二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: いつまでも君を〜〜  銀魂 ( No.90 )
日時: 2013/01/26 10:25
名前: 音羽 (ID: Gv4F5Jg/)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs/index.php?mode

第五十話

「かーちゃん! とうちゃん! にいちゃん! どこ!?」

 銀時は、子供の泣き叫ぶ声を聞いた。その声の主は、銀時を苛め抜いた兄弟の弟の方で、火に今にも飲み込まれそうな母屋へと叫んでいた。
 さ迷い歩き、着ているものも火に焼け焦げた後がある。熱気にさらされたためか上気した頬に大粒の涙を浮かべながら、かすれた声で、家族の名を呼ぶ。……そうしているうちに、裏門から逃げようとしている銀時を見つけて走り寄ってきた。

「銀時、とーちゃんたち知らない? ねえ、一緒に探してよ!」

「……」

「お願い! お前を育ててくれたんだぞ?」

「……そだてた?」

 世間の家では、これが育てるということなのか。
 銀時の心中は苦々しいもので埋め尽くされる。

「ふざけんな」

「銀時!」

「生きてんならにげてるだろ。兄さんもにげたら? 自分が死ぬよ」

「だって見つからないんだ。どこにもいないんだよ!?」

「しらないよそんなこと! 今までさんざんなことしといて、つごうのいいこと言うなよ! おれはにげる。生きのこったって、にどとこんな家もどってこない」

 叫ぶ銀時の後ろで、母屋の屋根が崩れ落ちる。辺りに響く轟音に身をすくませたこの家の息子の手をとっさにひいて、裏門から外へとでた。急に冷えた空気に身震いして、二人は表へとまわる。表からみた屋敷は赤く染まり、もはや屋敷の姿をとどめていなかった。火消しによる消火をあざ笑うかのように、火の粉は高く舞い上がり、火の勢いも収まる気配がない。
 野次馬の中に家族を見つけようと、息子は銀時の手を放して人垣の中へと入っていった。
 

 そして、銀時は。


 踵を返して、走りだした。