二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 空 【銀魂】 みんと水飴様アンケリクup!! ア ( No.407 )
- 日時: 2010/10/20 19:07
- 名前: アリス (ID: /jbXLzGv)
—特別番外編 もっともっと—
俺は紅影 刃。
職業は始末屋。
そこそこ楽しい毎日を送ってる。
まぁ…あいつがいれば、あとは最高なのにな…?
———————————
男らしい名前だと子供の頃からバカにされて来た。
何時の日にか、俺は自らを男と名乗る様になっていた。
仮面を被り———自らを偽る様に———。
そんな或る日。
何ら変わりの無い一日だった。
俺は其の日、偶々遠くにある山に修行(笑)に出掛けていた。
修行とは言っても、木に登ったりするだけの修行内容だが。
修行を終え、帰って来た時———村は跡形も無かった。
俺は、いつまでも泣き続けた。
そんな時———。
「どうしたの?」
一つの長いみつあみに束ねた、橙色の髪。
ニコニコと微笑む其の表情を、俺は怖く感じた。
俺は思わず後退りした。
野生の勘、という物だろう。
「…君、何て名前?」
「…こ、紅影 刃…」
「ふぅん。可愛い名前だね」
可愛い、名前?
思わず耳を疑った。
今まで言われたことの無い言葉だった。
今まで、男らしい、など貶されたことしか無かった此の名前。
嫌だった———。
こんな名前を付けた、両親を少しだけ憎んでいた。
まともな名前であれば、女の子らしく生きていけたかも知れなかったのに。
「お、お前は…何て名前なんだ?」
「神威」
「神威…———」
言葉を失った。
初めて名を誉められた。
嬉しさが込み上げ、何とも言えなくなる。
「刃。一緒に来ない?」
ニコニコと笑顔を浮かばせた神威は、俺に手を差し伸べてくれた。
自分の名なんか、嫌いだった。
其れがキッカケで苛められたのだから。
けれど、神威だけが認めてくれた。
自分が嫌いな自分を、好きになろう。
否、好きになりたい。
お母さん、お父さん、名前が嫌いだなんて言ってごめんなさい。
「俺なんかで…良いの…?」
「勿論」
笑顔を絶やすこと無く、神威は手を差し伸べたままだ。
俺が躊躇いがちに其の手に自分の手を近付けると、神威は俺の手を掴んだ。
ビックリして思わず体が跳ね上がった。
一生、神威に付いて行こう。
俺はそう固く誓い、神威に付いて行った。
無論、良いことばかりでも無かった。
人を殺す———其れは大罪だと思い込んでいたせいで、一時期は神威にさえ反抗した。
けれど、神威に置いて行かれたら、俺には他に何が残るだろう?
否、残らないのだ。
だから、俺は恐怖心を捨てた。
人を殺す為に、不必要な代物だから。
俺はいつの日か、神威と別れを告げた。
強すぎる神威に遅れを取る俺が、嫌で。
そしたら、神威は。
「いつか…刃がもっともっと強くなったら、迎えに行くね」
あの日と同じ笑顔を浮かべて、笑うんだ。
早く迎えに来て貰おう。
神威の背中を守れるぐらい、強くなったら、神威は必ず来てくれるから。
其れまで、束の間の別れ。
(神威、俺…もっともっと強くなるよ)