二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 星のカービィ 運命の車輪 ☆参照800突破★ 完結間近!!  ( No.255 )
日時: 2011/05/09 20:53
名前: 満月の瞳 ◆zkm/uTCmMs (ID: A2bmpvWQ)
参照: ドロッチェ団は永久不滅だよ!ずっとずっと!!

☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡.。.:*・☆彡


「…っ…」

大きく開け離れた窓。
そこから差し込む木漏れ日。
やわらかい風が、室内に癒しを与えている。
嗚咽の声しか聞こえなかったのに、ふと他の声が聞こえた。

「だ、だんちょう…?」

枯れた涙声が、プププ城医療室に、本当に小さく響く。
スピン。
泣いているのは、彼女、スピンだ。

「……生き、てる」

ドロッチェは、光をそのまま取り込んだような、黄金色の瞳を、ゆっくりと開く。

「団長!!気が付いたんですね!!よかった!!よかったぁ!!」

「う…?…ここは…どこだ…?」

まだ意識がぼんやりしているのか、不審そうに、あたりをキョロキョロ見渡す。
とりあえずは、死んでいなかった。
戦いのことなどを、フルに思い出す。
包帯やらガーゼやらでおおわれている自身の体、なんだかめちゃくちゃ厳重に固定されている右腕。
どうやら、自分がベットで眠っていたということは確認。
…ここがなんとなくプププ城にいることを瞬時に把握。
ベットの脇にはうれしそうに笑っているスピン。
サングラスが割れていて、ほぼ伊達メガネ状態で、クリクリとした大きな茶色の瞳が、泣きはらした後のように、真っ赤になっている。

ああ、やっぱり泣いていた。

ようやく、調子の戻ってきた頭脳をフルで回転させる。

「団長!よかった!!まじでやばかったんですよ団長!もう!無茶しないでくださいッチュよ!!ちょっと待ってください!今ストロンたちを呼んできますね!!あいつらは今さっきここにいたんですけど…」

「ま」

待て、と言いたかったが、喉に言葉がひっかかってしまう。
スピンは、泣いている目を隠すように、ゴシゴシと乱暴に瞳をこすっている。そして、ピョンと、イスから降りる。

なんだか、気軽そうな行為だったが、スピンの体は、包帯だらけだった。

背中なんて、重傷者の証のように、かなり包帯にがん締められている。

「ちょいとひとっ走り…あ!オ、オイラ全然怪我平気ですからね!ていうかオイラもともと怪我の治り早いですから!」

「ま、待ったあっ!!」

珍しく、ドロッチェが物事を計算しないで、反射的に行動した。
それは、死にかけていた病人がやるべき行動ではない。
点滴が刺さっていたのに、衝撃で抜けてしまったような気がする。
動けないからだを突発的に動かす。

「うぎゅ」

スピンのボロ布と化したスカーフを、なんとか無事(?)な、左手でつかんで、引き寄せるように引っ張る。
もちろんスピンは、いきなり引っ張られ、首が閉まってうめき声をあげてしまう。
しかも、後ろ向きにだったので、体の半分は宙に浮いた。

そしてそのまま、なんだかよくわからないままに、ドロッチェに抱きしめられていた。

「だ!団長!?」

あまりにも突然のこと、スピンの顔は一気に硬直してしまう。

「ごめん!すまなかった!本当にごめん!俺が守るっていたのに!逆に俺が傷つけてしまった!!ごめん!!」

全てを洗いざらいにはきだすように、悲痛にドロッチェが謝罪の言葉をスピンに向けて発する。

「え…?」

ドロッチェのぬくもりを間近に感じ、心臓がとびだしてしまいそうな状態のスピンは、少々声が裏返った返答しかできなかった。

「え、えっと…あれは…団長のせいじゃ、ないですよ!」

「でも!あれは俺の体だった!お前を殴った感覚が…!ずっと離れないんだよ!!」

ダークゼロに乗っ取られたとき、一番最初にスピンを攻撃してしまった。

それで、こんな怪我をおわせてしまった。

「だって…あれは団長の意思じゃあ全然ないじゃないですか!」

「俺が…あんな失態しなければ、お前は、こんな怪我せずにもすんだはずだ…!」

「団長。オイラは大丈夫ッチュよ!ほら!元気ですよ!こんな怪我なんてオイラの敵じゃないッチュ!ちっとも痛くないッチュよ。それにプププランドの人の手際がよかったですよ!傷跡も残らないですよ!」

元気そうに笑うスピン。
それと対照的に、暗い表情のドロッチェ。

「オイラは団長にきたえられたんですよ?これくらいヘッチャラチャラです!それに!あの時の団長は団長じゃなくてダークゼロッチュよ?団長はオイラたちのために戦ってくれていたじゃないですか!団長は何も悪くないです!むしろオイラ感謝しちゃってるんですよ!ね!団長!全然ヘッチャラですよ!団長のせいじゃないですよ!何も気にしなくていいんですよ!」

「…っ!」

「オイラたちの絆はそう簡単にはちぎれませんよ!ドロッチェ団は永久不滅ですよ!!」

顔を赤らめながら、誇り高いものを語るように、無邪気で無垢な笑顔で笑う。

「…ごめん…っ…怪我させて…!」

「…え?…団長?」

団長が、泣いてる?
体が、震えている。
団長が泣いているところを、初めて見た。

今までいろいろな表情の団長を見てきたけど。
泣いているのは、はじめてだった。

「大丈夫ですよ…。オイラこんな怪我痛くもかゆくもないですよ…?」

仲間を傷つけた。
最も起こしてはいけないことを、ドロッチェはおこしてしまったのだ。
ショックは大きい。

スピンは、ドロッチェの泣いている顔は見えないが、泣いていることはわかった。
ドロッチェの左腕が、スピンを強いようで優しく抱きしめている。

スピンもドロッチェの背中に包帯のまかれた腕をまわす。




涙って、不思議だなぁ…。





ぼんやりと思った。