二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】曇空にも月は輝く【スレッド一周年企画&銀時誕うp】 ( No.231 )
日時: 2012/01/29 14:31
名前: 瑠々 (ID: bFAhhtl4)

第四十三訓「展開早いけど気にしちゃ駄目」

美星が出て行ったひのやには、暗い空気が流れていた。
すると、その空気を更に暗くするような駄眼鏡——新八が口を開いた。

「あの、月詠さん。なんで美星さんはあんなことを…。すみません。こんな事を聞いて…」

新八の問いに、月詠は紫煙を吐くと言った。

「ぬし等には話さないとな…。あいつが吉原に来たのは五年前。まだ鳳仙が此処を支配していた頃じゃ。…ぬし等は知っているよな?此処の遊女達の殆どが、不当な人身売買によってこの町に流れ着いた事を」

月詠の問いに新八と神楽は頷き、銀時は黙ったままだった。

「…実は美星も不当な人身売買によって此処に来た。春雨によってな」

「!! 春雨!?」

銀時と神楽は目を見開き、新八は声を上げた。
七香と麗は春雨が何なのか分からず、首を傾げている。

「しかも美星は春雨に家族を殺されている。恐らくその所為だろう」

「でもおかしいアル!!月奈は関係な…!」

「いいよ、神楽」

途中まで言った神楽の口を月奈がふさぎ、優しい口調で言った。
神楽が黙ると月奈は手を退かした。
神楽は月奈になにか言いかけたが、言わずに黙った。

「ありがとう、神楽。でも、良いんだ」

月奈は幼い頃を思い出した。
桜色の髪と黄色の目の所為で、同い年の子から気味悪がられた日々。
でも、今はそんなに悲しくない。

未だ悲しそうに月奈を見る神楽に、月奈は優しく微笑んだ。

——————————

一方、美星は街の中をあても無く歩いていた。
落ち着く為にあの場から離れたのだが、通行人は皆、美星をじっと見てくれので鬱陶しい。
恐らく——いや、絶対通行人は美星の右目が不思議なのだろう。
美星の右目——其処には医療用眼帯がある。

(……鬱陶しい。俺を見るな)

次第に苛立ちを感じてきた美星は、近くの細い道に入った。
この道は細い為か、人通りが少ない。
今の美星にとっては、此処が一番落ち着ける場所だ。

「——寒い」

店と店の間にある道の為、日が当たらない為少し肌寒い。
座り込みたかったが、地面が湿っている為しゃがんだ。


———『君を殺すのは勿体無いな』

返り血を浴びているのにも関わらず、笑っている少年。

———『いつかまた、この街で会おう。その傷を見れば、俺の事、忘れないよ』

頬に伝う赤い液体。湿った地面に落ちるのは、自分の目から流れる赤い血。

二度と思い出したくなかった、幼い頃の記憶。
二度と見たくない、人外の者。


「————っ!」

美星は強く目を瞑り、耳を塞いだ。