二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 薄桜鬼 浅葱色の風と放浪鬼 ( No.35 )
- 日時: 2013/01/18 21:16
- 名前: 流夢 (ID: O72/xQMk)
21話「京の出会いと東北の友」
「ええと・・・山南さんの墨と、沖田さんの金平糖・・・。後は、斎藤さんが言っていたお豆腐にお魚・・・」
千鶴は、土方からお使いを頼まれて街に出ていた。
土方が流し書きした紙切れを片手に、忙しなく店から店を行き来している。
次は総司が欲しがっていた金平糖を買おうと、和菓子店に入った。
何人かの客がちらほらと買い物をしている。
「旦那はん。金平糖とこのおぶ菓子下さい」
「分かりました。どうぞ」
「おおきに」
千鶴の横を、お茶菓子を買った少女がゆるりと通り過ぎる。
千鶴は気に留めるわけでもなく、紙切れを確認して店主に声を掛けた。
「あの・・・すみません。金平糖ってありますか?」
「・・・ありまへんね」
「え、そうなんですか?じゃあお茶菓子を・・・」
「それも、ありまへんな」
「え・・・?」
流石に困惑した表情をしておろおろしている千鶴を、他の客達も遠巻きに見ていた。
すると、先程千鶴の隣を通り過ぎた少女が、千鶴の肩を掴んだ。
そして、自分に引き寄せる。
「旦那はん!この子はうちの東北で会った友達なんどす。おぶ菓子・・・売ってくだはりまへん?」
突然のことに今度はぽかんとした表情を作った千鶴とは裏腹に、店主はにっこりと笑みを返す。
「ああ、何だ、そうどしたか!少々お待ち下さい」
彼女は強気な、でもはんなりとした笑みを浮かべて千鶴の肩を放した。
千鶴は急な開放感と店主の機嫌の移り変わりに驚きながらも千鶴より身長の高い少女を見上げた。
少女は千鶴が見上げてきたのに気が付き、にこりと笑い返した。
店主が千鶴にお茶菓子の入った手拭を渡すと、二人は早足に店を後にした。
店の前に出てから、彼女が問う。
「あの、有難う御座います。助かりました」
「貴女、生まれは東国ですか?東言葉を使ってますね」
「はい・・・。東国生まれで・・・って、貴女もですか?」
「私も東国生まれなんです。此処等辺りの店は東言葉を嫌う店主が多いようなので・・・京の友達に教えてもらいました」
「そうなんですか。私、雪村千鶴と申します」
「雪村・・・?あれ?東国の姫が何で・・・。気のせい?でも・・・」
「あの・・・どうかされました?」
「・・・いえ。すみません。私の覚え違いのようです。私、杏音って言います。宜しく、千鶴」
「宜しくお願いします。あ、私もう行かなくてはいけないので!また会ったら今度はゆっくり!」
千鶴は素早く一礼すると、ぱたぱたと新選組屯所へと走っていった。
その後をじっと見つめていた杏音は、くるりと振り返ると、苦い笑みを作って「まさかね」と笑った。
「あんな鬼姫から兄上の『気』がするなんて、気のせい、気のせい。・・・此処に居られるはずないもの」