二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:その3 ( No.9 )
日時: 2012/06/17 00:01
名前: RE ◆8cVxJAWHAc (ID: A7lopQ1n)

教室について、自分の席で一息つく。
はあ……。
「チョコ、ねえねぇチョコチョコチョコ」
机のうえにぐたーっとしていると、いきなりあだ名を連呼しながら肩を叩かれた。
振り返ると、メグが立っている。
今日も今日とて、ハデハデの服装。
またファッション自慢か…。
「メグ…何?」
「…今日のクラス、何かおかしくない?」
…はい?
このクラスはいつもおかしいですけど。
「だってぇ、いつもはみんな、メグちゃん今日もオシャレだねー、とか、可愛いねー、とか言ってくれるじゃん?」
はぁ。まあ、メグへの“可愛いね”は挨拶がわりみたいなもんだから。
「でもぉ、今日の朝は誰も言ってくれなくてぇ。最初は、あたしのあまりの可愛さにびっくりして、みんな声が出なくなっちゃったのかと思ったんだけどぉ」
びっくりって…毎日会ってるんだから、それは無いと思うけど。
「だぁから、おかしいなって思ったの。もしかして、びっくりはしなくても、見とれちゃってたのかなぁ?だってあたしってば超…」
はいはい。
喋りまくるメグの言葉を聞き流しながら、周りにも意識を向けてみる。
確かに、メグ以外の声はほとんど聞こえない。みんな静か〜に席に座っている。
……何か、気まずい。
「でね!今日のお洋服はぁ…」
ちょっと待て。結局ファッション自慢もするんかいっ。
「ちょっと、紫苑さん」
メグを呼ぶ声が聞こえて、2人で振り返る。
後ろから声をかけてきたのは、学級委員の舞ちゃん。
「珍しくみんな静かにしてるんだから、紫苑さんも座って。
雰囲気を壊さないで頂戴」
舞ちゃんが落ち着いた声で言う。
…?やっぱり、何だか違和感。
何だかよく分からないけど…ちょっと怖いよ、舞ちゃん。
「…メグ、座った方が良さそうだよ」
あたしがそう言うと、メグは頬を膨らませながら、自分の席に戻っていった。



一時間目の授業が終わって、あたしは再び溜息をついた。
相変わらず、周りから聞こえてくるのは、メグと、その他数人のひそひそ声だけ。
授業中も、普通ならみんな騒いでて、松岡先生もギャグを言ったりして、ほんっとにうるさいのに。
今日の一時間目は凄く静かで、もちろん先生のギャグにも反応無し。
松岡先生も変な顔して「おいおい、これじゃ普通の真面目ちゃんクラスじゃないか。もっとパーッと騒ごう、いつもの元気はどうした!?」なんて言っちゃうし。
松岡先生が、やっぱり真面目な授業をする先生じゃないことが判明したところで、あたしは机に突っ伏して、この居心地の悪い授業を耐えることにした。

で、授業が終わってもこの通り。
いつも煩いエロエースも、ぶりっ子爆発の百合ちゃんも、あたしの両隣りの、いつもは鬱陶しい男子2人も、休み時間だっていうのに、黙って自分の席に座っている。
正面を向いて、背筋を伸ばして、目はぼーっとしてて…なんかお人形みたい。
いつもうるさくて鬱陶しいクラスだけど、やっぱり静かすぎるのも変だよ、落ち着かないよ。
一体どうしちゃったの、五年一組…。

そして二時間目も静か〜〜なまま授業終了。
松岡先生も何とか盛り上げようとしてたけど、効果無し。
ああ、なんか気分悪い…。
…まあ、特に害があるわけでもないし、いいか。
あたしは、考えることを諦めて、折角静かなんだし本でも読もうと、机から紫色の本を取り出した。
文庫サイズの魔方陣解説書。黒魔女っぽくていいでしょ?
「………。」
…いいで書…。…む、無意識だった…。
ついにギュービッドのダジャレ癖が感染ってしまったのかとショックを受けながら、本の一ページ目を開いた途端。
「黒鳥さん」
あたしの名前を呼びながら、正面に大形くんがやってきた。
…うん?なになに?
「黒鳥さん、さっき、『気分悪い』って顔をしたねぇ」
はい…?それってどんな顔…。
「で、僕はお腹が痛いねぇ。あー痛い痛い、だねぇ」
無表情な大形くん。
お腹が痛いようには見えないんですけど…。
「だから、2人で早退をしよう、と思うねぇ」
いや、あたしの気分悪いのはそういうのじゃなくて…。
「大丈夫、松岡先生にはちゃーんと言っておいてあるねぇ」
いつの間に…。
「だから、帰ろう、だねぇ。ギュービッドもきっと待ってる、だねぇ」
…ん?
「ちょっと、それってどういう事…」
「はい、だねぇ」
あたしの言葉を遮って、大形くんはロッカーにあったハズのあたしのランドセルを、ぽんと渡してきた。
またもや、いつの間に…。
「早く持って帰るものを入れて、だねぇ」
と言われても、あたしは教科書とかは置いて行く人だから、特にないんだよね。
とりあえず、頭にハテナを浮かべながら、本と筆箱だけを入れる。
「じゃ、行こうか、だねぇ」
大形くんはこれまたいつの間にか自分のランドセルを背負っていた。
そして、ぬいぐるみをはめた手で、ぱっとあたしの手を掴む。
わぁ、そんなことしたら、またあの二人がうるさく…。
…あ、こっち見てないや。
「黒鳥さん、目を閉じて、だねぇ」
あたしが左右をキョロキョロしてると、大形くんはもう片方のぬいぐるみであたしの目をふさいだ。
「…え、大形くん、もしかしてこれ」
「…ルキウゲ・ルキウゲ・ムオベーレ!」
呪文を唱える声が聞こえた。
やっぱり瞬間移動魔法じゃん!
教室でやっちゃ駄目だよね、それ…。
あぁ、明日からどうする気なの、大形くん…。