二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ひぐらしのなく頃に【のんびりと短編集】 ( No.2 )
- 日時: 2010/06/16 18:34
- 名前: 水無月 ◆ssY7q3xNgE (ID: KoErH5Nm)
- 参照: 元雲丹です☆
「百年の想い Ⅰ」
−詩音ver−
カナカナカナ………
昭和59年六月
今日も暑い日が続きひぐらしが一斉に朝から合唱していた
「し、詩音さん!悟史君の…目が覚めました!」
電話でその知らせを監督から教えてもらったのは今日の朝だった
私はいても経ってもいられず、寝ぼけていた頭を活性化させすぐに着替える
学校なんてどうでもいい。私は診療所に向け走り出した
診療所に着くと入り口ではすでに監督が待っていた
「詩音さん!待っていましたよ。早くこちらに!」
監督に言われるまでもなく、私は彼の病室まで走った
部屋は朝日に包まれていた。その朝日の下に…彼は起きていた
「詩音…おはよう…」
笑顔で言う悟史君の姿を見たとたん、私の涙腺は弱くなり彼の胸の中で泣いた
「悟史くん…!悟史くぅん…!ずっと…ずっと待ってたんだよ!
私ね、ちゃんと約束を守ったんだよ…!本当だよ!
沙都子はね、私のことねーねーって呼んでくれる。それにね、それにね…うわぁあぁぁん!」
私は一人でずっと泣き続けていた…。ただ…ただ…嬉しかった
そんな私を悟史君は優しく撫でてくれた
■□■□
それから一ヶ月が経ち私は毎日診療所に通った
その度に悟史くんに今までの一年間何があったかを話した
悟史くんも日に日に元気になっていって、ついに退院できる日が来た
もう私は我慢できなかった。この想いを早く聞いて欲しくて…
その退院の日、私は彼に告白した
だけれども…返ってきた言葉はあまりにも無惨だった
「ごめん、詩音…。僕は君の事を仲間だと思ってるけど、恋愛感情としての『好き』 という感情までは持っていないんだ
だから、今まで通り『仲間』として 付き合わせてくれないかな?」
悟史君はむぅと困った顔をしながらそう言った
私は自分の部屋で夜一人でずっと泣いた。そんなのって…ないよ
1年間ずっと待ってたのに、そんなのって…
一度は、圭ちゃんに揺らぎかけたこともあった
一度は、死んでしまったんじゃないだろうかと考えたこともあった
一度は、もう病気が治らないのではないかと恐れたこともあった
でも…そんな感情すべてを押さえつけ今まで信じて生きて来た
あの日の約束を果たし、いつ帰ってきてもいいように待っていた
その結末がこれだなんて…。あまりに惨たらしい…
「うわぁぁあああああああああぁ!」
私の叫びにも似た泣き声は夜空に吸い込まれていった…
□■□■
朝日が眩しい。どうやら、そのまま寝てしまっていたようだ
眠たい…。けれども学校には行かなくてはならない
私は重たい体を無理やり起こし、学校に向かった
そこに広がるのはいつもの風景。楽しそうに皆笑ってて楽しそうに遊んでる
不幸など感じさせない夏の風景
でも、そんな中で私一人だけが不幸なのだ
私は妙な疎外感を感じるとともに、 妙な嫉妬を持っている自分に苦笑した
私は少し驚いたことがある。それは悟史くんの復帰だった
退院したのだから、学校に行くのは当たり前なのだが それにしても早いと思った
まぁ、監督から色々お世話になってるんだろう
でも、もう私には関係の無いことだった
『好き』ではないと言われた瞬間からもう私の中で『仲間』でもなくなってしまった
そんな考えは間違っているとは自分でも思う
でも傍に居ても居づらいだけだし、悟史君もそう思うだろう
休み時間になると、皆が悟史君に集まる。
どうせ質問攻めに遭ってるんだろう。それは容易く想像ができた
沙都子は昨日の夜には悟史君にあったらしい
だから今では元の北条家の家で生活している
もちろん、他の部活メンバーには寝耳に水のことだったらしく…
クラスのみんなと同じように質問していた
質問の中身は分かりきっていることで…
「今までどこにいたのか?」とか「何故いなくなったのか?」といったことだった
いずれにしても私は全てを知ってるからどうでもいい
そんな私の様子をあの部活メンバーが気付かないわけがない
特に圭一は私の変化に敏感に気付いているようだった
昼休みになると、私は居づらい空気を感じて外で昼ご飯を食べていた
寂しい…。どうして悟史くんは私を受け入れてくれなかったのだろう、と今更ながら悲しくなる
でもよく考えるとそれは分かりやすいものだった
それは…なにより私との付き合いの短さだった
私は悟史君と出会ってからは、魅音のふりをしてちょくちょく悟史くんに会っていた
だけど、悟史君にとってはそれはほとんど魅音だったわけで…
私という存在がいることを知ったのは、私がおもちゃ屋でアリバイ作りのために
私が詩音だと明かしたときだけ…
だから私がいきなり好きだと言っても、素直には受け取ってくれないのだろう
沙都子のことを頼まれたのも。 もしかして『魅音』だったのでは…?
そんなはずはない!そんなはずはない!そんなはずは…!そんな…はずは…
「うぐっ…、悟史くん…私、頼まれたんだよね?頼んだよね?……うぁ…ぁ…!」
私は廊下で声を殺して泣いた
−続く−