二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 星のカービィ 運命の車輪 ( No.165 )
日時: 2011/04/24 10:42
名前: 満月の瞳 ◆zkm/uTCmMs (ID: A2bmpvWQ)
参照: .http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode


「お前が…お前がプププランド史上最悪の危機をもたらした超本人か」

メタナイトの氷のように冷酷な、厳しい声。

「あなたが…!未来の…!」

アドレーヌが驚愕に身を震わせる。

「…生意気なネズミ野郎を乗っ取ったってことかぞい…!」

デデデは唇をわずかにあげ、何とも言えない笑みをつくった。

『ギャハハ!ソウサ!オレハココノ秘宝ヲ我物ニスルタメニキタ!アト
、ココノ戦士ドモニ酷イメニナッタ一族ノ復讐デモアル!』

〝ドロッチェ〟は実に楽しそうに笑う。
ダークゼロに体を乗っ取られたドロッチェ。
悪に魅入られたドロッチェ。

ダークドロッチェと化した。

ズズズ…と、地の底から悪のエネルギーが這い上がるように、ダークドロッチェから暗黒物質ダークマターがあふれ出てくる。
その影響で、ねずみ色の皮膚が黒に変わり、赤いマントとボウシが血を
固めたような赤黒色に変化する。

『ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!』

悪魔のような笑い声。
姿は同じでも、さっきまでのドロッチェとは全く違う!
ずっと身から離していなかった杖を、枝を振るように気軽に振り回す。

飛び道具の星が、すさまじい速度で湖に何発も投下される。
たった数発の星で、湖の水が噴火したかのごとく、ビルのように水が高く吹き上がる。
あたりが爆音に包まれる。

「なんて力…!」

突発の風をマントで防ぎながら、メタナイトは驚く。
おそらく、暴走時のドロッチェよりも能力は上!
技の速度も、技の威力も、
闘争心すら、格段にレベルアップしている!

「なななななんだぞい!?なんだぞい!この威力は!!」

デデデですら、度肝をぬいてしまっている。

「スピン!!」

カービィは、血まみれで倒れているスピンのもとに一目散で走る。
ぶつかった岩も、土の地面も、血に染まっていた。
岩は滝のように、土の地面は海のように、血が染み込んでいく。
岩は、衝撃で半分以上砕けている。
相当な力でスピンは吹っ飛ばされたのだ。

「しっかりして!!スピン!!スピンッ!!」

スピンの首の後ろに手を回し、必死に呼びかける。

「…だ…だん…ちょ…う…ケホッ」

スピンの意識はわずかに残っていた。
しかし、その意識はすぐに手放されてしまいそうなほど、とぎれとぎれだった。

「スピン!聞こえる!?待って!すぐに治療するから!!」

「今治療するわ!」

アドレーヌが走ってくる。

「だ…んちょ…う…」

スピンのオレンジ色の体は、真っ赤に染まっている。
口から血を出し、目は虚ろで中空を見ている。
呼吸はヒューヒューと苦しそうな音を立てている。
治療された傷は全て開き。
サングラスは割れ。
スカーフはボロ布に。
ほとんど瀕死状態。

うわごとのように、ドロッチェを呼んでいる。

「だんちょ…う…ゲホっ」

口から吐き出された血が、カービィの頬に飛び散る。

「しゃべっちゃダメだ!…!!」

カービィは自分の手見た。
スピンの血でべっとりと濡れていた。
思わず戦慄する。

こんなに血が。
スピンのような小柄な体躯から。
こんなにも大量に。

「アドレーヌ!!早く!!死んじゃうよ!」

カービィは、心の底から叫ぶ。
悲痛に、叫ぶ。

「スピンが死んじゃうよ…!!!」

今にも涙があふれ出しそうな瞳を、めいっぱい見開いて。

「今!治療を…!」

アドレーヌがキャンバスを開く。
それと同時に

『放ッテオケヨ。ソンナ〝ゴミ屑〟』

ダークドロッチェは言う。

ドロッチェでは考えられないようなことを。

『〝ゴミ屑〟ニ利用価値ナンテナインダヨ』



〝ゴミ屑〟。




それは、スピンたちにとって、一番恐れていた言葉で。


一番言われたくなかった、禁句。


心はドロッチェじゃなくても、体がドロッチェ。



…姿は、ドロッチェ。


『オマエナンテ、イラナインダヨ』



言われたくなかった、言葉。


「…そ…ん…な…」



スピンの虚ろな瞳から、涙が零れ落ちる。
自分の存在理由を、否定された。

いらなかった。

自分なんて、いらなかった。


「なんてことを…言うんだ!!ダークゼロ!!!」

カービィが怒りに身を震わせる。

『ダッテ本当ダロ?』

クスクスと笑うダークドロッチェ。


『〝ゴミ屑〟ハ死ンジマエヨ!ギャハハハハハ!!!』


もうこれはドロッチェじゃない。
ドロッチェの印象すら微塵も感じない。

化け物だ。


「ごめん…なさい…だんちょ…う…オイラ…オイ…ラ…あなた…のやくにたてませんでし…た」

涙を流しながら、スピンはほとんど聞こえない声で言う。

「オイラ…でも…あなたのそばにいて…しあわせ…でした…」

最後の言葉のように。

「スピン!?」

「…〝ワタシ〟…だん…ちょ…うのこと…が…」

「スピン!?スピン!!」

そして、スピンは意識を手放した。

「スピン!!スピイイイイイイイイン!!!」

カービィは絶叫した。

『ギャハハハハハハハ!!オレ!苦シンデ死ンセルヤツ見ルノ大好キダ
ゼエエエエエ!?』

ケラケラと残酷に爆笑する。
ダークドロッチェ。

スピンは、もう虫の息だった。
持ちこたえられるのも、あとわずかだろう。

カービィは、自分の腕の中で、生気づら感じられないスピンを、ゆっくりと地面におろした。

「…アドレーヌ。スピンを頼むよ」

カービィは静かにそれだけ言った。

「わかった…!…でも…カー君!!」

カー君も重症なのに…!?

アドレーヌは言おうとしたが、言えなかった。



カービィは、


怒っていた。



本気で。



怒っている。



我を忘れてはいないが。



静かに。





今まで史上初なくらい






全力で怒っていた。




「ダークゼロ…お前は…」



カービィは、怒りに打ち震えるからだを抑えもせず、強い意志の瞳でまっすぐにダークドロッチェを見据える。




「お前は!!ドロッチェの仲間をいったいなんだと思っているんだっ!
!!!!」


『仲間ナンテ、利用スルベキ材料。ダゼ?』


「…お前は…ボクが倒す!!!!」

『ヤレルモンナラヤッテミナ?星ノ戦士カービィ!!!』