二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   空 【銀魂】 番外編up!! ( No.175 )
日時: 2010/09/05 22:11
名前: アリス (ID: cmeedneH)

—特別番外編 少しの勇気と優しさを—


正直始め、あの屯所にいることが苦痛だった。

僕は長い間、暗い暗い闇の中で生きて来た。
だから、あそこの明るい雰囲気は苦手だった。


明るいのは嫌。
暗い世界にいたから。

眩しいのも嫌。
太陽が嫌いだから。


なのに、何故?
此処の人達は僕が避けようとしたって、笑顔で寄って来る。

特に———。
沖田 総悟って奴。

やけに馴れ馴れしくて、鬱陶しい。
明るくて、常に周りに人がいる。
僕とは正反対な奴———。


「雅焔さん。雅焔さん!!」


僕は意識を戻し、目の前にいた山崎 退に目をやった。

どうして、みんなこんなに優しいんだろう。
僕に優しさなんか、いらないのに。
優しくされても、優しさは返せない。
僕はそんなだから。


「あ…すいません山崎さん。折角鬼兵隊の話聞かせて頂いてたのに」

「良いですよ。それに、鬼兵隊の話なら何時でも出来ますから。気分が乗ってなさそうですから、散歩でもして来たらどうですか?鬼兵隊の話は、また後にしましょう」

「ありがとうございます。すいません、気を使わせてしまって」


山崎さんは立ち上がり、襖に手を掛けた。
ニッコリと微笑んで、山崎さんは襖を開き部屋から出て行った。

悪かったかも知れない。
話の途中に考え事に浸る、なんて。
きっと良い気はしなかっただろう。

僕はハァ、と溜め息を漏らしてゴロンと寝転がった。

僕は、何故此処にいつまでもいるんだろう。
出ようと思えば、いつだって出られるのに。
いつの間にか、此処が僕の“家”になってるんだろうか。

僕はまた溜め息を漏らして、目を閉じた。

その時。
襖が開く音がして、僕は飛び起きた。

嗚呼、また。


「また総悟?驚かせないでよ」

「そっちが勝手に驚いたんだろィ。とにかく、行きやしょうぜィ。新しく団子屋さんがオープンしたらしいんでねィ」

「…行く」


“家”。
何か、変な感じだ。
今まで“家”なんかなかったから、僕は暗闇の中———一人孤独に生きた。

のに、此処に来てから随分僕は性格的に丸くなった気がする。
みんなの優しさに触れたからかも知れない。


「雅焔…雅焔!!」

「…あ…」


どうやらまたしても話を聞いていなかったらしい。
総悟が少し不機嫌そうに、僕を見つめていた。


「さっきからボーッとし過ぎですぜィ」

「うん…ごめんね」

「雅焔は可愛いんですからねィ…」

「え?」


可愛い?
僕が?

一瞬聞き間違えたのかと思って、聞き返した。
けど、どうやら違った様で。

顔を真っ赤に染めた、総悟がいた。

分かった。
何故優しさを返せない、僕にさえ優しさを与えてくれるのか———。

それはみんなが優しいから。

みんな、無償で僕に優しさを分け与えてくれる。
今まで冷たかった僕の心でさえ温まる程の、みんなの優しさ。


「…総悟」

「何でィ?」


顔の赤みが収まった、総悟が振り返る。

僕も、みんなの優しさに応えてみよう。
勇気を少しずつ———出せるようになってみよう。


「ありがとうっ!!」


end....