二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 君の笑み、そして涙。【イナズマ短編集】 ( No.30 )
- 日時: 2010/03/07 15:58
- 名前: ぺりどっと (ID: wJXgwwJi)
第17話 別れのとき
婚約破棄してもらいたい……
さっきの言葉が頭の中をぐるぐる
回ってる。
悪い意味で意識を失いそうだ。
「で、好きな人って誰だ?」
恐る恐る聞いてみる。
「私ね、何一ついいところなんて
無さそうだけど、バイオリンだけは
得意になれたの」
さっきとは違い、うっとりとした
表情で語る彼女を見ると、心が
ずきっとなった。
「お父さんにだけニコニコして、
私には冷たい目をする大人とは
違って、先生だけは優しくしてくれたの」
先生……バイオリンのか。
「9歳のときに、その先生に変わったの。
他の人の嘘っぽい笑顔とはまるで別物で、
陽だまりのように暖かい、柔らかい笑顔だった」
笠峰がそこまで喋ったところで、
俺はあることをさとった。
つまり……
「つまり、その先生が好きだと」
「!!……鬼道くんには悪いけど、
実は、そうなの。音大の学生で、
私のバイオリン指導の先生でもあるの」
音大の学生か。偉い年の差が……
笠峰は年上好きなのか?
「彼のおかげで、もっとバイオリンを
練習しよう。もっと頑張って、褒めて
もらおうって気になったの」
「じゃあ何故吹部に?」
「先生に勧められたの。音楽をもっと
知り、表現豊かな演奏にするには
吹奏楽をやってみるのが一番って……」
「おまえはその先生に頼りすぎだな」
「鬼道くん、悔しいの?」
「な、何を言ってる!おまえが
そうするなら、俺は別に構わない」
心の底では本気で悔しかったので、
余計痛くなったわけだが。
「あと、来週に私、転校するの」
「え!?」
「お父さんが本社を新宿に移すことに
なったから、ちょっと稲妻町からじゃ……。
だから私、新宿に引っ越すの」
あれか、都心回帰ってやつか。
地理に出てた……
「はい、これ」
笠峰が俺に、封筒に入ったメモを
くれた。その瞬間、彼女の指先が
俺の手に……
「じゃあね、鬼道くん!あと、ごめんね!」
そう言って、笠峰は廊下を走っていった。
——廊下は走っちゃいけないんだぞ。
続く!!