二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 心霊探偵 八雲 〜つながる絆 ( No.83 )
日時: 2011/05/30 18:29
名前: 凪 (ID: 8ru7RWNK)

〜15〜

「真琴さんから、新たな証言についての詳しい話は聞きましたよね?」

八雲の問いに対し、後藤は「ああ、なんとなく」と答え、うなずいた。

同時に、石井も頷く。

「なんとなく、ってあなたそれでも刑事ですか」

八雲が真顔で聞く。

「うるせぇ」

後藤は、すねた。刑事が大学生にバカにされるとは。これも大した問

題。

「…新たな証言者—中崎さんは〝つばの長い帽子、髪の毛が長い〟そん

な特徴を言ったそうですね」

「それで」

「真夜中に」

「…で、どうしたっていうんだ」

後藤は首をかしげながら言った。何か掴んでいるなら素直に言えばいい

ものを—。

「まだ分かりませんか?あきらかにおかしい所があるんですよ」

—だから、それを言えよ。

後藤は思った。八雲の声が苛立っているように聞こえる。八雲はふぅ、

とため息をついて話を続けた。

「真夜中なんかに都会ほど明るい所なんてほとんどありません。

あるとしたら電灯です。そんな時、〝つばの長い帽子〟は分かったとし

ても、髪の毛の長さなんて分かりますか—?」

「そうか!!」

急に運転中の石井が大声を出して振り向いた。—と同時に車内がグラッ

と揺れる。

「おい!危ねぇ!前見ろ、前!」

後藤は窓に張り付いて声をあげる。八雲は腕組みをしながらクスクスと

笑っていた。こんな時に笑うヤツなんていままで見たことねぇ。

「は、はい!」

後藤に注意を受けた石井は、慌ててハンドルを戻し、車内の揺れを止め

た。

そして言った。

「僕、分かりましたよ!八雲氏の言いたいことが!」

「なんだ?」

「中崎の証言は、作られた可能性が高いということですよね」

石井の言い分はこうだ。中崎の最初の証言は「マンションの中に入って

いた人を見た」とのこと。しかし八雲は「ここでは亡くなった人が数人

いる」と証言した。矛盾している。そして、真琴から聞いた証言の不審

な点。いままでの八雲の解いた事件をふまえると八雲の証言が正しいと

考えられる。つまり中崎の証言は—嘘に近いかもしれない。

八雲は、しばらく黙っていたがやがて二ヤリ、と笑い言った。

「石井さん、正解。沖縄旅行にご招待しましょう」

       
  
             *

「本当ですか!?」

と、驚いた石井が言った。

そのとたん、石井の顔に強い衝撃がはしった。石井の頭の上にあったの

は後藤の拳。

「バカッ!こんなのに真に受けるバカがいるか!」

後藤は怒りをあらわにする。石井はハンドルを掴みながらも、うずくま

っていた。

後部座席から笑い声が聞こえる。腹を抱えて笑っている八雲が後藤の眼

中に映った。

「刑事をからかいやがって…」

後で締め上げてやる。待ってろ!八雲!



▼あとがき

すこしずつ明らかになっていく真実。

次回も楽しみにしていてくださいね!