チョコがァァ!!!」

 どうやら“グシャッ”という音は転んだひょうしにカバンに入っていたチョコが砕けた音らしかった。もちろん、これは篠原君が自分で転んでこうなったので、オレのせいではない(たぶん)。
 しかし、気が動転していたのか、キッ、っと鋭い目つきでオレを睨むと、先ほどより1トーン低い声で、

 「・・・沢田、とか言ったな・・・」
 「は、はいッッ!」
 「覚えてろよ。このチョコの恨み、絶ッッッ対に、・・・はらすからな」

 このとき、オレの顔が死人のように青ざめたのと、クラス一同が固まったのは、・・・言うまでもない。

 そのあとも、オレはちょいちょい後ろの篠原君の様子を見ていたのだが・・・、見る度にこちらを睨んでいて、
 ————殺されるーー!!!
 体を震えさせながら、午前中の授業はこうして過ぎていった。

  ——回想終了——

  
  〆 10月25日