二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: D・Gray-man 〜涙のメロディ〜 こめんと募集中! ( No.257 )
日時: 2012/09/07 20:47
名前: 月那 ◆7/bnMvF7u2 (ID: IsQerC0t)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode


   第16粒「禁断の果実」


 夜が明け、エクソシストはもちろん、ファインダーや研究者たちが集まっている。ガヤガヤとにぎわっている食堂で、あの元気な声が響いていた。

 「Bセット、おまちどーん。お次は何かしらー?」

 彼・・・いや、彼女はジェリー。ここの料理長だ。
 そこにあたしとアレンが顔を出す。すると、「アラん!?」とジェリーは言い、

 「アラ、サクラ誰この子? 新入りさん?」

 「うん。アレン・ウォーカーっていうの」

 「んまーー、これはまたカワイイ子が入ったわねー!」

 ジェリーの気迫に押されつつ、「どうもはじめまして・・・」とアレン。

 「何食べる? 何でも作っちゃうわよアタシ!!」

 ジェリーがそう言うと、「何でも・・・」と呟きながら悩んでいた。
 「あたしはどうしよっかなー」と思っていると、

 「それじゃあ・・・」
 とアレンが口を開き、

 ・・・・・・・・・それは一瞬のことだった。

 「グラタンとポテトとドライカレーと、マーボー豆腐とビーフシチューとミートパイとカルパッチョとナシゴレンと、チキンにポテトサラダとスコーンとクッパにトムヤンクンとライス。あとデザートにマンゴープリンとみたらし団子20本で」

 さらに「全部量多めで」とアレンは付け加えた。

 「す、すごーい・・・」とあたし。驚いている。
 「あんた、そんなに食べんの!?」とジェリー。もちろん驚いている。

 「・・・サクラは何を食べるんですか?」
 とアレンが聞いてきたから、

 「え〜っとね〜。じゃあ、あたしは”サクラスペシャルセット“で!」

 ”サクラスペシャルセット“とは!
 あたしが考案して作ってもらったオリジナルセットのことである!
 メニューは、アップルパイにブルーベリーチーズケーキ、いちごのタルト、パイナップルアイス・・・・・・他にも合わせて20種類くらいあるんだけど、まあ簡単にいうと果物をたくさん使った料理だね。

 ジェリーは、やれやれといったような顔で笑うと、分かっていたかのようにトレーにのった”サクラスペシャルセット“を差し出してきた。「あははは」とあたしは苦笑い。トレーを受けとり、席に座る。

 「いっただっきまーす♪」「何だとコラァ!」

 ・・・あれ? 今なんかファインダーの男の人の怒声と重なって聞こえたような・・・。

 「まあ、いっか」

 気にせず、一口パクリ。あぁ・・・やっぱりジェリーの作る料理は最ッ高!!
 もう一口・・・

 「もういっぺん言ってみやがれ、ああっ!!?」
 「おい、やめろバズ!」
 「うるせーな。メシ食ってるときに、後ろでメソメソ死んだ奴らの追悼されちゃ、味がマズくなんだよ」

 声からするに、あの大男のバズっていうファインダーと神田が言い争ってるみたいだった。

 あたしはそっちの方向を振り向く。
 「俺達ファインダーは、お前らエクソシストの下で命懸けでサポートしてやってるのに・・・。それを・・・、それを・・・っ」

 バズは右腕を振り上げながら、

 「メシがマズくなるだとーーー!!」

 神田に殴りかかる。

 しかし神田はそれをすばやくかわし、

 「うぐっ」

 バズの首もとをつかんだ。

 「『サポートしてやってる』だ?」

 神田は冷たく言う。

 「違げーだろ。サポートしか、できねェんだろ。お前らはイノセンスに選ばれなかったハズレ者だ」

 「げふっ」

 バズが泡を吹いてる。コレはマズい!!
 あたしは二人のもとへかけ出した。

 「死ぬのがイヤなら出てけよ。お前ひとり分の命くらい、いくらでも代わりはいる」

 「か、神田! ちょっとスト———」

 「ストップ」

 あたしが止めに入ろうとするより先にアレンが止めに入り、神田の手を下ろす。

 「関係ないとこ悪いですけど、そういう言い方はないと思いますよ」

 「・・・・・・・・・・・・・・・。放せよ、モヤシ」

 アレン、神田から『モヤシ』と命名。あたしも名前じゃない、変な呼び方されてるんだけどね。

 「アレンです」とアレンは否定。しかし神田は、

 「はっ。1か月でくたばらなかったら覚えてやるよ。ここじゃパタパタ死んでく奴が多いからな。こいつらみたいに」

 するとアレンは、神田の腕を掴む手を強める。その力は掴んでいたバズを放すほどだった。

 「だから、そういう言い方はないでしょ」

 そう言うアレンを神田は見つめると、

 「早死にするぜ、お前・・・。キライなタイプだ」

 その言葉にアレンは
 「そりゃどうも」
 と反抗。

 二人の周りには、こう、オーラが漂っていた。いわば『殺気』ってやつ?
 ・・・さすがに周りに迷惑がかかってるようなので、制裁に入る。

 「はいはい二人とも、ストップストップ〜〜〜」

 バチン! バチン! と、二人にデコピンの刑。(そんなに強くしたつもりはないんだけど)よほど痛かったのか、二人は額をおさえ、悶絶。

 「・・・・・・なんだよ、バカりんご!」

 と神田が口を開いた。

 そうです。神田が付けたあたしのあだ名(?)は『りんご』。意味は・・・いや、やめておこう。

 「周りの人が迷惑してるでしょ。それに、神田は言い過ぎだから! そういう言い方はないでしょ」

 そう神田に説教(みたいなもの)をしている(もちろん聞いていないが)と、後ろから聞き慣れた声が。

 「あ、いたいた! 神田! アレン! それとサクラ!」

 声の主はリーバーだった。振り向くとずいぶんと奥にいる。たくさんの本を抱えていた。隣にはリナリーもいる。

 「10分で飯食って司令室に来てくれ。任務だ」
 10分・・・。アレンはあの量の料理を食べきるのだろうか。そう思いながらフォークを進めた。



 このときは思いもよらなかった。だってこの任務がきっかけで、


 ———幸せだった毎日が、崩壊に近づいていくなんて。
 このときは思いもしなかった。
 

  〆 9月7日