二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: HUNTER×HUNTER -太陽は輝く- ( No.8 )
日時: 2010/10/23 11:04
名前: 颯 ◆Qvzaeu.IrQ (ID: klNaObGQ)

 しんと静まり返った真夜中。黄金色した綺麗な月が地を照らしている。金色の髪が月の光を浴びて、星の様に綺麗に輝いた。風に赤いリボンがなびき、緑色の瞳は月の光を受けて輝いている。
 
 時計塔の上にいる、黒いコートを着た男と、金色の髪をし、ピンク色のシャツに下は緑色の動きやすそうな運動の格好をした少女。クロロとエルシェットは、美術館を見張っていた。


「……で。この美術館にある宝石を盗む、って言う訳? しかも今宵は宝石よりも美しい物が見られるかもしれない……? クロロは何が目的なのかよく分かんないんだけど……」

 
 一方であるクロロは、不敵に微笑んでいる。
 月の光を浴びて真っ暗闇な中でもクロロの顔が見える。エルシェットは微笑んでいるクロロに深いため息が出た。
 エルシェットも美術館の方を見た。すると、美術館に向かって音もなく進んでいく影がある。エルシェットは、美術館の中に消えて行った影を見て、クロロの方を見た。


「……なーるほどね」
「さすがエルシェット。読みが早いな」
「変態なだけの話なら……私帰らせてよ。もう子供寝る時間なんだからさ」
「……そんな勝手な事が許されると思ってるのか」


 
 びくん、と、エルシェットの体がはねる。
 ゆっくりとエルシェットはクロロの方を見た。

 クロロの目は冷たく、危険なオーラを出していた。その内心を読み取って、エルシェットは弱々しく微笑んだ。

「嘘。分かってるよ」
「そうか。それじゃあ、行くぞ」

 エルシェットはクロロと共に時計塔を飛び降り、美術館の中へ侵入して行った。

     *

——お兄ちゃんを守りたい

 
 ただそれだけの理由で、彼女は蜘蛛に落ちた。
 輝く綺麗な金の髪を持つ少女は、性格も明るく、その笑顔だけで周りがなごみ、微笑まれた側は一気に安心するような笑顔であった。入団当初のエルシェットの顔を思い出して、クロロは微笑する。
 
 
 きっと、今でもエルシェットは蜘蛛に入っている気なんてさらさらないのだろう。ただ、兄を守る為だけにここにいる。それだけの理由だろう。旅団員は全員知っているのだ。エルシェットの笑顔が、心の底からの笑顔ではない事を。作り笑みなのだ。


「だが……」

 
 クロロはぽつりと呟く。エルシェットは、蜘蛛に必要である。どちらかと言えばいらない方だが、いればいるでましである。
 しかし、エルシェットを捨てるつもりなんて、クロロには、否、旅団員全員にないだろう。能力もどちらかと言えば低い方である。しかし、彼女の太陽の様な笑みで旅団員はいつも救われている。


「クロロ。クロロ!!」

 ふと、クロロは我に返った。隣にはエルシェットがぶすっ面で自分を見つめている。今は美術館に侵入し、物陰に隠れている所だ。無論、気配は消しているのだが。
 
 そして。目の前を影が過ぎ去った。顔は見えない物の、その豊かな胸の膨らみや、括れの部分が、女性と言う事を際立てている。誰でも見惚れそうなぐらいの体をしているその人物は、ある目標に向かって素早く動いていた。


「……クロロ。見惚れすぎ」
「そ、そんな事はない……」

 エルシェットに図星をつかれ、クロロは内心焦りながら返答をする。
 美術館の中は警備が高く、下手をすればすぐに捕まるであろう。クロロとエルシェットは顔を見合わせると、女が向かって行った方向へとかけ出した。
 
     *

「はい私はここまで。あとはクロロが行って来て」
「……サポートとかしてあげる、などとは言ってくれないのかお前は」
「しなくても良いようにするのがクロロでしょ」

 エルシェットはニッコリと微笑む。
 クロロはその笑顔に何故かいつも安心できる。そしてゆっくりとうなずくと、クロロはゆっくりと歩いて行く。
 

 エルシェットは気配を消しながら壁にもたれた。安堵の息を漏らし、ゆっくりと目を瞑る。自分は本当は幻影旅団になんていらぬ存在のはずである。笑顔が好きだ、と、前に幻影旅団のメンバーであるパクノダに言われたが、別にクールでも笑わぬ性格でも良いだろう。それどころか、そちらの方が旅団に向いている気もするのだ。



「……お兄ちゃん。私……絶対に復讐して見せる……」

 旅団に入ったつもりなどさらさらない。
 ただ、考えるのは復讐。それだけなのである。父と母を奪われたその憎しみは、今だ消えることのない物となっている。否、きっといつまでも消える事はないのだろう。

「メドラー!!」


 という叫び声が聞こえて、エルシェットはかなり驚き、我に返った。目の前を、綺麗に整えられた白馬が走って行く。エルシェットは慌てて立ちあがった。

 その先には、綺麗な黒い髪の女性がいる。後姿だけで顔は見えないが、その括れや綺麗な黒髪を見ていると、顔も相当の物であろう。その先にはクロロがいる。


「さよなら、クロロ=ルシルフル。男前の盗人」

 女性はそう言い放つと、クロロの横を通り過ぎて去っていく。一方のクロロは唖然としている。エルシェットは何が起きたのか分からなくて、ただその様子を茫然と眺めていた。
 女性が去って行くと、クロロはゆっくりと立ち上がった。そして、不敵な笑みをこぼす。


「気に入った」

 と、その時。拳がクロロの頭を直撃する。
 クロロは片手で頭をおさえた。かなり痛かったらしい。

「気に入った、じゃないよっ! ダイヤ取られてんじゃん!」
「……すまない」
「別にいいけど……。ホントに……怪我はないの?」

 あぁ、と、クロロはうなずく。
 エルシェットはため息をつくと、無言で歩きだした。


「……何考えてるの」
「あぁ。少し……蝶を捕まえる作戦を」
「私は協力しないからね」


 クロロが言い終わらないうちにエルシェットはいう。
 クロロは「頼む。協力してくれ」と真顔で言ってくる。エルシェットはなんどため息をついた事か。

「蜘蛛が蝶に負けてどうするの」

——ね、お兄ちゃん。蝶々さん舞ってるよ

 その幼いころの思い出は、今でも心理の中に。
 エルシェットはクスリと笑うと、走り出した。

 月が夜に輝いている。木々は眠り、人も眠る。子守歌を歌うかのように、風は町を吹き抜ける。
 エルシェットが蜘蛛から救われるのは、いつなのだろうか。

    *

  あとがき

・・・微妙なセリトさんの登場でスイマセン!!
もうホントに!!ハンター試験になったらしっかりと出せる(予定)なのでもう少し待って下さい!!
・・・お目汚し駄文ホントにごめんなさい。