二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 少年陰陽師パラレル現代版★短編集【参照400突破】 ( No.56 )
- 日時: 2012/05/03 13:35
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: AzXYRK4N)
今日の俺はついていない
今日の俺は、ついていない。
…順を追って話そう。
まず、自分は電車で清涼学園まで通学している。駅から学校はそんなに離れていないので、駅からは徒歩で学校まで行く。
しかし、今日はなぜだか電車が遅れた。仕方がないから駅からはバスで行こうとした。だが、電車は大分遅れていて、バスはもう行ってしまっていた。次のバスでは確実に遅刻だ。かといって、徒歩で行くと、これもまた、確実に遅刻だ。
つまり、走るほかない。
俺は走りに走った。遅刻まであと一分というところで、なんとか間に合った。
それは良かった。いや、良くないのだが。
一限目は、数学だった。しかし、先生の都合で、三限目の家庭科と入れ替わったのだ。
家庭科の授業は、つまらない。本当に。
さっきは、駅から学校まで全力疾走だったのだ。ものすごく疲れている。ついでに、昨日の夜中——厳密に言えば、今日の早朝は、人知れず妖退治をしてきたのだ。
と言うことで、疲れている。睡眠不足。
俺は、その足りない睡眠時間を家庭科の授業中にとった。
もちろんながら、先生に見つかり、休み時間中、叱られた。
しかし、俺の不運はそれだけでは終わらない。
二限目の国語の授業。教科書を忘れていた。違うクラスの友達に借りると言う手があったのだが、休み時間は先生に叱られていたため、借りに行くことが出来なかった。
「教科書忘れました」と言うと、叱られた。本日二度目。
三限目は家庭科に替わって、数学。四限目も数学。時間割おかしいだろ。絶対に。
しかも、三限目の数学では、宿題が出ていた。そして、俺はやっていなかった。そんなときに限って、先生に当てられた。「解りません」と答えると、三限目と四限目は、ずっと俺のことを見ていた——監視していた、と言ってもいいかもしれない。
授業の最後、先生は俺に向かってこう言った。
「今日の昼休み、職員室に来い。教えてやる」
「結構です」といいたかったが、言えるはずもなく、ただ頷くしか出来なかった。
というわけで、俺は弁当を食べ終わると、渋々ながら職員室へ重い足を運んだ。そして、昼休みは休みなく、数学を教えられた。
五限目は英語だった。そして、小テストがあった。俺は英語が得意ではない。というか、勉強が得意ではない。そんな俺は、テスト調べも勿論していない。赤点を取ると、放課後に補習だが、絶対そうなるな、と思いながら問題を解いた。ちなみに、解った問題は、十問中三問だ!
本日最後の授業である六限目は、音楽だった。一人ずつ、みんなの前で、リコーダーを吹かされた。俺はリコーダーが上手ではない。クラスみんなに笑われて、授業は終わった。
だが、苦痛はまだ終わらない。
放課後は、担任の先生との二者面談があった。そして、英語の補習も勿論あった。
二者面談では、「部活はしていないのか?」と訊かれ、「はい。帰宅部です」と答えると、「何故、部活をしない?」と訊かれた。「陰陽師の仕事が忙しいので…」とは言えないので、ただ笑うことしか出来なかった。
その後、たっぷり二時間英語の補習をやらされた。
今日の俺は、本当についていない。
彰子は二者面談も補習もないので、先に帰ってしまった。
一人でとぼとぼ歩いていると、自動販売機を見つけたので、コーラでも買おうかとお金を出すと、売り切れだった。
「——と言うわけだ」
本当に、全然ついていないだろ?
「ただいま…」
ガラリと玄関の扉を開けると、彰子が出迎えてくれた。
「おかえり! 昌浩」
「…彰子」
「ねぇ、昌浩…」
彰子が何か言いたさそうな表情をしているので、「何?」と続きを促した。
「あのさ…、今度、ゴールデンウィークで連休でしょ?だから、どっか遊びに行かない?」
「彰子…」
「あ。ダメならいいけど——」
彰子が遠慮がちに言ったのを、俺は遮った。
「いや。…いいよ。行こう」
微笑んで言うと、彰子も嬉しそうに微笑んだ。
「本当? 良かった!」
そして、こう言った。
「昌浩、ありがとう」
「…こっちこそ、ありがとう」
今日の俺は、ついていない。
だけど、良いこともあった。