二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ひぐらしのなく頃に【のんびりと短編集】 ( No.4 )
日時: 2010/06/16 18:28
名前: 水無月 ◆ssY7q3xNgE (ID: KoErH5Nm)
参照: 元雲丹です☆

「百年の想い Ⅲ」

−悟史ver−

僕は…詩音とどう接したらいいんだろう?
昨日、詩音の告白を断ってからそのことばかりが頭を過ぎる

詩音は確かに可愛い女の子だ。だけど、よく分からない相手と付き合うなんてできない…
あれから詩音は僕を意図的に避けているようだった
理由なんて聞かなくても分かる
さっき詩音が教室から出て行くときにちらっと見えた泣き顔が頭に浮かぶ…

「悟史?どうしたのですか?」
梨花ちゃんだった。気付けば、僕はご飯を食べる手を止めてボーっとしていたようだ

「ごめんごめん、なんでもないよ」
「詩ぃのことなのですか?」
いきなり核心を突かれ、ギクリとする。その反応でばれたようだった

「詩ぃと何があったのか教えてはくれないでしょうか?」
そこで気付く。心配していたのは梨花ちゃんだけではなかった
沙都子にレナ、魅音も身を乗り出して聞いていた

「悟史?なにがあったのか教えてよ」
「私たちが力になれるのなら話して?」
「詩音さんが大人しいのはいいことなんですけど…あれはどういう事なんですの?」

話すべきだろうか?よく考えてみる
相手は自分とは違う女の子達だ。それならば男の自分が一人で悩むよりも詩音のことを分かってくれるだろうか?
とりあえず話してみよう。話せば楽になるかもしれないし

だから昨日のことを話した
その間皆は真剣に茶化すことなく聞いていた
僕が話し終えると、まず最初に魅音が口を開いた

「ひとつ、聞いていい?悟史が居なくなる前にさ、電話くれたよね
 あれって『私』に頼みたかったの?それとも詩音?」

「あれは…僕もたまに魅音が二人居るんじゃないかと思ってたよ
 だから僕と喧嘩した『魅音』に頼みたかったんだ」

「そう…なら詩音のほうなんだね、頼んだのは。ならさ…どうして詩音の告白を断ったの?」
真剣な表情で魅音は僕に問いかける

「どうしてって…、僕はまだ詩音のことをよく知らないから…」
「嘘だよ」
レナに即答されビクっとする

「知らないはずはないよ。だって悟史くんは詩ぃちゃんから聞いたんだよね?
 この一年なにがあったのか。聞いてるよね、病室で」
そういえばそうだ。詩音から色んな話を聞いたっけ

「その話の中には、詩ぃちゃんのことも含まれているはずだよ。なのに悟史くんは嘘をついた」

「僕が嘘を…?」
思い当たる節が無かった

「うん…それはね…悟史くんが心のどこかで園崎家をいまだに怖がっているからなんだよ」
「僕が…園崎家を…?」

そんな馬鹿な…とすぐに自分で否定できない…

「そうだよ。悟史くんは園崎家を怖がっている。だから詩ぃちゃんの告白を断ったんだよね?
 園崎家の詩ぃちゃんと付き合えば、何か自分の身に起きるんじゃないかって思ってるんじゃないかな」

魅音は苦笑いしつつも僕に言う

「もしもそうじゃなくてもさ、詩音はあんたの約束を守ったんだよ!一年も!
 退院したばっかりの悟史には分からないかもしれないけど
 信じて待つことがどんなに辛いか知ってる!?分からないでしょ!
 詩音はね、ずっと待ってた。沙都子を本当の妹みたいに可愛がって」

「詩音さんは、私にとっての本当のねーねーでしたわ。
 いつもなにかと家に寄ってくれて、病気のときは一晩中そばにいてくださいましたし
 にーにーに頼まれただけなんですのよ!それなのに、詩音さんはいつも可愛がってくれた
 にーにーはあんなに純粋で強い人の告白を断るんですの?…まあ性格はひねくれていますけどね」
沙都子が笑いながら言う

「もう、園崎家は怖くなんか無いのですよ。その問題はもう水に流れたのです
 でも悟史が詩ぃのことをどう思おうが悟史の勝手なのです。あとは悟史の問題。でも…」

梨花ちゃんの雰囲気が変わった気がした。
「梨花…ちゃん…?」

「もしあなたが詩ぃの想いを考えずに自分のことだけを考えているのならば…私はあなたを軽蔑する
 だって詩ぃがあなたに恋するのは、いつの世界でも変わらなかった事
 どの世界でも必ずあなたに恋をし、どの世界でもあなたはいなくなった
 その度に詩ぃは傷つき、時にはその想いが間違った方向に進むこともあった
 でもあなたへの想いが変わることは無かった。
 今までの100年以上、詩ぃはあなたを想っていた
 それなのにあなたはその100年の想いを蔑ろにするというのか!
 もしそうならば私は貴方を許さない!どうなんだ、答えて見ろ北条悟史!!」

涙が、頬を伝う…

…僕はなんてことを…してしまったんだろう。こんなにまで僕を想ってくれている詩音の
告白を断り、傷つけ、泣かせてしまった
もう詩音は僕を嫌いになっているかもしれない
あの時『好きだ』と素直に一言、言えていれば…!

梨花ちゃんはいつもの笑顔に戻っていた
「悟史…。まだ遅くはないのです。今ならまだ間に合いますです」
「そう……思うかい?」
「そうなのですよ、にぱー☆」

僕は決意を胸に教室を出た。昨日言えなかった言葉を言うために…

■□■□

−詩音ver−

「もう大丈夫か、詩音?」
「ええ、ありがとうございました、圭ちゃん☆」
スカートの埃を手で払い落とし、教室に戻ろうとした時…。

悟史君が私の所に走って来た。もう想いは固まっている
「圭ちゃん……先に戻っておいてくれませんか」
「そうした方がいいみたいだな、頑張れよ詩音!」

圭一は私の肩を軽く叩いて、教室に戻って行った。
ありがとう圭ちゃん…

悟史君は私の前に立った。
「詩音…昨日はごめん……」
「もういいんです。そのことは」

「そうじゃないんだ、僕が謝りたいのは…!」
「えっ……?」
悟史君の目にはすでに涙が溜まっていた

あの告白を断ったこと以外に、悟史くんが謝ることがあっただろうか?
いくら考えても分からない。

「僕は……嫌な男だよ。詩音のことを考えずに自分のことを優先した
 君と付き合ったら園崎家から何かされるんじゃないかって…恐れてたんだ」
「どういうことですか…それ。意味がよくわ分から…」

「分からなくてもいいんだ!分からなくても……!
 君は僕のために爪まで剥いでくれたのに……臆病な僕は自分の身が傷つくのを恐れた」
恐らく爪のことは魅音から聞いたんだろう。でもそんなことはどうでもよかった

「昨日言えなかった言葉を……今、ここで言わせてもらえるかな」

悟史君は一呼吸置く

「詩音、君の事が大好きだ」

その言葉に視界が急にぼやけて来る
それは嘘じゃないよね?
これは夢じゃないよね?
私の聞き違いとかじゃ…ないんだよね?

「君と付き合わせて欲しい」

「う…くっ…悟史君…!悟史くぅん…!」
涙が零れる

私も彼に思いっきり抱きつき、今の気持ちを伝える。

「私も大好き!!」

私の恋はこうして実った

−*end*−