二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 鋼の錬金術師 —青海の天使— ( No.2 )
日時: 2010/06/13 15:40
名前: チサ ◆P03X2pP4VU (ID: nsETnIj1)

        プロローグ

 輝く太陽と、真っ青な海。海はとても綺麗で、透けている。上からでも魚が泳いでいるのが見える。様々な色の魚は、気持ちよさそうに、そして優雅に泳いでいる。
 その輝く海のそばに、少女が一人。愛しげに、そしてまたどこか寂しそうに輝く海を見つめている。その時、白い羽が少女の手の平に舞い降りた。少女は羽を見つめると、そっと息をふきかける。鳥が空に飛び立つかのように、羽が宙に舞う。

「……飛んだ」

 ただ一言、少女は呟く。その呟きに答えるかの様に、羽はさらに上へと舞いあがった。少女は微笑みながらその羽を見つめていた。
 しばらくすると、海辺の近くに車が止まった。少女は顔だけをそちらの方に向け、目を大きくさせた。
 
 次の瞬間には、少女は走り出していた。行く先はない。ただ、走るしかない。走らなければ——走らなければ、自分は地獄に戻ってしまう。

『生き延びるんだ。また、迎えに来る』

 生みの親である男はそう言って去って行った。ぼんやりとしていたので、よく分からなかった。次の瞬間には、あまりの身体の痛みに気を失った。目を覚ませば、青い服が見えた。

(軍服……? 国家錬金術師……)

 心の中でそう判断すると、次の瞬間には逃げだしていた。あのお方から聞いた。自分は軍人から逃げなければ、たちまち地獄同然の所に送られる。送られて、死ぬまで働かされる。
 だから逃げた。地獄だけは嫌だった。そんな思いだけで逃げた。
 
 今もそうだ。逃げている。軍人の身なり。あれを見た瞬間、勝手に身体が動いた。

「国家錬金術師……!」

 少女は呟きながら、ただただ走り続けた。軍人が見えなくなるまで。