二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: [イナイレ]-プリンスのDNA ( No.125 )
日時: 2012/11/03 13:08
名前: 優騎那 (ID: hoeZ6M68)

第三十話 『精神的支柱—マネージャー—』

不動は隣で寝ているオリビアに視線をよこした。
人の気も知らないでぐーすか寝ている。

「これから話すことは、シュリさんの胸の内にとどめておいてください」

シュリアンヌは黙ってうなずいた。

「おれ達には、陰で一緒に戦っていたマネージャーがいました。
浜崎 媛莉−はまさき ひめり−…ご存じですよね?」
「うん。オリビアから話は聞いとる。亡くなったんやてな……」
「はい…」


『大輔!今のはオフサイドだって!』


何となく思い出した。
近年まれに見る体育会系女子だった媛蜜を。

「おれ達が"愛媛の三戦強"って呼ばれるようになったのは、浜崎の影響がでかいんです。
"愛媛の三戦強"は浜崎が死ぬことで得られた贖罪の名声ですから……」

泣きそうになるのをこらえようと、シュリアンヌが出してくれたカクテル、プッシー・キャットを口に含んだ。
柑橘系の甘酸っぱい味わいが涙を抑えてくれる気がした。

「浜崎はおれ達にとって精神的支柱でした。
おれ達全員同い年なのに、あいつだけ何百年も生きてるんじゃないかって錯覚するくらい、おれ達がへこんだときはズシッとくる言葉でおれ達を復活させてくれました。
あいつがいなかったら、"愛媛の三戦強"が生まれることもなかった。
おれが昨年のFFIで日本代表イナズマジャパンで世界に行くこともなかった。
優樹菜が"不洛の女帝"なんて詠われることもね…」

シュリアンヌは黙って、時々相づちを打ちながら心を落ち着けて親身になって聞いた。

「蜷川が勝利に固執するようになったのは、浜崎が死んでから。
浜崎の死後、蜷川は『負けることは罪。勝者だけが正義だ』って二言目には言うようになった。
ただサッカーを楽しんでたあいつは狂気に駆られたんです。
蜷川、浜崎のこと好きだったから」
「優樹菜はサッカーを好きで始めた—母さんの代わりって言うのもあるんですけど—のに、あのころこいつはサッカーが嫌いだった。
スパイクを捨てようかと思ったこともあるって、言ってました」
「おれはサッカーを楽しめなくなって、強さだけを追い求めるようになりました。
中学に上がる頃、おれ達の心の距離は埋めようがないほど開いていた。
おれ達の関係は他人に等しかった。
まぁ、おれとこいつは帝国でまた元の関係に戻れた。
皮肉にもサッカーを通して」