二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

異世界リンク! ( No.10 )
日時: 2011/04/16 21:29
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: CrVsa58M)

「そういうことでな。 近日、オッサンを摘出する手術オペをすることになった」
「オッサン摘出ってそれ本体だも」

いつの間にか戻ってきていたプーニカが突っ込んだ。
プーニカは視界に入らない位置に居るから、迷子になったとしても気付けないだろうし、逆にいつも迷子になってしまうんじゃないかと心配にもなる為、非常に不便だ。
まぁ、好きで小さい訳ではないんだろうけど。

「!」
「エリザベス? どうかしたのか?」

突然、廊下の奥をガン見し始めたエリザベスに問いかける。
エリザベスが向いている方向———つまり、廊下の奥を覗いてみる。

そこには、さっき定春のことを診察してくれた獣医と俺たちの次に控えていた男が立っていた。
獣医はさっきのよりも真面目な顔をしているし、相手の男もかなり真面目な表情をしている。

「できるだけ手は尽くしたんですが、まァ、なにぶん老犬なもので、これ以上は身体の方が治療に耐えられないかと」
「…そうですか、金太郎…。 …親父には会わせてやれそうにもねーな」
「悪いんですか? おじい様の容体……」
「ええ、実はむこうもダメそうで……まさか、飼い主と飼い犬、同時に倒れちまうなんて」

話をしている2人は表情も声もとても悲しそうだ。

「そうですか、おじい様、本当に金太郎くんのこと可愛がってましたもんね」
「ジジイにジジ犬。 お互いに色んなもん失くして、最後に出会ったダチ公みてーなもんでしたから」

そこで代理で来ていたと思わしき男(恐らく爺さんの息子)が一度言葉を切った。

「バカたれどもめ…。 おっ死ぬ時まで一緒に行こうっていうんですかね……」

詳しい内容はいまいち分からないが、どうやら、「今にも死にそうな老犬の飼い主である爺さんも死にそうだが、容体が容体のため、どちらも会いに行くことが出来ない」ということらしい。

「…金太郎のこと…お願いします。 どうか、最後は穏やかに逝けるようにしてやってくだせェ」

息子の方が今まで以上に悲しそうに言った。

「すまねー…金太郎…。 さよならは言わねーよ。 ありがとうよ」

そう言って、息子は動物病院を後にした。
先生と2人っきりにされてしまった金太郎という名の老犬をプーニカと俺のみならず、ヅラと神楽も真剣な眼差しで見つめていた。