二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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いろんな愛のカタチ−スキだからだからこそ−
日時: 2010/11/07 01:41
名前: 扉@亮 ◆A2rpxnFQ.g (ID: TtH9.zpr)
参照: 此処は短篇集となります^^リク受付は休止中となっておりますー

扉と申します^^
こんにちはです、そして初めましてですv

元・亮です。
テニプリ以外の短篇も書きたいなぁと思い、スレ整理も兼ねて新しく立てました。
というワケで、此処には
テニスの王子様他、銀魂や黒子のバスケなどの短篇をupしていきたいと思っておりますーv





(○・ω・)ノ-------------読む前に-------------

主題歌 >>1 【巡音ルカ Just Be Friends】



(○・ω・)ノ-------------バトテニ-------------

注意事項 >>2

 大好きな君へ5つの言葉       

 01  「好きだよ、これからもずっと、」(宍戸亮) >>3

 02  「やっと会えたのに、ね」(越前リョーマ) >>4
     
 03  「最後に伝えられて良かった」(越前リョーマ×美那浦麗) >>5 夜琉サマリクです    

 04  「お前が泣くことじゃねーよ」

 05  「離さない、お前だけは絶対に」(向日岳人×神田瑞生)>>6 志筑様リクv


 バトテニ 20のお題

 01  夢なら覚めないで(越前リョーマ×大咲麻由) >>7 マユ様のリク^^    
 
 02  消えぬ想い
 
 03  殺したいほど恋してる(リョ桜) >>8  
 
 04  愛に生き、愛に死す(白石蔵ノ介) >>9
     
 05  君の亡骸(跡部景吾) >>10

 06  死が二人を別つまで

 07  I Love You(不二裕太×暁野宮輪廻) >>11 うっさー様リクv

 08  力いっぱい抱きしめたい

 09  嘆きのキス

 10  涙止まらない

 11  俺の誓い、私の誓い >>12

 12  思う空

 13  エデン(楽園)の在処

 14  あと何回君の名前を呼べるだろう?

 15  君を守りたい

 16  Two of us

 17  永遠が見えた日(幸村精一) >>13  

 18  君のためにできること

 19  Last Voice(中務隼人×織原リサ) >>14 志筑様リクv
 
 20  ともにいこう


 バトテニで5のお題

 01  「どうするの?ここで死んじゃう?それとも、生きてみる?」(宍戸亮) >>15

 02  「罪悪感とかそういうの、どっかに落としちゃったみたい」(幸村精市) >>18

 03  「この世界の何かが狂って、俺も狂ったみたいなんだ」(切原赤也×朔夜)>>19 うっさーサマリク

 04  「さよなら」言ったその後に笑わないでよ。


 死ぬ前に思うことで5のお題

 01   せめて今だけは夢を見させて

 02   霞む景色は君を残して(跡部景吾×椎名蘭)>> 夜琉サマリク^^

 03   この時だけを、永遠に

 04   笑ってる、でも泣いている

 05   僕らは何を間違ったのか


(●・ω・)ノ------------テニプリ------------


 ごめんね05題

 01 怒ったまま仕方なく

 02 一筋涙を流して

 03 申し訳なさそうに

 04 すれ違った瞬間小声で

 05 笑顔で爽やかに


 他校の彼と05題

 01 もしも同じ学校だったら

 02 俺の知らない君の姿

 03 授業中のメール

 04 その子、誰?

 05 ふたり一緒の帰り道



(●・ω・)ノ------------黒子のバスケ------------


 甘く切ない

 01 明日また会えるのに
 
 02 あの人はただの友達だと分かってるけれど

(●・ω・)ノ------------銀魂------------



(●・ω・)ノ------------季節------------


 7月7日(七夕) 【短冊で知る本当の願い(それは天候さえ変える愛)】(白石蔵ノ介)>>320-321 
          アノヒノオネガイ、マダユウコウデスカ??





お題は、いつくかの神サイト様からお借りしております^^
ヒロインちゃんたちの名前は、リクして下さった方々のオリキャラです。
※リクエストは只今休止中です、すんまそん。
 

扉@亮の他駄文
ht★tp://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=15471(バトテニ)
ht★tp://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=19038(銀魂)



長々と失礼しました。
それでは、どうぞー











———愛には、いろんなカタチがあるんです。
      
      強く、深く、包み込むように抱きしめる。
      何よりも相手を思い、守り抜く。
      共に笑い、共に涙し、共に生きる。
      そして。

———共に死すこと。 それも、“愛のカタチ”。


























どうか彼方に、彼方だけの素敵な愛のカタチが見つかりますように。

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Re: いろんな愛のカタチ−スキだからだからこそ− ( No.3 )
日時: 2010/10/24 09:17
名前: 扉 ◆A2rpxnFQ.g (ID: TtH9.zpr)
参照: 爪挫淦洒テ、経苗努堂忱拇ラ





ここでこうして再会できたのは、運命なんですか? 神様




「弥・・・・?」

森を彷徨う弥の前に現れたのは、間違いなく宍戸で。
弥は飛びついた。

「宍戸!」
「うぉ、何だよ、危ねェだろーが」
「だって、嬉しくてさ」

弥は宍戸を力一杯抱きしめた。
宍戸の体温を、より強く感じるために。

「痛ェよ」
「あは、ごめん」

弥と宍戸は、つきあい始めたばかりだ
弥はテニス部マネージャーで、宍戸はテニス部員で。
知らぬ間に惹かれ合っていて、皆の協力もあって、今がある。
この修学旅行で、もっと、もっと、仲良くなれればなァなんて思っていたのに。
まさか、こんなコトになるなんて。

「ホントだったら、今頃なにしてるのかなァ」

弥が伸びをしながら、宍戸に訊いた。

「飛行機にでも、乗ってる頃だろ」
「飛行機、私たち隣同士の席だよね。 確か」
「そうだな」

隣の席で、お菓子交換しようとか、トランプしようとか、いろいろ計画していた。
少しでも、たくさんの思い出を作ろうねって、約束した。



「まァ、いいや。 ここでだって、宍戸の隣に居られるからさ」



隣に居られれば、それでいいよ。

「何言ってんだよ」
「本当だもん、いいじゃん」

宍戸は顔を赤くしてそっぽを向いた。

「こっち、向いてよ。 寂しいじゃん」

弥はからかい半分で宍戸に言う。
宍戸は意地でもこっちを向かないつもりで。

「バーカ」

宍戸が隣に居ないときは、不安と悲しみでいっぱいだったココロが、今笑っている。
不思議と、不安は消えていた。








「ねェ、好きだよ、これからもずっと、」







この命が消えても、ね。
ずっと、ずっと。
そうすれば、不安も何も無くなるから。
生きたいなんて、言わないよ。
ただ、宍戸が側にいてくれれば、それで。

それだけで、ココロが軽くなる。


今度は宍戸が、弥を強く抱きしめる。
知らない間に、ここから消えてしまわないように。

「宍戸・・・?」
「馬鹿野郎」
「は?」

宍戸の力が、一艘強くなった。

「改まって、んなコト言うなよ」

愛しくて、苦しい。
今、この腕の中に居る彼女が、次の瞬間には消えてしまいそうな気さえした。
その言葉は、別れの言葉のように聞こえて。



「ずっと、一緒にいるんだろ」



この気持ちを、何度も何度も、確かめ合う。
宍戸の問いかけに、弥は静かに頷いた。

「勝手に逝ったりしないでね。 死ぬのも、一緒だよ」

一生のウチで、きっと1番強い、弥のワガママ。
生きれなくても良いから、他の人に会えなくてもいいから。


ああ、神様。
このワガママ、きいてくれますか?















もう、離さない。
絶対に、離れない。
好きだよ、これからもずっと、
神に、引き裂かれようとも。

Re: いろんな愛のカタチ−スキだからだからこそ− ( No.4 )
日時: 2010/10/24 09:19
名前: 扉 ◆A2rpxnFQ.g (ID: TtH9.zpr)
参照: 坏脹汗鋲ぢ栖忱隻ニ






銃声がなる。
何故か、人を殺すことにそれほどの抵抗は無い。
ただ、生き残りたい。


「・・・次は何処、行こうかな」


リョーマはそう呟き、移動を始める。
最高に苛ついてるんだ。
せっかくのテニス合宿だってのに、こんなのに巻き込まれて。

「生き残って、テニスをする」

これだけしか、彼の頭にはない。





自分を求めている人がいることも知らずに。






どれほど歩いただろうか。
空は次第に暗くなり、足下もよく見えない。
人が居る気配も無い。

「無駄足、だったかな」

他の場所へ行こうと振り向くと、草の茂みから物音が聞こえた。
リョーマの無表情な顔に、笑みが浮かぶ。
向こうは自分に気がついていない。



「サヨナラ。 まだまだだね」



これで、俺の勝ち。
アンタの負け。

銃の引き金を引く。
銃弾は標的に当たり、血が飛び散る。

さすがに、顔を確認しないままじゃ失礼すぎる気もしてリョーマは相手の方へ歩み寄った。
草をかき分けると、青学の女子の制服が見えた。

「・・・」

女の子は腹部に当たったらしく、息が荒い。
もう、長くは無いだろう。
暗くて、それだけじゃ誰かまでは分からない。
リョーマはさらに近寄った。



心臓が、うるさいほどに動き始める。



不安が、急に押し寄せてきた。
罪悪感なんて、全く感じてなかったのに。
今になって、冷や汗が出るほど、人を殺した自分に動揺している。




「・・・わた、るせんぱ、い」




少女は力を振り絞って、リョーマのほうへ向き直る。
目には、涙が光っていた。










「やっと会えたのに、ね」









泣きながら、笑うんだ。

「こっち、来て、よ。 リョーマ」
「何で」

震える唇で、リョーマは必死に平然を装った。
「俺はお前を撃ったことに、何の後悔もないよ」と。
でも、弥には見透かされている気がした。

「いい、から」

弥の靴には、泥が付いていた。
自分の靴を、改めてみる。



同じ、泥が付いていた。



弥は、ずっと、自分の後を追ってきていた。
自分の通ってきた道を、弥もまた、通っていたんだ。
リョーマの殺した数々の人を、あの瞳に焼き付けながら。

「先輩、アンタ・・・」
「やっと、追いつけた」

リョーマは、弥の手を強く握る。
もう、力が入っていない。

「会いたかったんだよ」

ああ、この人はもう死んでしまうんだ。
ココロに何処かで、そう悟ってしまう。
自分で招いた結果の癖に、認めたくない。


「スキ、だよ。 リョーマ」


この人は、こんなに、自分を求めていてくれたのに。
俺が考えてたコトって、何だったんだろう。
それを思うと、恥ずかしくて。
他人のコトをこんなに思えるアンタがキレイに見えた。
弥との、たくさんの思い出がリョーマの頭を駆けめぐる。
それは弥も同じだった。

「ごめん、ごめん。 弥先輩」

今になって、初めて自分の気持ちに気がつく。




「俺も、スキ。 先輩」





弥は、笑う。

「やっと伝えられた」

静かに目を閉じる。
限界が来た。
弥の息は、もうない。

「先輩・・・ッ」

死んだ。
だけど、先輩は幸せそうで。
撃った俺に、何の文句も言わずに。
それでも、スキだと言った。


「やっと会えたのに、ね」


馬鹿だ。 自分は、何て馬鹿なんだ。

リョーマは立ち上がる。
弥に自分のジャージを掛けた。













待ってて。 先輩。
すぐに戻るから。
その時には、全てが終わっているはずだから。

Re: いろんな愛のカタチ−スキだからだからこそ− ( No.5 )
日時: 2010/10/24 09:25
名前: 扉 ◆A2rpxnFQ.g (ID: TtH9.zpr)
参照: 不安なの、分からないの、だけど、好きなの。






ずっとずっと、言えなかったことがある。




言わなかった、ことがある。



いつもいつも、からかってばかりでごめんね。
いつもいつも、困らせてばかりでごめんね。
いつもいつも、不安にさせてごめんね。



こんなことに—————————————、巻き込むことになって、ごめんね。



ああ、死に向かう時って、人は懺悔の言葉しか思いつかないのかな。








“ごめんね”








「不二先輩ってさ、よく分からない」


いつだったか、麗は言った。

「・・・、どういうこと?」

不二はきょとんとして聞き返す。
あまりにも、唐突な言葉だった。

「言葉の通り。 よく分からない」
「どういうところが、分からないのかな?」

麗は一瞬不二と目を合わせて、再び伏せた。


「・・・・・・私のこと、スキだっていうけれど、それが、よく分からないのよ」


何処か、寂しそうに。

「何処がスキなのか、分からないってことかな?」
「んー、そういうんじゃない」
「僕はスキなコほどからかいたくなるからね。 それがスキって証拠だと思ってくれないかな?」

麗は困ったように不二に背を向けた。
依然、不二は微笑みを崩さない。



「それ、本音?」



あの時の、麗の言葉が耳から離れずにいる。
いつもなら、その場で「本音だよ」、と微笑んで抱きしめればお終いだっただろう。
だけど、何故かカラダは動かず、麗の言葉を静かに受け止めるだけだった。
不二は横目で“彼女”を見つめる。
そんなことを言っておいて、それでも隣に座っている彼女。


「・・・、何」


視線に気がついたのか、麗は少々不機嫌そうに言う。
不二は微笑む。



「遂に、私を殺したくなった?」



不二と麗と、青学レギュラー達はBRに巻き込まれた。
女子なのに男子テニス部に入部させられていた麗は、巻き込まれたのだ。
そのせいか、そうでないのか、不機嫌極まりない。
麗は感情を言葉に込めない。
ただ、思いついたことを淡々と述べる。
その言葉に、不二の笑顔は硬直した。

「・・・どういう意味だい?」
「だから、そのまんま」

不二は、ため息。


「キミの目に、俺はそういうふうに映っているんだね」


麗は一切感情を表さない。
いつも以上に、冷静に、無表情に。

「そういうこと」

不二を、どんどん突き放す。

「キミのこと、大切だと思っている・・・って、何回言ったけ、僕」
「知らない」
「いつも以上に、麗は厳しいね」

不二はクスクスと笑いながら、言う。

———笑い事じゃない。

麗の中で、苛立ちは大きくなった。

「黙れ、笑い事じゃないの」

不二は言葉の通り笑うのを止めた。


「こんな状況で、何でアンタはまだ、そうやって笑うことが出来る?」


麗は、今にも泣き出しそうで。

「何でまだ、私を混乱させる?」
「麗?」
「何で、どうしてまだ、分からない?!」

麗は声を荒げる。
不二は驚いて、取りあえず麗を落ち着けようと手を取った。

「・・・ッ」

麗は動きを止める。
そして、腕を振った。


「離し、て」


そう言った麗の手は——————————————、
いつもの彼女からは想像も出来ないほどに、





震えて、いた。





何処かで、銃声が響く。
何処かで、爆音が鳴る。
何処かで、悲鳴が聞こえる。



その度に、麗のカラダはどうしようもないほどに震えた。



「麗・・・」



不二は、麗を見る。
麗は震えていることを見透かされ、恥ずかしげに俯いた。

「不二先輩、は、やっぱりよく分からない」

静かに、言葉を紡ぐ。

「それに、アンタも、私のこと、分かっていない」

その言葉には、確かに“不安”と“恐怖”が滲んでいて。
不二はようやく理解する。



———彼女は、不安、なんだ。
———何時だって、どうしようもないくらい、不安なんだ。

だから、僕にあんなことを———————————————



何時、誰に裏切られるのか。
何時、自分が狂うのか。
何時、殺されるのか。

普段の彼女からは想像もつかない程、彼女は今不安定で。
瞳には次第に涙が光る。

「・・・・・・、スキなコほど、虐めたくなるんでしょ」

麗はこの場には不似合いなことを言う。
そうかと思えば。


「じゃぁ、私を殺してよ」


この場に、最も最適な言葉を出す。

「・・・」

不二は黙って彼女を見つめた。


「こんなの、もう嫌、なの。 こんなに不安なら、まだ狂ってないアンタが、殺してよ」


不二は微笑んだ。

「?」
「じゃぁ、1つ、僕からもお願い」
「何?」

不二は、麗を抱き寄せる。



「・・・最後に、僕のことスキだと言って」



自意識過剰だ、と笑われるかもしれない。
だけど、僕は分かっている。
麗のこと、麗が思っている以上に、僕は分かっているよ。
だからこそ、お互いに、惹かれたんじゃ、ないかな?


「バカ、じゃないの?」
「でも、図星、でしょ?」


麗は、俯く。




「何でも、お見通し。 ・・・ってワケね」







最後に。
大切な人へ。







「スキ」



不二は、微笑んだ。
手には、既にサバイバルナイフ。
それでも、何故か麗は笑っていた。

「ありがとう、」
「らしくないね、どうして? お礼なんて」
「私だって、こんなこと言いたかないわよ。・・・・・・でも、」





「最後に、伝えられて良かったなぁって、思っただけ」





きっと、自分だけじゃぁ、最後まで素直なんてなれなかった。

「僕も、最後に」

不二は、麗の耳元へ。















「色々と、ごめんね」















こんな時なのに、僕には懺悔の言葉しか思いつかなくて。
それでも彼女は、何故だか幸せそうに、微笑んだ。





「バカ」






刹那、1人の少女と少年は、此の世を後にする。
お互いのことを理解して、幸せそうに、笑いながら。

Re: いろんな愛のカタチ−スキだからだからこそ− ( No.6 )
日時: 2010/10/24 09:35
名前: 扉 ◆A2rpxnFQ.g (ID: TtH9.zpr)
参照: 何時までもキミを離さない。キミという、天使を。






離したら、皆、死んじまうんだな。

別れたばかりのヤツも、隣で笑ってたヤツも、皆。
離せば、もう、逢えない。


だったら、もう。









お前だけは絶対に。










『死亡者の報告だ、青春学園、手塚国光、大石秀一郎。 氷帝学園、跡部景吾——・・・』


すぐには、信じることは愚か、理解すら出来なかった。


「あと、べ?」

さっきまで、隣にいて。
氷帝の奴らを探してくる、そう言って離れた。

「嘘だろ・・・?」

必ず戻る、
いつものあの偉そうな調子で、あの確信させるような眼差しで。
そう、言ったのに。

「何でだよ、跡部・・・ッ!!」

もう、戻ることはないのか?
もう、隣で笑うことは、ないのか?


「クソ、クソッ!」

岳人の頭に、愚問がいくつも浮かび上がる。
でも、誰かに問いかけずにはいられなかった。

———人は、こんなにもカンタンに、いなくなってしまうのか?

あの、跡部ですら。
ただ、離れただけで。

岳人の脳裏に、1人の少女が浮かぶ。
男勝りで、負けず嫌いで、でも優しい。
大切な——



「瑞生——、」



そうだ。
アイツも、瑞生とも。
瑞生とも離れた。

———アイツも死ぬ、のか?

最悪の事態が、頭を駈け巡った。
もう、誰も失いたくない。
離れたこの手を、もう1度繋ごう。
そうしたら、もう。





離さないから。





気がつけば、走っていた。



当たりが薄暗くなり、森は一層気味悪くなる。
この状況だから、警戒心も強くなった。

「何処だよ、此処・・・」

少女は1人、大木にもたれ掛かる。
背中に、寒気が走ったからだ。
瑞生はその場に座り込んだ。

———跡部、死んだんだな・・・。

偉そうでムカツク、あの野郎を思い浮かべる。
なんだか、少しだけ胸に穴が空いているんだ。
次第にキズになり、ジクジクと痛む。

「口を開けば、嫌味しか言わねぇヤツだったのに」

痛みは引かなくて。
それどころか、どんどん増してくる。
無理に塞ごうとすればするほど、膿む。

「何なんだよ、馬鹿野郎」

傷口を塞ぐ薬は無くて。
嗚呼、でも。
1つだけ、痛みを忘れさせてくれる存在。



「岳人、何処・・・?」



アイツがいれば。
側にいてよ、どうして、離れてしまったの?
此処にいてよ、もう1度、手を繋いでよ。







瑞生のこの願いは、思わぬカタチで叶うこととなる。

———誰も、望まなかった、最悪のカタチで。







暗い世界に、黒い影現れた。


「な、に、」

影、ではない。
冷たい、液状のモノが瑞生に掛かる。
刹那。
瑞生に痛みが走った。

「・・・ッ、何だ、コレ、」

血が流れる。
痛みと出血で、世界が歪み出す。

「誰、だ・・・!!」

目の前の人物は問いに答えない。
だが、もう1度、瑞生に向かって日本刀を振りかざした。

「!」

確実に今のままでは負ける。
彼に会うまでは、彼の手をもう1度掴むまでは、死ねないというのに。

———もっかい会えたらさ、また笑ってくれるよな?

逃げて、キミのトコロへたどり着くから。
だから、待っていて。

「ッチ」

ふらつく足取りで、それでも精一杯、走る。
もともと運動神経の良い瑞生は、木と木の間を器用に擦りぬける。
日本刀を持ったまま、奴は追ってくる。
傷が痛む。
心の傷も。
それでも、憩いの彼を求めて。
彼の、手を求めて。



「瑞生!!」



嗚呼、待っててって、言ったのに。

「岳、人、」
「どうした! 何でそんな怪我?!」

岳人は瑞生のもとへ駆けより、身体を支える。
岳人から伝わってくる鼓動は、早かった。

「大丈夫か?!」

———暖かい。

2人は、互いに抱き合う。
そして、互いに誓う。





もう、離さない。





「待てよ」
「なん、だよ?」

誰だ?

抱きしめている瑞生が、急に震えだした。

「逃げ、て、」
「は?」

「逃げろッ!!!」

懇親の力で、叫ぶ。
その一声で、岳人には全てが理解できた。

「逃げるぞ!」

黒い奴は、何処までも追ってきた。
何処へ逃げようと、どう攻撃しようと、何処までも何処までも。
追ってきた。

「クソッ・・・」

後ろは、崖。

「行き止まりだ、観念しろ」

瑞生の体力を考えても、もう無理だ。
戦う、しかないのか?

「・・・」

嗚呼、何やってんだよ。
馬鹿だな、何で好きな奴の足引っ張りまくってんだよ。
離したくない、離れたくない。
それは俺の我が儘だ。
俺の勝手な願いだ。
だけど。

この人の命を捨ててまで、通すような我が儘ではない。
この人を道連れにしてまで、叶えるような願いじゃない。

振り返ると、そこは崖。
ここから落ちれば、死ねる?

「クソ、何だよ、こっち来んな!」

相手に向かって叫ぶ岳人の腕を擦りぬける。
当然、岳人は瑞生の行動に気がついた。

「瑞生?!」
「逃げろ、な?」
「待て!」


大好き、だから。



「俺は、此処で。 サヨナラ、岳人」



暗い闇で顔の見えない敵だったが、瑞生には一瞬だけ、不気味に微笑んだように見えた。

刹那。

瑞生の身体が、崖の向こうに消える。







「瑞生——————」







一歩、一歩でも遅ければ。

「が、くと、」

涙と血でぬれた顔を、瑞生は見せた。
悲しそうに、切なそうに、自分自身を責めるような表情をしていた。
でも、少しだけ、嬉しそうだった。

「——、馬鹿野郎、」

そう呟き、「離せよ、」と一言言った。
力強く、岳人は首を振る。










「もうお前を、離さないって決めたんだよ!!!」











———離さない、お前だけは絶対に。

身体は宙を舞う。
世界は反転する。
風が身体を裂くように刺さる。

気がつけば、地面に叩き付けられる。

「い、た」

生きているのは、奇跡だろうか。

「岳、人、」

瑞生をしっかり抱きしめたまま。
下敷きになった、彼。

「馬鹿、や、ろ———————・・・」


















2人の天使は、離れることなく。
何時までも、何時までも—————————

Re: いろんな愛のカタチ−スキだからだからこそ− ( No.7 )
日時: 2010/10/24 09:40
名前: 扉 ◆A2rpxnFQ.g (ID: TtH9.zpr)
参照: 俺は永遠に、キミの夢になる。






すぐに終わるよ。
こんな腐ったゲームも、苦しみも、痛みも、全部。
夢なんだよ。
悪夢なんだよ。



だけど。



感じる、キミの温もりは確かなモノ。







こんな状況なのに、キミといられるコトが幸せだって思ってしまうんだ。







こんな血と憎悪と悲しみで染まった世界で、キミは幸せな夢のような存在だった。





逢いたい、人が居る。
守りたい、人が居る。
もう、その願いは叶わないかも知れないけれど。
例え、夢の中でだって良い。
もし、叶うなら。
腕いっぱいに、キミを抱きしめよう。


「・・・ッ」

傷が、痛くて、痛くて、どうしようもなくて。
もう、ワケが分からなくて。
なんで、俺が。 なんで、アンタが。 どうして、こんな。
なんで、なんで、なんで、どうして、どうして。

「・・・ま、だま、だ、だね、」

いつもは、相手に向かって言うセリフを、今回は自分に向かって言ってみる。
自虐的に微笑んでみせるが、それも長くは続かない。
傷の痛みは、次第に強まっていく。
胸に広がる、暗い疑問と一緒に。

「なんで、だよ、」

この問いに答える者はいない、そう言えたならどんなに楽だろう。
目の前には、不敵に微笑む少年がいる。

「愚問だよ、ボウヤ」

一撃でのダメージを見て、もう攻撃は必要ないと判断したのか、持っていたアイスピックをおろした。
そして辛うじて微笑んではいるモノの、冷たく悲しい瞳で、リョーマを見る。
リョーマはただ、身動きも取れずに睨み返すだけ。

「愚問?」
「ああ。 答える必要なんて無い」
「ふーん。 そ、んなこと、言って、ホントは、答えが無いだけ、じゃないの?」

息を切らせながらも尚、いつもと変わらぬ生意気な調子で幸村を挑発する。
幸村からは、今までの微笑みは消えていた。

ずっと、訊きたかった。
だけど、誰にも訊けなかったコトがある。

なんでこうなった?
どうして殺し合う?
この腐ったゲームが始まってから、何度も見てきた。
人を殺すことに何も罪悪感を感じないヤツ。
ヤツら、どうして殺し合うことを選んだ?

この地獄のような、血生臭くて寂しい暗い世界。

皆、何を求めている?
皆、何を守りたい?





「アンタも、な、にか、守りたいモノ、が、あるんじゃ、ないの?」





「!」

幸村の表情は、一層険しくなる。

「ボウヤ、愚問だと言っているだろう?」
「図星?」

誰に逢いたい?


「逢いたいヒトも、いるんで、しょ?」
「・・・」


何を望む?


「アンタは、何が、欲しい?」
「・・・」


幸村は、しばらく黙ったままだった。
リョーマの問いを考える様子もなく、ただ、冷たい目でリョーマを見つめる。
だけど、それまでとは少し違った。

「じゃぁ、俺からも訊かせて貰う」
「?」

血に染まったその姿には似合わない、穏やかな声で幸村は言った。



「ボウヤはどうなんだ? 守りたいヒトや、逢いたいヒト、望むモノがあるのかい?」




リョーマの瞳に、“彼女”の姿が蘇る。
もう、逢えないかも知れないな。
怒るとうるさくてさ、素直じゃなくてさ。
ま、ヒトのこと言えないけど。
可愛げないヤツ。

でも。

アイツの歌と笑顔は、何故か誰より心地良かった。




————————————————大咲・・・


「・・・るよ、」
「?」


「当たり、前じゃん。 俺には、いる、よ」


幸村が、一瞬だけ綺麗に微笑んだように見えたのは、気のせいだろうか。

その言葉を言い終えたリョーマは、気を失ってしまった。



歌が聞こえる。
綺麗な、綺麗な、澄み切った歌声で。
心地良く、心地良く、ココロに響く。


まるで、夢のように。



「良かった、起きた」

“彼女”が、目の前にいた。

「もう、起きないかと思ってたよ」

これは、夢の続き?

「お、お、さき」
「ああ、無理にしゃべんなくて良いよ、止血中だし」
「・・・」

寝ころんでいるリョーマの隣に、いつになく静かに座る麻由。
それに、リョーマは少しの違和感を感じていた。

———夢だし、仕方ないか。


「ねェ、いつも、みたいに、騒げば?」


騒いで、いつもどおりになって、安心させて。

「はぁ?! ウチがいっつもうるさいみたいな言い方すんなよ!」

うるさく叫んでくれなきゃ、キミといるっていう実感が湧かない。

「いっつも、うるさいじゃん」
「場合によっては怪我人だからって容赦しねェぞ?」
「そういう、大咲じゃないと、らしくない、よ」

リョーマの言葉に、麻由は顔を赤らめた。

「リョーマも、らしくねェよ」

小さな声で、呟いた。




「大咲、歌って?」



「え?」
「だから、いつもみたいに、歌、歌って」
「リョーマ?」

リョーマの視界が、霞みだす。


「お願い」


何かを、悟った。
ああ、もうリョーマは長くない。
青い顔と、その弱々しい声が、それを語る。


「しょーがねェなぁ」


それなら、それならせめて。
キミの望む、自分でいよう。
いつもどおり騒いで、いつもどおり怒って、いつもどおり歌って、いつもどおり、いつもどおり。







素直になれなくて、かわいげのない。
彼方がスキだと言ってくれた、ありのままの自分で。







歌が、響く。

俺はきっと、夢の続きを見ているんだ。
それなら、どうか。
神様が何処にいるかなんて、分からないけれど、どうか神様。



この夢を永遠に。



麻由との時間を、永遠に。










夢なら覚めないで。










「ごめん、“麻由”—————————・・・」


守れなくて。


「リョーマ?」


それから、リョーマは一言も話さなかった。








瞳を閉じれば。
俺は、いつでもそこにいるよ。
キミの夢となって、いつでもキミの側にいるから。









永遠に、俺はキミの夢となる。


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