二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 欲望Vortex【イナイレ、ボカロ短編集】 ( No.10 )
日時: 2011/07/19 15:26
名前: 藍蝶 (ID: UgVNLVY0)
参照: 桜花火リク.《頑張った……んだよ!だけど、この駄作(;w;)

「満点夜空」


「北海道の自然っていいなーっ!」

円堂がキャラバンから降りて、一人だだっ広い草原に寝転がり、伸びる。
確かにとても空気が美味しい。東京みたいなコンクリートジャングルとは大違いの自然が、とても新鮮。

「キャプテンそんなにはしゃぐと目的地前にバテますよ?」

クスクスと笑いながら出てきたのは明日香。とても優しい雷門中マネージャーだ。
白恋から吹雪を引きぬく時、吹雪の誘いでついてきた白恋出身の女の子。
そのまま雷門中に転校してきたが、吹雪は戻ってしまったので少し寂しそうにしていた。
それを見かねて今回の合宿は白恋と合同でしよう、と響木が提案してくれた。
ついでに、集合場所は白恋中という事でキャラバンを走らせている。
今は目金が酔った為、一時休憩という感じだ。


「あ、白恋中見えてきましたよ!」

明日香が指差したのは、懐かしの白恋中。
年中、と言う訳でもないが、降り積もった雪に囲まれた学校。
近くまで来ると、校門前で一人、白銀の髪の男の子がパッと顔を明るくさせ、手を振っている。

「……ぁ、吹雪君っ!と、わわ、とととぁぁぁっ!!」

身を乗り出し過ぎたせいか、キャラバンの窓からあえなく落下。

「うわぁぁぁぁっ、琴峰さぁぁんっ!」
「琴峰っ!」
「古株さんっ!車っ!車止めてくださいっ!」
「明日香ちゃんっ!」

上から壁山、円堂、風丸、木野。
他の皆も青ざめていく。

「うわったぁぁ〜、痛ぁ……」

生きていた。(いや、軽傷だった)

「明日香ちゃんっ!大丈夫!?」
「ふ、吹雪君……あはは、大丈夫」

急いで駆けつけてくれる吹雪に対し、軽傷の明日香。
何だが悪い気がして、苦笑いで答えた。
吹雪は絆創膏を取り出し、明日香の膝に貼った。

「落ちる時此処から落ちたんだね。下が雪だったから良かったけど、気をつけた方が良いよ?」

ニコッと微笑む吹雪。明日香の頬が少し染まる。

「明日香、大丈夫か!?」
「あ、キャプテン!うん、大丈夫!」
「そうか!あ、吹雪じゃないか!久しぶりだなっ!」

円堂が吹雪に気付いたようだ。
いつもの笑顔で「吹雪!」と呼ぶのはもう皆の慣れではあったが、少し懐かしいようであった。

















時は移って合宿最終日。
白恋中と再び別れる前日の夜。

(う〜、何か、寝れないや)

夏未のあのコンパクトテントで寝ていたものの、中々寝付けない。
気晴らしに星空でも、見よう。
そう思った明日香は、テントから出て、キャラバンの上に登った。
が、すでに先客がいた。

「あっ、吹雪く……」
「(シーッ!)」

口に人差し指を当てて、静かに、のサインを送る吹雪。確かに横も下も寝ているのだ。五月蠅くしては安眠妨害である。

「吹雪君、何でここにいるの?」
「ん……何か、寝付けなくて。寝れない時っていつも……ていうかしょっちゅうここに登って星を見ていたんだ。あ、許可は貰ってるよ」
「へぇ……キャラバン移動中はいつも私グッスリだったや」

拗ねたような微笑みに、吹雪がはは、と笑った。

「明日、キミたちは帰っちゃうんだね」
「…………うん」
「明日香ちゃん、戻ってこれないの?」
「ん……お父さんの都合だから、無理なんです」
「そっか……」

吹雪が少し間を置いて話し始めた。

「……じゃあ、迎えに行くよ」
「…………ほぇ?」

思わず素っ頓狂な声を出してしまった自分が恥ずかしいと言わんばかりに、口を両手で塞ぐ明日香。

「今は無理だけど……そうだなぁ、十年もしたら、迎えに行くよ」
「え、あ、う……それって、その、あの……」

真っ赤になる明日香と爆弾発言者吹雪。吹雪も若干頬を赤らめていた。

「ね、約束だよ。破ったら爆発していいから」
「……ホント?」
「ホントだよ」
「じゃ、指きり」
「指きり?……まぁいいか。ふふ」


絡んだ小指の先には、祝福してくれてるような、満点夜空。