二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜大江戸イレブン! ( No.71 )
日時: 2010/12/11 13:55
名前: ゆうちゃん (ID: 66DLVFTN)

第十四話『古き友』

「そうか……」
事情を聞いた風丸は少し悲しげにうつむいた。
「源田は何かしらないのか?古い友人なんだろう?」
源田は少し考えるようにしたあと、一言だけ言った。
「いいえ、存じておりません」
源田もまた、悲しそうだった。
「分かった。下がれ」
源田は「はっ」と答えると、立ち上がり踵を返した。

……静かに戸が閉まる。
風丸は源田のいなくなった席をじっと見つめていた。
彼の寂しそうな表情が忘れられなかった。
また、一人。
「俺は……何も出来ない」
悲しませてしまう。
豪炎寺が怪我をして、佐久間が怪我をして。
次は誰が傷つく?
「……お邪魔でしたか」
不意に近くで声がした。振り返ると小柄な体躯の黒ずくめの少年がいた。
少年はかぶっていた頭巾を取ると、一礼した。白い髪がなびいた。
「お前か……。毎回気配を消すのが上手いな」
「お邪魔でなければ、ご報告をば」
少年は早く話を進めようとする。
風丸は「わかった、わかった」ととりあえず内掛けを羽織りなおした。
「……で、どうだったんだ?」
「は。街では特に大きなけが人もなく……仕事時間だったのが幸いしたのでしょう。しかし、城下の家々はほとんどが全壊、あるいは半壊と、ひどく荒れております。犯行者の姿も見えませんでした」
風丸はため息をついた。
(怪我人はなし……か。佐久間は見かけなかったのだろうな)
報告の終わった少年は風丸の次の一言を待っている。緑色の綺麗な瞳で見つめてくる。
その色を見て———風丸は思い出した。
「そなたは、この国の出身ではなかったな?」
少年は質問を投げかけられて一瞬きょとんとした。
「はぁ。父も母も異国の生まれでございます」
「この者の顔を知らないか?」
風丸は部屋の隅の引き出しから、紙を一枚出すと少年に見せた。
以前手配されていたときの、ヒロトの手配書だ。
少年は紙を凝視して「存じております」と答えた。
「私の母国の長の重臣でございます。この者がなにか」
やはり、少年はヒロトと同じ国の出身のようだ。ヒロトと同じ色の瞳がものがたっている。
「とくに、何と言うことはない。ただ、今回の騒動はこの国のものが関係しているらしいからな……そうだ」
風丸は手を打つと少年に言った。
「その国の長の情報をなるべく多く集めてはもらえないか?そなたなら詳しいだろう」
少年は「わかりました。私だけでは厳しいでしょうが、詳しいものがおります」と言って頭巾をかぶりなおした。
「いってまいります」
再び一礼すると、少年の姿は風と供にかき消えた。

「任せたぞ———茂人」



場を変えて、源田の自室。
部屋に戻った源田は懐から数珠をとりだした。
佐久間に渡されたものだ。
障子の隙間からわずかにのぞいた日光に反射して、数珠球が光った。
すると、数珠球からうっすらと赤く文字が浮かび上がった。
“我が修行の寺社に来られたし”
わかってるよ、佐久間。そこに……いるんだな。
源田は手早く荷物をまとめると、旅装束に着替え自室を後にした。
源田は城門の前で数珠を取り出すと、念を込め数珠に息を吹きかけた。
念は文字となり風と供に飛んでいった。
遠くで待っている佐久間に届くだろうか。
「源田様、お出かけですか」
門番の男が言った。
「あぁ、遠方へな。しばらく戻らないから、若様に伝えてくれ」
門番は一礼して再び警備についた。
源田は意を決して踏み出した。

“すぐに行く。無事であれ”