二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   空 【銀魂】 ( No.165 )
日時: 2010/09/05 22:10
名前: アリス (ID: cmeedneH)

—特別番外編 朱ト紅—


血。
血。
血。
辺りは血で紅の色に染まる。

紅。
紅。
紅———それは私のもう一つの呼び名。

“紅”(くれない)。

それは攘夷戦争時代の時に付けられた、血に濡れた私の名前。

天人は私を見掛けると、必ず刀を向けた。

敵わないのに。
あんた達如きが勝てる相手ではないのに。

止めて。
もう殺したくないから。
私…もう血は見たくないの。
悲しいから。
お願いだから、刃を向けないで。

お願い———!!


———————————


気付くと、私は先程刀を向けて来た天人を全滅にしていた。

駄目。
このままじゃ、私…“自分”を保てない。
けど、駄目。
もう体が動いてる。


「や、やだ…!!」


心とは反対に動き出す体。
それはきっと、体がまだ血を欲してるってこと。

誰か。
誰か。
助けて!!

ふと、銀髪が顔の前を横切った。
私の腕が止まり、銀の姿が目に入った。


「ぎ、ん…?」

「…一緒にいてやる。お前が辛い時も、悲しい時も、何時だって。だから、一人で背負うな」


血だらけの私を、銀は優しく抱き締めてくれた。
何処か温かい。

何故だろう?
銀といると、心が落ち着くのは。

嗚呼、きっとそれは私が銀のことを好きだから。


「ありがとう…」


血だらけの私でさえも、包み込んでくれるんだね。

銀はこんな餓鬼で、口悪くて、チビな私なんかに見向きもしないよね。
けど、良いから。
それでも、良いから。


今だけはお願い。

一緒にいさせて。


———————————


随分と時が経っただろう。
遠くから、また天人が近付いて来る音がした。

また、戦わなくちゃ。
また、血を浴びなくちゃ。


「…アリス」

「何…?」

「一緒に戦えば、怖くないかもな?」


銀がそっと、私に手を差し伸べてくれた。
私は嬉し過ぎて躊躇ったけど、銀の手を取った。

そうだよ。
二人で戦えば、怖くなんかない。
銀が、助けてくれるから。

きっと銀からすれば、怖がってる私の為に手を差し伸べてくれただけ。
けど、私はとても嬉しかった。


「行こう!!」

「あぁ…」


私達は立ち上がり、走り出す。
天人の待ち構える戦場に。

確かに、この戦争では失った物は多かった。
多くの同志を失ったけど、私はこの戦争で気付いたこともあった。

普段の、何気無い会話。
何度も命を失いかけて、それが“宝物”だと気付けた。

一緒にみんなと笑い合えること。
それも“宝物”で、大切な物。
私の守るべき物は此処にあるから、必ず守る。


沢山の天人の命を奪い、仲間を助けられなかった私。
天人にだって心もあったのに。
私は沢山の天人を非情にも切り捨てた。

その沢山の命を奪った代わりに、私は精一杯生き続ける。

生きられなかった仲間。
殺してしまった天人。
そいつ等の代わりに、生きる。

償い?
同情?
———そんな簡単な気持ちじゃない。


私は精一杯生き続ける———そう決めたから、そうするの。