二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- バッドエンドの塗り替え方+そのに ( No.174 )
- 日時: 2011/04/18 12:35
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: yCBA8YKv)
- 参照: 短編の予定だったんだけど中編化しますお!
人って、こんなに変わっちゃうものなのかな?
背筋にぞくぞくとした悪寒が走って、どうしてこんな事になっちゃったんだろーって哀しくなって、やっぱり自分の力不足のせいなのかなーって情けなくなって、それでもやっと逢えたから嬉しさも湧いてきて。こんな結果になってしまったけど、再会できたのは事実だから。でも、会いたい会いたい会いたいって騒いでたわりには嬉しくなくて。心の何処かで知らない誰かが「他の選択肢はなかったの?」と呟いた気がした。まあ、自分の心のうちなんで、誰かっていうのは僕なんだけど。多分、こーゆー考えを世間では綺麗事って呼ぶんだろうな。ほら、安っぽいドラマに出てくる不良とか問題児が、熱血先生に対して必ず言う単語。奇麗事言ってんじゃねーよ! って。あ、話題が逸れた。とりあえず僕は、間違ってもそんな台詞を言っちゃいけないんだ。だって、アイツにどんな選択肢が提示されたかを知っているのは、僕だけなんだから。そして今、僕がわざわざここまで駄目元で来てみて会えちゃったのは、相当ラッキーなことなんだから。伝えないといけないことが、他にたくさんある。
「久しぶりだね。どう、元気にしてた?」
ぎこちないながらに愛想笑いを向け、軽い口調で呼びかけた。……あーもーお願いだから睨まないでくれ。
「……何故、ここにいる?」
「ん? ここにいちゃダメなの?」
挑発気味に、疑問に疑問で返した。狭い日本。世間は狭いんだから、たとえこんな怪しいところで顔馴染みと会っちゃったとしても、何ら問題は無いと思うんだ。そんなの、個人の自由だし。って、だから睨まないでよ!
「ここは、お前がいるべきところではない。帰れ」
声を潜め、囁くように言った彼の瞳は、真剣そのものだった。同時に、すがるようでもあった。うーん、やっぱりサッカーバカは馬鹿だ。顔にすぐ出るんだもん。口元は冷静を装っているけど、瞳は結構揺らいでいるよ。ホント、素直って罪だねーなんて。なんだこれ、意味わかんない。
さて、僕もふざけている場合じゃないんだ。気が重いけど、これは僕にしかできないことだから。否、僕じゃないとダメなんだ。
「どういう経緯でこうなったか、僕は全部知ってるよ」
震える口元。隠したいのか、唇を思い切り食い縛っている。俯いていたけれど、僕は彼より背が低い。逆に表情が見え易くなった。瞳がほんの少し、薄濡れているのも見えてしまった。ああ、やっぱりつらいんじゃないか。
彼の言葉を待ったけれど、話し出す様子は見られない。先に切り出したのは、僕だった。
「ねえ、もう大丈夫だよ」
何が大丈夫なんだろう? 自分でもよく、わからなくて。でも、だけど、何でも良いから喋っていないと、僕まで可笑しくなりそうな気がした。
「アンタは、独りじゃない。そうでしょ? だって今、目の前にいるじゃん」
自称、大切な仲間です。語尾に星がつきそうなほどの爽やかさで言い放ってみたり。さすがに、笑ってはくれなかったけど、強張っていた頬が少しだけ、緩んだ気がした。
確かに僕達は、世間一般からしたら、浮きすぎている体験ばかりしている。だけどさ、内容がどうとかじゃないんだよ。人よりつらい思いもたくさんしたよ。でもその間、誰が一緒に寄り添ってくれた? ずっと独りじゃなかったでしょ? それは一番、きみが知ってるはずなんだ。
「……皆、待ってるんだから」
きみを失うことが、この物語のラストだと言うのなら。そんなの、僕も含めた皆が認めないよ。だってね、大切な仲間———きみも僕も監督もマネージャーも応援してくれた皆さんも、皆の笑顔を見届けて、この物語は幕を下ろすんだから。
全てが全て幸せな物語じゃないけれど、ラストはせめて笑顔で終わろう。
「でも俺は……」
「まだグダグダ言うようなら、引きずってでも連れて帰る」
真面目風に言ってみたあと、自分の事ながら思わず吹き出してしまった。釣られて笑う彼。
「さあ、一緒に帰ろうよ」
大切な人が待つ、あの場所へ。
( 懐かしい声が聞こえた、そんな気がした )