二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【デュ.ラ】池袋浪漫【ララ!!】 ( No.6 )
日時: 2010/05/18 22:48
名前: 箕遠 ◆rOs2KSq2QU (ID: 4TjuuFmy)

……わっ、わっ、私はただの女子高生なのにー!!


 【1章】− 【前途多難】


 池袋市内、某路地裏にて
 午後9時—————


  ♂♀



 「う……う、う……」

 少女の感情を押し殺した声は、弱弱しく路地裏に響いた。少女の心中に渦巻いている恐怖と焦燥の原因は、目の前の現状にある。
 少女は目の前の現状から顔を反らすと、鞄を抱える両手に力に力を込めて、心の中で思い切り叫んだ。


 (————な、何で私がヤンキーに絡まれなくちゃいけないのよー!!)



 ————そう、少女の目の前には、下卑た笑いを浮かべるヤンキー5人組が立ちはだかっていた。少女が見る限り、凶器に値するものは持っていない。しかし、どいつも体の一部に緑色の装飾物を身につけている。
 地方から出てきたばかりの彼女にとって、目の前のヤンキー達の格好は些か風変わりなものに思えていたが————まぁ、そんなこと今の私には関係はない、と彼女は頭を振った。


 (……というか、私ここからどうやって逃げよう……)


 こんな人気のない路地裏だ、大きな声を出しても気付かれるかどうかだろう。……そんな夢も希望を果てそうな彼女に、追い討ちをかけるようにヤンキーの1人が嘲笑を浴びせかけた。


 「……あーれーぇ? ねーちゃん、何考えてんのーぉ? 早く俺らと遊びに行こうよー」
 「そうだよー」
 「ま、どうせお持ち帰りしちゃうんだけどねぇ」
 「ちょ、タカヤンぶっちゃけんなっつーの!」
 「あはははははは」

 (し、知らないよっ! わ、私はただの女子高校生なのにーい……)

 5人は脅えている少女なんか目もくれず、個人で低俗な話題を出し合っては笑いあっている。少女はそんな男らを出来るだけ強い眼光で睨みつけた。虚勢だということは分かっていたが、それしか出来ない少女にとって、それは最大限の防御であった。
 と、その挑発的な目線を送っていると、たまたまヤンキーの1人と視線が合ってしまった。
 視線があってしまったことにより、身を竦ませる少女。そんな少女を生意気だと感じ取ったのか、ヤンキーの1人は不機嫌そうに詰め寄った。


 「ああッ!? 何だ、テメェ。何で睨んでんだよ、ああッ!?」
 「い……嫌……違っ……」
 「はあっ!? ざけんなよコラあっ」


 ガシャーンと音を起てて、少女の隣に位置していたゴミ箱が崩れ落ちる。男が蹴った部位が浅く凹んでいるのを見て、少女は背筋にぞわぞわと這い上がるものを感じた。

 
 「……ちっ! ……ちょ、お前、来い」
 「え? やだ、やめてくださいっ」
 「うるせぇ、黙れ! 他の奴等に聞かれたら面倒なんだよ! ……おいタカヤン、よっちん。手伝え。この女運ぶぞ」

 
 無理矢理少女の腕をとって車に連れ込もうとした男は、その手伝いを他の2人に命じる。少女はこれから自分がこれから何をされるのか大方予想が出来—————一瞬にして青ざめた。

 
 (ちょ、何で何でっ!? 私はただの女子高生なのに、最近地元から出てきたばかりの、池袋の新米なのにっ! もっとハッピーな楽しいことばっかだと思ってたのにぃ! やだやだやだーっ! た、助けて……誰かー!!)


 そこで、ようやく彼女は初めての抵抗を見せる。

 
 「やだっ! やめてくださいっ! 行きたくないっ!」
 「くそっ、お前、じたばたすんなっ!」
 「嫌だ、嫌だっ! 誰か、誰か助けて—————」

 
 無理だと思っていても、彼女は叫ばずにはいられなかった。だって彼女は今まで日常を歩んでいたのだから。こんな非日常に巻き込まれるなんて、計算、いや、予定には無かったのだから。
 ————だから、少女はありったけの力をこめて叫んだ。助けてくれという願いをこめて。
 しかし、無情にも、男達の腕力と彼女の力には差が有り過ぎて。



 少女は、最後にありったけの叫びをあげた。
 日常に戻りたいという一心で。


 「やだやだ、行きたくな……! ……あ、れ?」


  —————刹那。
 自分に群がっている男達の肩越しに、少女は何か光を見た。赤いような、青いような、不思議な光を。

 それは幻覚か、現実か。