二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ひぐらしのなく頃に 闇零し編 ( No.2 )
日時: 2010/05/10 09:38
名前: 電気女 (ID: WPWjN3c4)

    第壱話【 転入生 】


 がらっ、といつものように知恵が教室へと入ってくる。
 
「きりーつ、れい!」

 そして委員長の号令。ここまでは、いつも通り。
 知恵は、にっこりと笑顔を浮かべて大きな声で告げた。

「さて、今日は新入生が二人来ます!」

 辺りが、ざわざわとし始める。後ろを向いて喋っている者、隣の席の者と喋っている者。
 それぞれだが、全員が楽しみにしていることがよくわかる。
 こほん、と騒がしくなった教室で知恵がわざとらしく咳をする。
 
「はい皆、落ち着いてー」

 声を張り上げつつ—といっても元から人数が少ないため、それほど大きな声でもない—知恵が手を叩く。
 それでざわざわとした声も消え、教室はしんとなる。

「にーにー、どんな人が来るんでしょうね」
「さあ……楽しみだね」
「みー、きっと悟史よりしっかりした人なのです」
「り、梨花ぁ!」
「……むぅ」
「にぱー☆」

 そんな微かな会話さえあれど、全体的に静まった。
 知恵は、続けて声を張り上げた。

「では、今から入ってきてもらいます。どうぞ!」

 そう言葉を紡ぎながら、知恵が扉のほうへと歩いていき、扉を開けた。
 入ってきたのは、男子と女子、一人ずつだった。
 少し暗めの表情をした男子に、穏やかな笑みを浮かべる女子。
 二人はかなり対照的で、はたから見ると男子の印象がかなり悪く見えてしまいそうだ。

「じゃ、自己紹介してくださいね」

 知恵は二人にそうやって言うと、黒板の前へ立つように促した。

「——前原圭一です。東京から来ました」

 黒板の前へ立った男子——前原圭一は、先程とは全く違う明るい笑顔を浮かべて声を張った。
 わー、という歓声らしき声とぱちぱちという拍手の音が交差する。
 その様子に驚いたのかはたまた照れたのか、圭一は顔を赤くして俯いた。

「竜宮レナです。みんな、よろしくね! はぅ〜☆」

 女子——竜宮レナが、相変わらずの満面の笑みで圭一に続いた。
 やはりまた、歓声。拍手。拍手はあれど、普通の学校ならば歓声はあまり起こらないだろう。
 歓声の理由は、別に圭一やレナが芸能人などというわけではない。ただ単に、普通の学校とは違うからである。

 人数が少ない、ここ雛見沢分校。年齢も性別もお構い無しで小学生と中学生が普通に混じっている。
 そして、一クラスのみだ。それもあってか、やけに仲間意識が強い。
 否、それはここだけに限った話ではない。
 仲間意識が強い、というのはこの雛見沢全体にいえることだった。

「はい、静かに!」

 ぱちん、と大きく知恵が手を鳴らす。歓声やざわめきが、やむ。
 
「今から質問タイムを作ります。というか、一時間目は質問タイムにしちゃいます!」

 にっこりと笑顔で告げる知恵。子供達の喜ぶ声があちこちで上がる。
 
「では、先生は菜園のほうを見てきますからね。あまり騒ぎ過ぎないように!」

 え、と呆然とした様子の圭一とレナ。特に圭一は、この世の終わりでも見たかのような表情だった。
 レナはある程度驚いているものの、にっこりとした笑顔を絶やすことは無かった。
 しかし圭一のほうは、もう笑顔なんて消えてしまっていた。わけわからねぇ——そう言いたげに、ぎこちない笑顔を作ってみせた。

「では、後は委員長、よろしくお願いしますね」
「はーい!」

 知恵が、教室から出て行く。ぴしゃ、と扉が閉められる。知恵が鼻歌を歌っているのがわかった。
 そして、委員長と呼ばれた女子が圭一とレナへと歩み寄る。

「あたし、園崎魅音! よろしくねっ」

 にこっと笑顔を浮かべて、握手を求めて手を差し出した。
 圭一は少し気まずそうにしながら、恐る恐る握手を交わす。
 レナは「よろしくねっ」といいながら握手した手をぶんぶんとふる。

 この後、圭一とレナは激しい質問攻めに合うことになる。



—第弐話へ続く