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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 君の笑み、そして涙。【イナズマ短編集】 ( No.15 )
- 日時: 2010/02/11 21:50
- 名前: ぺりどっと(元くろーばー) (ID: SLKx/CAW)
第8話 アイツの痛み
「どこに行くの?」
笠峰は何度も聞いてきたが、
俺は無言でただ手を引き、走り続けた。
「鉄塔広場……」
笠峰は茜色に染まった景色を
眺めながら言った。
そう、ここは鉄塔広場。
ゴーグル越しでもハッキリと見える、
雄大で、綺麗な夕陽。
とりあえず、俺は笠峰をベンチに座らせた。
「夕陽を見てると、こう……
哀しくなるというか」
そのとき、笠峰の目からしずくが
こぼれ落ちたのを、俺は見逃さなかった。
「私はここから見る夕陽が
嫌い。何よりも嫌い」
予想そてたのとは違う反応に、
正直俺は戸惑った。
「だってここで、夕陽が見えるここで
私は傷つけられたんだもの」
傷つけられたとは、文字通りのことを
差しているような気がして
痛々しく思えた。
「あの夕陽が怖い……。
どこかであの人たちが私を
見ているような気がして」
笠峰の涙は止まることなく流れ続けた。
俺は笠峰を連れてきたことを
ものすごく後悔した。
そんな過去があったなんて……
「吹奏楽部に入ったはいいけど、
楽器をまともに吹けなかった。
それでも、バイオリンだけは得意だったの」
泣いたせいか、それとも夕焼けのせいか、
笠峰の目は赤かった。
「でもそれが逆に部活仲間にいじめられる
原因になったの。バイオリンなんて
吹奏楽では使わないし、2年にもなって
自分の楽器を使いこなせないなんて……」
「それで、その苦しみから逃げるために」
「部活は去年の11月から行ってない」
「11月に、何が」
笠峰はスッと立ち上がり、背を向けた。
「お父さんの会社が、つぶれかけたの」
それだけ言うと、笠峰は走り去ってしまった。
俺は茫然と立ち尽くしたままだった。
続く!!
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