二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン 私と世界の仲間達2 ( No.616 )
- 日時: 2013/05/06 15:32
- 名前: りむう。 (ID: vaXSOZHN)
- 参照: 久しぶり。エレメントロスターズ編、まだまだ続いちゃうよ。
第38話 「残忍な取引」
「どう言うおつもりです?サクラさん」
物凄い形相でサクラの方にスタスタと歩み寄っていくメアリー。
彼女を迎え撃つサクラの表情は、覚悟を決めた凛々しいものだった。
「どうもこうも、見たまんまだよ。私は、エレメントロスターズより、彼らを選ぶ。それだけだよ」
簡潔に、自分の言いたい事をはっきりと『桃色の催眠術師』の面々に述べるサクラ。それを聞くと、『桃色の催眠術師』のメンバーはざわつき始める。サクラの回答を聞くと、彼女は質問を変えた。
「…先程、貴方は質問の答えを返す、と仰ってましたわね。ジュレールから与えられたその質問、聞いてみたいものですわ。何だったんです?」
んー、と、サクラは迷った表情を浮かべる。これって言っちゃっていいのかな。そんな風な。
「…『貴女、彼らの元に帰りたいかしら?』、それだけだよ」
サクラは、ジュリアの質問に、『桃色の催眠術師』側にオウンゴールする、という形で、『イエス』。肯定を示したのだ。
それを聞いたメアリーは眼を見開いた。すると、彼女はサクラに背を向けて、空を仰いだ。既に青を失ったその空を。
「どういうつもりなのよジュレールッッ!!!!!信じ難い質問ですわ!!!ついこの間まで世界は滅ぶべきで!!その為に彼女はいなくてはならない存在だと語ってたのはッ、貴女だったでしょうッッ!!?」
狂ったように空に向かって叫び出すメアリー。その表情は憤怒に満ちていた。
ギリッ、と、強い歯軋りの後に、彼女はこう叫んだ。
「貴女こそ裁かれるべき存在だわッ!!我等が神、ローゼ・ルテミスにッッ!!!!!」
ローゼ・ルテミス。彼女はその存在を神だとまで言った。その単語を初めて聞く人々は、何の事だか分からない表情しか浮かべる事が出来ない。
「ローゼ・ルテミス、とは、何なんだ…?」
「そっか、みんなはまだそこまで辿り着いてないんだね。私が説明するよ」
辿り着く、と言うその表現に引っ掛かる物があったが、それより説明を欲していたので、そこは耐えてサクラの話を聞く事にする。
どうやらメアリーはまだ叫び足りないみたいだし。そう言いながら、メアリーの方を見やると、侮辱だの恥だのと叫ぶメアリーの姿がある。
「ローゼ・ルテミスって、ジュリアとかメアリーとか、8人の少女に色とりどりの薔薇と一緒に、ある才能を与えた神様の事なんだって。ジュリアの場合の最初の色は紅、才能はサッカーだったじゃない?それを与えた神様が、ローゼ・ルテミスなんだって」
あるものは生まれた瞬間に、あるものは成長の過程に。才能という名の薔薇の種を植える存在。それが彼女等が神と崇めるローゼ・ルテミス。
「その中でも、ジュリアって超変異なんだってみんな言ってる。神の使徒なんじゃないかって。理由は…まぁ、みんな言わなくたって分かると思うけど」
薔薇の色の完全な変色。カンナと言う黒薔薇の怨霊を取り込んでの変色であったが、そもそも彼女等にとって、変色は最早転生に限りなく近いものらしい。それを成し遂げたのは過去にジュリア以外には居ない。それ故超変異。神の使徒なのだ。
しかもそれに加えて、2年前にイシュタリアに乗り移られ、その女神の記憶がそっくりそのまま彼女の頭の中に残り続けているのだから、幾ら否定したところで、他の7人の少女の考え方が変わる訳はない。
「まぁ、ジュリアは神の使徒だとかどうでも良さそうなんだけどね。世界に安寧が齎されれば、って最近はずっと言ってたよ。ジュリアは」
世界を救いたいんだよ。例え自分が死んでしまったとしても。
フッと、視線をメアリーの方に向けると、どうやら漸く叫び終えたらしい。大人しく俯いている彼女の姿があった。
「…仕方ありませんね。だったら貴女のその反逆の罪は、貴女の親友に償って貰いましょう!此処にいる、サクラさんに、ね」
急に話しだした彼女の表情は今までに見た事もない程、残忍なものだった。そしてメアリーは監督である円堂大介に向き直って、こう言い出した。
「予定変更ですわ。此方のキャプテンがそちら側に寝返ってしまいました。こうなると10人対12人と、格差が出ます。そこでです。勝負を4人対4人のサッカーバトルに切り替えませんか?」
本作のゲームを体験した事のある読者の皆さんはよくご存知だろう、4人対4人の条件付きサッカーバトル。メアリーは試合を中断、中止し、そのバトルに変えようという方針らしい。
「貴方方が勝てば私達は世界中の眠っている多くの人々を目覚めさせましょう。貴方方の御仲間の其方の方も含めて、全員ですわ」
そう言いながら、吹雪を指差すメアリー。確かに、吹雪以外にも世界中で眠り続けている人々は数え切れないほど存在している。
「ですが私達が勝った場合、今フィールドに出ている『リトル・クラウン』の選手全員と、サクラさんに死んで頂きます。如何ですか?」
その場の全員に寒気が走った。メアリーは、『桃色の催眠術師』が勝てば最低でも12人の選手を殺すと言っているのだ。エレメントロスターズと互角に戦える選手を12人も!!
サクラが必死になって反論する。
「何言ってるのッ!?私は分かるけど…っ、でもっ!!みんなを巻き込まないでよ!!!」
「御自分で巻いた種ですわ。もう手遅れです、残念ですね。ジュレールに言っておきたい事があるのなら言ってください。貴女の首と一緒に、彼女の元に差し出しますわ」
「あ…っ、あぁッ…!!」
それを聞いたサクラは泣き崩れた。自分の所為で、大事な仲間達と、大好きな恋人の命まで危機に晒してしまったのだと。
そんな彼女の肩を叩く人物が居た。サクラは泣きながら振り返ると、彼の姿があった。大好きな彼の姿が。
「フィディオッ、うっ…うぅ…ごっ、ごめッ…んッ…!!」
「サクラ、俺達に…さ、君の命を、預けてほしい」
「え…っ?…やっ、やだッ!!やめてよフィディオッッ!!?あ、貴方が、私の為に傷付くところはもう…、もう…ッッ!!!」
「分かる。その気持ちは充分分かるよ。けど、全部サクラが背負い込む理由は何処にもない。それにさ、」
サクラの身体を優しく右腕で寄せて、フィディオは呟いた。
「今の俺には護るものがある。誰にだって負けるわけない」
第38話 終わり