二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【銀魂】曇空にも月は輝く キャラ人気投票中! ( No.132 )
- 日時: 2010/12/26 11:42
- 名前: 瑠々 (ID: 5YaOdPeQ)
番外編「失ったあの日」
縁側に淡いピンクの花びらが舞う。
その花びらと同じ髪の色をした少女は壁によっかかり、ボウッとしていた。
「月奈。母さんがおやつだってよ」
と言う少年の声に反応すると、蔓延の笑みを見せた。
するとすぐに、月奈と同じ髪の色をした女性がお皿に饅頭をのせて
やって来た。
「母さん!有難う!!」
月奈は再び笑うと饅頭を一つ取り、口に運んだ。
「月奈、慌てずにちゃんと噛んで食べろよ」
「破斗兄ィ。分かってるよ!」
分かっていると言いながら、饅頭を喉に詰まらせてしまった。
「ほら。言わんこっちゃない」
破斗はそう言うと慌ててお茶を持ってきて、月奈に飲ませた。
「ぷはーッ。有難う、破斗兄ィ」
月奈はそう言うと、あっと言う間に饅頭を食べ終えた。
優しい兄。優しい母。優しい父。月奈はずっと、この日々が続くと
疑いもしなかった。
———そう、この時までは・・・・。
夜。そろそろ寝床に入る準備をしないと、と思い始めた時だった。
急にお父さんとお母さんが「こっちに来なさい」と言うと、
沢山のお金と二本の刀を月奈と破斗に手渡した。
その時月奈は内緒で淡い紅水晶も貰っていたのだが。
「良い?今から、これを持って外に出なさい。そして、近くの川原まで二人で行きなさい」
母は訳も言わず、月奈と破斗を外に出した。
悲しそうな目をして。
それからどれだけ経ったのだろうか。当然辺りが騒がしくなって来た。
破斗と月奈は不思議に思って騒ぎの元へ行ってみた。
その時、月奈はふと思った。
(この方向、家の方向・・・)
騒ぎが大きいほうに近づく度、手が震えてくる。
すると、騒ぎの元に着いた。そこは見覚えのある場所。
そう、そこは家がある場所だった。嫌な予感がして月奈は群れの中を走って、群れの一番前に立った。
その時、月奈の瞳に写ったのは————・・・・。
「家・・・、が・・・」
燃え上がる炎。その炎の中には父と母が居る家があった。
(父さん、母さん!!)
月奈は燃え上がる炎の中に入って父と母を捜そうとしたが、破斗がやって来て止められた。
どんどん焼けていく家。この中には大好きな父と母が居るのに。
「嫌だ、嫌だ。父さん、母さん!!!」
少女の叫び声は赤く染まった夜空に消えていった。
あれから数時間が経った。夜は明け、空から雨が落ちてくる。
灰となった家の前に月奈はたった一人、刀を抱いて呆然と立っていた。
すると破斗がやって来て、口を開いた。
役人から聞いた話らしいが、天人襲来で攘夷戦争が勃発している。
天人達は侍達の勢力を抑える為に、一部の侍の家から刀を奪い、
もしもの為に大きな勢力を持つ刀鍛冶屋を潰して行った。
その様な事には全く無関係の月奈の家だが、剣の腕が高い月奈の父を
殺す為に家を燃やしたらしい。その事は誰も予想してなかったらしいが、月奈の父と母は危険を感じ、破斗と月奈を逃がしたと言う事だ。
その事を聞いた月奈は絶句した。
何もしてない父と母を殺した天人を。
何にも出来ない幕府を。
憎くて憎くて堪らなかった。
天人も幕府も大嫌いになった。
壊してしまいたくなった。
でも、父と母がそんな事を願っている筈がない。
己の命にかけても守った子供達に危険な事があって欲しくない。
月奈はそう思うと憎むのを止めたが、破斗は幕府や天人を憎む気持ちで
いっぱいになっていた。
そして火事から二年後、「月蓮華隊」と作り、攘夷戦争に参加した。
天人が襲来したあの日から、
すべては最悪な方向へ進み始めていた————。
〔終〕