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序章　

１４年前のこと……

どこか暗闇の中、で赤ん坊の泣き声がする。
とても強く、生きようとする強い意志の表れだろう。それは一つではなく、重なり合って泣いている。

この赤ん坊たちは双子なのだ。一人は女、一人は男。そしてろうそくが暗闇を照らし、男の声が聞こえる。

「男女の双子か……どうする？　われらが一族では、双子が生まれた場合片方を間引くのが習わしだが……」
「情けをかけてやれ。男の方は私が母親に渡してくるから、女の方はふもとに捨ててこい」
「はい」

男は泣く女の子を抱き上げた。
そして女の子の左腕を見てはっとした。途端、全身が震えだす。

「この娘……!」

男はもう一人の子が、外へ連れ出されるのを確認すると、一人で呟いた。

「……ようやく生まれたのか。お前は随分と大変な運命を背負って生まれてきたのだな」

男は女の子を頭をそっと優しくなでた。
女の子はすやすやと穏やかに寝ていた。

男は身をひるがえすと、外へと出た。

〜序章完〜