二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 星のカービィ 運命の車輪 ( No.151 )
- 日時: 2011/04/19 20:00
- 名前: 満月の瞳 ◆zkm/uTCmMs (ID: A2bmpvWQ)
- 参照: .http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode
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『欲を欲したものは欲に溺れ。財を手に入れようとしたものは財に潰され。力を望んだものは力に喰われ。支配を願ったものは支配に囚われ。
幸せを誓ったものは幸せに裏切られ。愛を信じたものは愛にはき捨てられ。頂点を目指したものは頂点に蹴落とされ。達成感を期待したものは
達成感に裁かれ。美をつらぬこうとしたものは美に汚され。知を知ろうとしていたものは知に暴かれる。…世界というものは、ぼくたちが、なりたいと思うことから全てを遠ざけて、物事を達成困難にしてしまうのサ。なりたいと思っても、そう簡単にはなれないものなのサ。むしろなれない確率の方が高い。そんな中でただもがいているんじゃあ、はたから見れば、ただの一本相撲サ。でも、ぼくは違う。ぼくはなれる。叶えられる。実現できる!君みたいなバカとは格が全然違うのサ。ぼくは全てを覆すのサ』
あのこは、そう言った。
そう言っていた。
『全てを覆すのサ!欲も、財も、支配も、力も、幸せも、愛も、頂点も
、達成感も、美も、知も、この世の万物全てを覆してやるのサ!全てがぼくの物!ぼくだけの物!ぼくだけの道具!ぼくだけの玩具!ぼくだけの世界!欲することに溺れずに!手に入れることに潰されずに!望むことに喰われずに!願ったものに囚われずに!誓ったものに裏切られずに
!信じたものにはき捨てられずに!目指したものに蹴落とされずに!期待したものに裁かれずに!つらぬいたものに汚されず!知ろうとしたものを暴かれずに!』
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『私は、望むことにも願うことにも疲れてしまったの。世界を見ることも、耐えられなくなったの。だから、自分が新たな世界を創ることにしたのよ。自分がもう、この場にいても、体が持たないから』
彼女はそう言った。
そう言っていた。
『私の「本体」が現れてしまったら。何もかも無差別に襲いだすわ。私は私が死んでしまってもいいの。だけど、あの子だけは死なせたくないの。私をきれいと言ってくれたあの子を、殺したくない。あの子だけはどうか、幸せに生きていてもらいたいの…』
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カービィは、小さな体からあらんばかりの声で、咆哮していた。
小さな体の小さな拳は、絶大なる力を持って、振りかぶられていた。
「おりゃああああああああああああああああああ!!!!!」
自分でもびっくりするくらい、大きな声が出ている。
こんなに大きな声を出したのは、マルクと戦った時以来だろうか。
のどがとっても痛い。
体も、結構…、かなり限界かも。
最初のドロッチェとの戦いでも怪我したから、傷の上に傷作っちゃってる感じかな?
…でも今はそんなこと関係ない。
止めなくちゃ。
ドロッチェ。
ドロッチェは今、完全に自分を見失っちゃってるよ。
何かを求めすぎて、何かを望みすぎて。
それでいて、何かを守ろうとしていて。
必死になっている。
ボクは知っているんだ。
今のドロッチェみたいなこを。
あのこは、最後の最後まで、気づけなかったんだ。
最後の最後まで、無意識のうちで自分自身で自分を崩壊させてたんだ。
自分の目的のために、何を奪っても誰を殺しても、意思を動かさず、むしろ悪に手を染めていったあのこを知っているんだ。
今のドロッチェは、あのこと同じになってる。
目的のために、自分自身すら策として、物として、使ってる。
死ぬ気で、戦ってる。
そんなに必要なものなの?
どうして、そんなに命をさらけ出しているの?
やめてよ。
嫌だよ。
ボクはもう、誰かを守れないことが嫌なんだ。
ボクは、ドロッチェの言うとおりで誰も殺せないし、誰も終わらせられない。
ボクは弱いんだ。
戦うことが好きじゃないんだ。
誰にも傷ついてほしくないんだ。
それは、ドロッチェも同じだよね?
大切な仲間がいるんだよね?
だったら。
命を捨てちゃいけないんだ。
たとえどんな目的であっても。
決して、命を捨てちゃいけないんだ。
彼女も命を捨てていた。
あの子のために、身を投げ出した。
でも、それって正しいのかな?
それで本当にあの子は幸せになれるの?
誰もかれも、皆、忘れているんだ。
ぼくが言えることじゃいけれど。
すぐそばにある本当に大切なものを忘れているんだ。
愛しくて、大きな、何かを。
- Re: 星のカービィ 運命の車輪 ( No.152 )
- 日時: 2011/04/21 18:27
- 名前: 満月の瞳 ◆zkm/uTCmMs (ID: A2bmpvWQ)
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バシャアアン!
水しぶきが、湖の中心部で激しい音を立てて生まれる。
その音を作ったのは、鳩尾をライジンブレイクで殴られ、気を失ったドロッチェの体だった。
あんなにも強く、必死に砦を突破しようと戦っていたドロッチェが、あっけなく、もろく、崩れ落ちた。
「デデ…デ…!」
息も絶え絶えに、力を使い果たしたカービィが、デデデを呼ぶ。
すばやく察知したデデデは、湖の中央に飛び込み、沈んでいたドロッチェの体を泳ぎながら抱える。
「カービィ」
メタナイトも続いて、カービィを抱えて、陸に向かって飛ぶ。
「皆ー!大丈夫ー!?」
アドレーヌは一同に向かって声をかける。
返事は「なんとか大丈夫」だった。
「…この人たち…どうするの…?」
アドレーヌのそばには、気を失ったスピンとドクがいる。
メタナイトたちが運んでくれたのだ。
「(この人たちは襲って来たりはしたけれど、なんだか悪い人って感じがなぜかしないのよね)」
アドレーヌは心の中でそう思った。
「こいつこの身長のわりには、なんか重いと思ったら、そこらじゅうに
爆弾やら飛び道具隠し持っているぞい」
ドロッチェはそこまでは大きくない。
デデデが湖の中にポイポイと爆弾(湿気ていてもう使い物にならないやつ
)などを捨てていく。
メタナイトもカービィも、指摘するほどの気力はなかった。
それほどの強敵だったのだ。
飛び道具を捨てられていくうちに、ドロッチェの体も小さくなっていくように見えた。
目を閉じて、身動き一つしない。
ところどころ破れた赤いマントと帽子は、水に濡れてさらに赤さを増している。
傷だらけで、ボロボロだった。
杖は、気を失ってもなお、手から離しておらず、抱えている。
「…なんか軽くなったぞい。こいつの体は飛び道具でできているのかぞい?」
冗談すら本当に思える。
「…止めることは…なんとかできたね…」
カービィは、ほっとしたように息を吐く。
これで最悪の未来を止めることができたのだから。
『運命の車輪』…ブロンテとの接触は防げた。
しかし、すぐに固く表情を戻す。
「ボクたちも、ドロッチェ団も…ボロボロだね」
カービィは傷だらけの、結構な重症を。
デデデとアドレーヌは、全身にやけどを。
メタナイトは鋭利な切り傷、刺し傷など。
ドロッチェ団にいたっては、言うこともない。
「…こいつらには、いろいろ聞かねばならないことがあるな」
陸にたどり着いたカービィたちは、ひとまずドロッチェをスピンたちのそばに横たえる。
「アドレーヌ。使者を作って医療班のワドルデイたちをよんでくれ」
「…了解だよ」
アドレーヌは、キャンバスで数羽のバードンを生み出し、城に向かって飛ばす。
一同はともかく
ドロッチェ団の怪我は、命にかかわるかもしれない。
本来ならば、走って城まで行きたいものの、自分たちも重症者だ。
行くに行けない状況だ。
敵ならばそのままも見殺しするべきなのかもしれないが、聞きたいことが山ほどある。
第一に、一同はドロッチェ団を殺す気などない。
最悪の未来を逃れるために戦っただけなのだから。
- Re: 星のカービィ 運命の車輪 ( No.153 )
- 日時: 2011/04/22 18:17
- 名前: 満月の瞳 ◆zkm/uTCmMs (ID: A2bmpvWQ)
- 参照: .http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode
でも…これで本当に最悪の未来を避けることができたのだろうか?
避けられたならうれしいかぎりだが、なんだか胸騒ぎがする。
〝まだこの加速していく物語は終わらない〟
そんな気がしてならない。
「(ダメダメ!これで終わりにしたんだから!最悪の未来は免れたんだから!)」
嫌なことは考えないようにとポカポカと、カービィは自分のおでこあたりを軽く殴る。
傷に当たって結構痛かった。
「さて…今頃フームたちは、突撃中か?」
メタナイトは、せっせとドロッチェたちの応急措置をしながら、つぶやく。
レン村長の家に突入するのも、メタナイトの考えた作戦の内だ。
「ああああ!!そうだよ!!今頃戦ってるはずだよ!!」
その言葉に、カービィは今更思い出したように焦る。
「かかかか加勢に行かなくちゃ!っ痛!」
「カー君!傷がよけい開くから動かないで!」
看護師のような手つきで、応急措置を行っていたアドレーヌは、キャンバスから治療道具を実体化させていた。
「加勢に行くといっても私たちの今の状況では無理だ」
「でも!リボンは戦闘プレイヤーじゃないんだよ!?」
「大丈夫だ」
「メタナイト!どうして言いきれるの!あっちにはストロンがいるんだよ!?あきらかにストロンはパワータイプだよ!リボンとは相性が悪いよ!」
「だからこそ、パワータイプのショートレンジのプロフェッショナルを
わざわざクリスタルの伝令で呼んだのではないか」
「ショートレンジのプロッフェショナル…まさか!」
「お前に格闘技を教えた奴だ。わかるだろ」
「そっか。ナックルジョーがいれば安心だね」
カービィは、友人でもあり、ファイターの師でもあるナックルジョーのことを聞いて、安心する。
「ナックルジョーが負けるたまではないだろう。それはお前が一番よくわかってるだろ」
「うん。だって巨大な岩につぶされてもぜんぜんびくともしてなかったし」
「よくわからんが…とりあえず一件落着ってことぞいか?」
やけどを冷やすため。、そこらじゅうに冷えピタのようなものを貼ったデデデ(アドレーヌも貼ってる)が疲れた口調で言う。
「無事に遺跡にある『運命の車輪』を死守することができたもんね」
アドレーヌがうれしそうに笑う。
もちろん治療の手は止まっていないが。
「フー…これでわしのプププランドをガードすることができた…」
「もう!このプププランドは皆のものよ!」
「ぬわああにを言ってるぞい!プププランドはわしの物だぞい!愚かな人民どもの物ではなああああい!!」
「愚かな人民って言わないでよ!!ていうか愚かな人民どもの協力があってプププランドは救われたのよ!!」
「黙れ!わしは頼んでいないぞい!」
「ふーん。だったら大王一人でここまでできたの?」
「うるさいぞおおおい!アドレーヌの分際で!!」
「失礼ね!!」
デデデとアドレーヌは喧嘩なのか言い争いなのかわからない会話を始めていた。
戦いを終えたデデデは、またいつものわがまま大王に戻り、アドレーヌはちょっと毒舌な少女に戻った。
戦闘という緊張から抜けたからからだろうか。
意外にこの2人は、結構仲が良いのかもしれない。
安心しきった2人をよそに、カービィとメタナイトは黙りこんでいた。
本当でこれで終わりなのか?
最悪の運命の鍵となる、ドロッチェ団たちは足止めできた。
鍵がなければ扉は開かない。
でも、なんだろうこの違和感は。
まだ、この物語には続きがあるかのような。
「…これで大丈夫だよね…」
カービィは不安そうにメタナイトに言う。
「おそらくな。しかし、また何か起こるかもしれない。気は抜くな」
プププランド史上最大の危機。
それが、こんなにもあっけなく終わるものだろうか。
『運命の車輪』自らが、助けを求めたほどの最悪な未来。
こんなにもあっけなく、終了していいものなのか?
「あ…う…」
かすれ声が小さく聞こえた。
ドロッチェたちの方向から。
「!」
一同は、一瞬身構えるが、すぐにその警戒をおろす。
なんせ、相手は手負いなのだから。
しかし、それは自分たちにも言えること。
気だけは緩めない。
「う……?」
意識を戻したのは、スピンだった。
サングラスの奥の瞳を、うっすらと開く。
「ねえ…この場合…なんていえばいいの?」
アドレーヌは小声で早口に言う。
「なんてって…普通に話せばいいぞい」
「だって…!こんなに早く目覚めちゃうとは思ってなかったの…!」
話す内容が問題だ。
この状況についてどうやって話そうか一同は迷う。
「しかたがない。様子を見るしかない」
メタナイトはあきらめたように言う。
「え?…え?…あれ?…あれ?オイラ…」
ゆっくり体を起こしたスピンは、一体何がどうなっているのか混乱していた。
さっきまで戦っていたはず、そこでメタナイトの攻撃に敗れた。
それで、浅瀬で倒れた…はず。
だけど、ここは浅瀬じゃない。
湖の周りの草むら。
なぜか、自分の体には包帯などで治療された跡が。
「え?…なに?これ…なにッチュか?」
キョロキョロとまわりを見回す。
「痛…!」
急に体を動かしたものだから、治療されたといっても、傷はふさがっていない。
痛みがはしる。
「あ!いいいい今は動いちゃダメ!」
カービィが、今にも自信の舌をかんでしまいそうなおぼつかない声をだす。
「!お…お前は…!!」
意識を戻したが、現在状況をまったく把握していないスピンは、突然さっきまで戦っていたはずのカービィの声が、すぐそばで聞こえたことに
驚きを隠せない。
「あ…あの…」
何とか状況をつたえようとしているカービィとは裏腹に、スピンは脱兎のごとく、その場から退避しようとするが、できなかった。
「なっ…!?」
「動くな」
メタナイトに首に巻いているスカーフをつかまれてしまった。
そして、そのままなすすべもなく羽交い絞めにされてしまう。
「ななな…何を…!は、離せ!離せッチュ!痛え!やめろ!離せ!ちくしょう!どうなってるッチュか!いたたたたたたたた!!」
ジタバタと暴れるが、逆効果で自分の傷を悪化させている。
「メ…メタナイト!なにもそこまで…!」
アドレーヌの止める声が聞こえる。
しかし、メタナイトは冷酷にスピンに言い放つ。
「動くなと言っている。今の現在状況をつたえてやろう。お前たちの負けだ」
「!?嘘だ!団長が負けるわけない!!]
- Re: 星のカービィ 運命の車輪 ( No.154 )
- 日時: 2011/04/22 18:45
- 名前: ACT ◆ixwmAarxJ2 (ID: 91b.B1tZ)
カービィの世界が大人っぽくなってる……!
遊びに来てくださってありがとうございます
ACTです^^
おもしろいです!!
更新頑張ってください(^v^)
- Re: 星のカービィ 運命の車輪 ( No.155 )
- 日時: 2011/04/22 20:40
- 名前: 満月の瞳 ◆zkm/uTCmMs (ID: A2bmpvWQ)
- 参照: .http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode
「だったらそこを見てみるのだな」
「…!?だ、団長!?ドク!?」
スピンは倒れているドロッチェたちを見て驚愕する。
「終わりだ。そして、一番に目覚めたお前には、今回の目的やらを洗いざらいにはいてもらおうか」
「よくも!!よくも団長たちに!!ふざけるなッチュ!!」
「プププランドに住まうものであるからこそ、プププランドを守る義務がある」
「くそ!くそったれ!オイラたちの邪魔をするな!!離せ!」
「はけ。お前たちはなぜここの秘宝をそこまで付け狙う。カービィから聞いた力が欲しいとやらは、少々わかりにくいからな」
「うるさいッチュ!!団長が手に入れたがっていたものッチュ!それ以外は知らないッチュ!!」
スピンは激昂しながら暴れる、しかし、メタナイトに羽交い絞めにされた状態では、どうしよもならない。
「メタナイト!やりすぎだよ!」
カービィが止めるが
「最悪の危機の解決策になるかもしれない!まだ危機は終わらないかもしれないのだぞ!今ここで鍵であるこいつらに目的をはかせないでどうするのだ!」
「メタナイトの言うことには一理あるけど!やり方ってもんがあるでしょ!」
アドレーヌも声を荒げる。
「ちくしょお!!どうしてお前らはことごとくオイラたちの邪魔するッチュか!!団長の求めるものが!あと少しで手に入れることができたのに!!」
「とにかく!怪我人に手荒な真似はしちゃダメ!!」
アドレーヌがメタナイトからスピンを強引に、引き離す。
スピンは小さいので、アドレーヌに軽々と持ち上げられてしまう。
「離せ!離せッチュ!!団長!団長!!」
必死に自分のリーダーの名前を呼ぶが、ピクリとも動かない。
時間が止まってしまったように、動かない。
「飛び道具がない時点で、今現在お前はリタイアだ」
武器がない。
戦えない。
王手。
チェックメイト。
投了。
「ぐ…うううううううううううううう!!!」
スピンのうめき声。
アドレーヌはとりあえず、スピンをおろす。
逃げられるほどの体力はないだろうから。
「傷が広がるから、動いちゃダメよ」
「うるさい!ちくしょう!」
スピンはヨロヨロと、ドロッチたちのもとに歩く。
そして、倒れている仲間を守るように立ちふさがる。
「団長たちに手は出させないッチュ!!」
砦のように、立ちふさがる。
しかし、その砦は、あまりにももろすぎる。
「君たちには何もしないよ!ただ!メタナイトの言う、目的について話してもらいたいだけで!」
カービィは、納得してもらおうとするが、相手は敵陣に投げ込まれたようなもの。
敵対心がわかない方がおかしい。
「団長たちは…オイラが守る!!」
スピンはどう考えても、パワータイプではない。
武器もなく、手負いの状態では、戦うことは不可能だ。
「オイ!目的さえはけば逃がしてやるぞい!」
「大王!!」
デデデはアドレーヌの叱咤激励をくらう。
カービィは、一生懸命に話し出す。
「スピン!お願いだよ!プププランドには、今すごい危機が迫ってているんだ!それが、君たちの行動に関係して…!」
「うるさい!黙れッチュ!名前で呼ぶな!オイラの名前を呼ぶな!危機
!?そんなの知らないッチュ!何を言ってるんだお前は!!」
「お願い!聞いて!プププランドは秘宝がないといけないんだ!その秘宝が盗まれたら!プププランドもポップスターも滅んで!!」
「じゃあオイラたちがその破壊者になるってことッチュか!?馬鹿じゃないっチュか!?」
「本当なんだ!でも!スピンたちは、ただその未来の鍵になっちゃうだけで!!」
「嘘をつくのも大概にするッチュ!!オイラは!オイラは団長の求めるものを!団長に手に入れてもらいたかった!団長のためになりたかった!!それだけッチュ!目的はそれだけっチュ!そんなお前らのいう最悪の未来のことなんて何も知らないっチュ!!」
ドロッチェ団は、ただ『運命の車輪』を手に入れようとしていただけ。
ポップスターを滅ぼすつもりなど、全くもってない!
「やっぱり。君たちは鍵だったんだね」
「…何を言ってるッチュ?」
今にも泣き出しそうな声で、スピンは問いかける。
「君たちは『悪』じゃあなかったんだね」
「…?」
「お前たちのには、絶対に〝殺し〟がなかった」
メタナイトが言う。
その言葉に、スピンが驚いた表情を見せる。
「最初も爆撃も、メインストリートでの出来事も、全てにおいて、一つも〝殺し〟がなかった。せいぜい傷つけるくらいだ」
「…団長もオイラも…戦うのが好きじゃないから…」
意外なことを口にした。
「オイラたちは、殺人盗賊団じゃないッチュ。ただの盗賊団ッチュ」
「じゃあなんで盗賊なんかやってるぞい?」
「それは…まあいろいろ…ていうか!何っチュか!その最悪な未来っていうのは!」
「あ、じゃあ今話すよ」
カービィは、スピンにプププランド史上最悪の危機について、要約しながら話した。
「…じゃあ、その秘宝が、プププランドを守ってるってことなのか…」
「そういうことだ」
「…オイラたち、結構まずいことしてたってことッチュね。じゃあ、お前たちは、オイラたちにそれを教えるために…」
スピンは、ようやく自分たちがどれほどやばいことをしていたのかを知った。
「ああ。だけど、お前らが聞く耳を持たないからぞい…」
「だ…団長に伝えなきゃ…!…でも、あの秘宝は…団長が求めてた…」
スピンは迷っているのか、ブツブツとつぶやく。
しかし、すぐにカービィたちの方向を向く。
「…じゃあ、もう、オイラたちのこと、攻撃しないッチュね」
「あたりまえだよ」
「…よかった。もう戦わなくっていいッチュね」
スピンが、少しだけ微笑む。
心から安堵したように。
「あ、ちゃんと皆治療したから。大丈夫だよ」
アドレーヌの言葉に、スピンは、「…ありがと」一言言う。
そっけないようで恥ずかしがっている。
「よかった!これで皆仲直りだね!」
「…何を言ってるっチュか…」
ドロッチェ団と、とりあえずはもう戦わなくて済むことに喜ぶカービィ。
しかし、それは、たった一瞬でうち砕かれる。
『カービィ!危ない!扉が開く!!』
誰かの声がカービィの心に響く。
その声がブロンテの声だと気づくのに数瞬。
その内容を把握するのに、数秒かかる。
「団長!起きたッチュね!よかった!」
スピンの嬉しそうな声がする。
ドロッチェが、目を開けた。
意識を取り戻したようだ。
〝違う心で〟
「団長!わかるっチュか?オイラッチュよ!」
スピンはドロッチェに駆け寄る。
ドロッチェは何も言わずに立ち上がる。
重度の怪我をしているのに、何の苦労もせず。
「団長?」
スピンは、不思議そうにドロッチェを見上げる。
ゆらり、とスピンに向かって動く。
「…!?」
一番最初に気づいたのは、メタナイトだった。
「皆!そいつから離れろ!」
いきなり、メタナイトの大きな声をだす。
しかし、遅かった。
ゴオッ!
突風のような衝撃が一同の中で生じる。
その攻撃をはなったのがドロッチェだと認識するのに
時間はそうかからなかった。
「え?」
その攻撃に直撃したのはスピンだった。
勢い圧倒され、後ろにあった岩に、体を強く打ちつける。
ゴッ!!
鈍い音が響く。
「…え…?なんで…団長…?」
ゴホ、とスピンはその場に大量の血を吐く。
「…!!?」
一同は戦慄する。
〝違う〟。
これはドロッチェじゃない。
〝違う〟。
なんだこれは。
圧倒的な邪悪なオーラ。
吐き気を催す暗黒物質の感じ。
〝違う〟。
これはドロッチェじゃない!
体は同じでも、心が違う!!
『ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!』
〝ドロッチェ〟は笑う。
高らかに、残酷に笑う。
仲間という大切な存在を自分で仲間を傷つけた。
そんなことすら気にせず。
『ギャハハハハハハハ!ギャハハハ!ギャハハハ!』
実に愉快そうに笑う。
恐怖を与える。
「…〝お前〟は…誰だ?」
メタナイトが戦闘態勢で問いかける。
『ハハハハ!オレハ!ダークマター一族ノ長子!ダークゼロ!!ギャハハ!コノプププランドハ!モウオレノ物ダ!!コイツノ体デ存分ニ暴レマワッテヤル!』
〝ドロッチェ〟は笑った。
シニカルな笑みではなく。
悪魔のような邪悪の笑みで。
ダークゼロ戦、開幕。