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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 君の笑み、そして涙。【イナズマ短編集】 ( No.31 )
- 日時: 2010/03/07 16:28
- 名前: ぺりどっと (ID: wJXgwwJi)
第18話 初夏の南風にのせて
春は出会いの季節、そして
別れの季節でもある。
俺にとっても、そうだった。
アイツと出会ったこの図書室は、
あのときとは違って貸し出しもしてるし、
借りる人が結構来ている。
暖かい南風も次第に夏を匂わせ、
日差しも強いものになってきた。
俺が本を読んでいると、肩を
ツンツン攻撃された。今度は本の角……?
「鬼道も図書室をよく利用するの?」
肩を攻撃するやつといえば、コイツ
しかいない。やっぱり洋本だ。
「アンタ、失恋したね」
「は?」
「わかるよ、しかもその人、
転校したでしょ」
うん、とうなずきかけるのを
やっとこらえた。鋭いな、そして……
まさか、コイツ気付いてた!?
「やっぱり。顔真っ赤だよ?
ゴーグルあっても、それだけは
ごまかせないのね」
そう言って、俺のとなりに
座る洋本。どうやらお菓子のレシピ本の
ようだ。
「まぁ、人生そんなものよね。
恋も勉強も部活も友情も」
「おまえ、近所のおばさんみたいな
こと言うなよ」
「あれ、お坊ちゃんでも
近所のおばさんとかいるんだ?
なんか親近感わいてきた」
「わかないでいいです」
「まぁ、そう言わないでよ。
今度マカロン作ってなぐさめて
あげるからさ」
「遠慮する。甘いものは好きじゃないんだ」
「マジで!?人生絶対損してるよ?」
「損しようが、得しようが、俺の人生。
どっちでもいいじゃないか」
「まぁ、そうなんだけど」
洋本がそこでやっと黙ってくれた。
視線を感じたので、振り向くと、
図書委員がいた。
洋本がうるさいから注意しようと
してたんだな……
初恋……か。
俺の初恋は、初夏の南風にのって
遠くへ消えた。
アイツの住所と携帯の番号が
書かれたメモも、俺は風で
飛ばしてしまった。
いいんだ、これで。
そのとき校庭の木の葉が、揺れた。
—第1章、完結—
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