二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- +しずく様リク+ ( No.186 )
- 日時: 2011/05/03 22:18
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: MxRrFmUb)
「春奈、これとか鬼道お兄様に似合いそうじゃない?」
「それいい! ナイス、未来ちゃん!」
とある豪邸の前。はしゃぐ少女。これから始まるのは——不運な少年と、無邪気な少女達の愉快な物語。
—*愛されお兄様!*—
凄い美人なお嬢さんが顔を出しそうな、重々しく、そして立派なドア。そのドアが押し開けられる事を今か今かを待ち構えているのは、あたし——雷門中サッカー部の『優秀』なマネージャー、宝生未来と、大親友の春奈。しっかりと抱きかかえた紙袋には、今回の作戦に必要なアイテム達が取り出されるその時を、待ち焦がれていた。
「お兄ちゃん、まだかなぁ……?」
春奈はくたびれてしまったらしく、小さく欠伸を漏らした。あたし達が鬼道家に到着してから五分は経っている。大きな家だと、情報の伝達にも時間が掛かるのかな? そんなことを考えていると、ふいにドアが近づいてきた。反射的に退くあたし。
ドアが開いたそこにいたのは、待ち焦がれていた人物だった。
「春奈と……宝生?」
「私が誘ったの。良いよね? お兄ちゃん」
「お邪魔します、鬼道お兄様!」
とびっきりの笑顔で告げると、春奈を先頭にしお宅へお邪魔する事にした。困惑するお姿も素敵です、お兄様。さっすが鬼道お兄様のご自宅。良い匂いがするのは気のせいじゃないよね?
靴をしっかり揃え、髪留めで髪を留めなおす。栗色の髪が、そわそわと揺れた。
「ではでは、お兄ちゃんの部屋にレッツゴー!」
「おー!」
鬼道お兄様の瞳が一瞬、酷く悲しそうに見えたのは、緊張してるあたしの気のせいだ。
「……久しぶりに春奈が会いに来てくれたと思ったら」
そんな呟き、聴こえません。
慣れたように部屋へと入り、ふかふかそうなベッドに腰を下ろす春奈。あたしも後に続いて行く。勉強机には、見るだけで頭がショートしそうな紙がたくさん積まれていた。さっすが鬼道お兄様。あたしなんかとは次元が違う。
「で、何の用なんだ?」
私服のお姿もまた素敵ですね! そう口を挿もうとして、慌てて言葉を飲み込む。そうだ、今あたしが邪魔をしたらこの計画が台無しになっちゃう……! 我慢、我慢っと。
春奈は、足元の紙袋を手に取り抱きかかえると、顔に満面の笑みを浮かべた。二ッと上がった口元が、細められた瞳が、悪戯っぽく煌いている。そんな春奈のスマイルに対して、穏やかな微笑みに不安の色を落とす鬼道お兄様。悪巧みしてる時の顔を知ってるから、あんなに不安そうなのかな? あたしがいるからじゃないよね?
「実はお兄ちゃんに、お願いがあって……」
"お願い"という単語に顔をしかめる鬼道お兄様。ああもう、今日は鬼道お兄様の色々な表情が見れる。うん、幸せすぎる!
春奈はあたしを一瞥すると、目で合図を送ってきた。よし、作戦実行なんだね!
一歩一歩、鬼道お兄様に近づいていく春奈。胡坐をかいているお兄様の前にちょこんと座ると、ゴーグルの向こうに隠れている赤い瞳をじっと見つめ始めた。当然、動揺する鬼道お兄様。しばらく沈黙が続く。よし、あたしの番だ! ゆっくりと鬼道お兄様へ近づいていき、ゴーグルへと手を掛けた。そこからは、あたしの能力が発揮され瞬く間にゴーグルを奪い取った。
きょとんとした赤い瞳が、あたしを映しこんで。吸い込まれそうな、そんな錯覚に襲われる。素敵過ぎです、鬼道お兄様!
「ちょっと"お着替え"、してくれませんか?」
引きつった笑顔が生まれ、声に鳴らない悲鳴で助けを求めるお兄様。今が絶好のチャンス! あたしと春奈が持参した紙袋から、秘密兵器が舞い始めた。
黒地の長い袖。首元は、清楚な白いフリルで飾られている。それは、袖も同じデザインだった。髪を下ろした鬼道お兄様は、それもまた似合っていて。頭の上に乗せられたシルクのリボンが、お兄様に可愛さという魅力をプラスしていた。腰で縛られた短めのエプロンも控えめな雰囲気が演出されていて素敵。上出来だと思った。春奈と顔を見合わせ、にっこり笑い合う。
「鬼道お兄様、素敵です! あなたさまに似合わない服など、この世界には無いのですね!」
素直に感想を述べると、うんうん! と春奈も同意してくれた。何を考えているのか、鬼道お兄様はぷるぷると震えている。普段、着慣れない服を着て緊張しているのだろう。潤んだ赤い瞳は、あたしに怯えた子ウサギを連想させた。可愛いです、お兄様。
「お兄ちゃんは何でも似合うねー」
次は何を着て貰おうかと、互いの紙袋をあさってみる。
そんなあたしの至福の時間を邪魔したのは、携帯の着メロだった。ゴメン、と呟き携帯を手に取ると、液晶を覗き込んだ。刻まれた文字は、雷門中サッカー部キャプテン、円堂守の名前で。大きく溜め息を吐き、通話ボタンをプッシュする。ああもう、ホントKYだなこの人! 別に鬼道お兄様のイニシャルじゃないけど!
「もしもし、円堂?」
その言葉に反応したのか、鬼道お兄様の身体がピクリと揺れる。助けを懇願するような、そんな目の色をしていた。
「え? 来週の練習時間が変更になった? ……どうだっていいわ! あたしの幸せを邪魔しないでよっ。……だーかーら、円堂には関係ないの! そんなこと言ってる暇があったら、豪炎寺や風丸でも誘って練習してきなさい! そうするつもりだった? どうだっていいの! じゃ、切るから。……だから、連絡は後にしてよ!」
電話の向こうにいる天然男に向かって、思いきり叫ぶ。電話を切ろうとボタンに親指の腹を当てる。その瞬間、見開かれた赤い瞳。
「えっ円堂! 聴こえるのなら助けてくれ! 大変なんだ!」
「……すいません、もう切っちゃったんです」
がっくりとうなだれる鬼道お兄様。苦笑する春奈。携帯をポケットにしまうと、とびっきりの笑顔を見せる。
「さあ、鬼道お兄様。次は、ネコ耳メイドですよ!」
『鬼道お兄様満喫大作戦!』は、紙袋が空になるまで続くのでした。
−fin−
〜後書き(という名の言い訳タイム)〜
初めてリクエストを貰い、浮かれていられたのはほんの一時……
自分の文才がゼロにも満たない事を思い出した私は、少しでも満足してもらえる作品を目指し、書いてみたのですが……
これが結果です!(開き直るな
未来ちゃんのキャラが崩壊していないか不安です;鬼道お兄様には、とことん恥ずかしがってもらいました。
オチも無ければ盛り上がる場面も無い。こんな作品しか書けない私は……うん。←
タイトルには触れないで下さい。これが限界なんです、えぇ。もし宜しければ、この駄作にタイトルを考えてくだs
しずく様、リクエストありがとうございました!これからもよろしくお願いします^^