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第1話　≪　逃亡者は奈落の底　≫



暗い。尚且つ黒い道。
いつの間にか道を外れてしまった俺。

ただ、あの頃は興味本位で“非日常”に憧れていた。
今はその“非日常”から逃げている。

怖くなった。だから、逃げた。

物事も考えるのをやめた。
考えたら何かが崩れそうな気がしたからな。


『翼、またかよ』

「黙れ」

『いいじゃねーか。こっちの方が昔より楽しいぜ？』

「黙れ。俺はもう、うんざりなんだよ」

『何ビビってやがる。まぁ…お前がこっちに来るのも時間の問題だからな』

「黙れっつてんのが聞こえねぇのか!!!!!」

『いいぜ。それまで、せいぜい逃げろよ』


そこで目が覚めた。
俺は、毎回同じ夢を見る。

暗い世界。黒い道。そして——もう一人の自分。


「…クソッ」


一人部屋の中で嘆く。
その声は誰に届かず消える。

俺は気分を晴らすために出かけることにした。

怖さを紛らわすために。
弱い自分を消すために。