二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 欲望Vortex【イナイレ、ボカロ短編集】 ( No.27 )
- 日時: 2011/07/31 19:00
- 名前: 藍蝶 (ID: UgVNLVY0)
第1話「鏡と導きと少女」
「円堂ーっ!行くぞ!」
青いポニーテールが特徴的な少年、風丸が駆け足で10分程部室の入口で待っている。
元陸上部だからだろうか、全く疲れた様子を見せない。
しばらくすると部室の中から「あぁ、すぐ行くから先に行っててくれ!」と元気な声が返ってきた。
風丸ははぁ、と溜息をもらし
「分かった!すぐ来いよ!」
とだけ言って走り去って行った。
一方元気な声の主はというと、
「あれー?ねぇぞ、俺のグローブ!どこやったんだっけ……」
部室で一生懸命鞄を漁りグローブを探していた。鞄の中身全部落とすも無く、ロッカー調べてもなく、教室にも置いていかず、家にも忘れていない。
「仕方ないな、確か予備が……」
と、部室を出ようとした時、異変を感じた。
「開かない!?」
何度もガチャガチャとドアを開けようとする。しかし全くもって開かない。それどころか外のメンバーが気付いた様子さえない。
「何で開かないんだよ……」
《お答えします。私が此処を封鎖空間にしました》
「あ、そうか……っえぇ!?いや誰だよ、封鎖空間!?」
頭の中に突然声が響いて、それが喋りかけてきたとしたら驚きは必然である。
謎の声は、話を続けた。
《誰、という質問にはお応え出来ないわ。封鎖空間、一時この空間と中の物質を表世界から切り離しているの。よって貴方はこの世界に存在しない人物と成りえています。あぁ、他の方の記憶はいじって置きましたから御心配、》
「違うよ!早く戻せって!封鎖空間とか記憶とか知らないけど、早く戻せ!」
《話、最後まで聞く事ですよ。横の鏡を見てください》
仕方なく横を向いてみると、いつも通りの縦長の鏡……ではなく、漆黒の何かしか映っていなかった。影に少女の人影が見える。
「うわ、何だコレ!?」
そう言って手を鏡の部分に伸ばすと、鏡の中から白い手が伸び、円堂の腕を掴み引っ張る。
「うぉえぇぇぇぇ!?」
《まぁ、御心配なく。弄る物は弄っておきますから》
一気に腕を引く力が強まった。途端に円堂の体は漆黒の鏡の中へ……—————————
「あ、れ?俺生きてる」
「ふふ、死ぬ訳ないでしょう。ドルビア君……あ、あちらの世界では円堂君、だったわね」
後ろに振り返ると、栗色の長い髪を少し巻いて上品な仕草をする少女が。
「夏未!?どうしてお前……」
「私は”夏未”じゃなくて”ナツミ=K=ユーオラス”。貴方の世界の”雷門夏未とは違うわ、別人よ」
よく分からない言動と全くもって分からない世界に円堂はただ口をパクパクさせて驚いているだけ。
でも夏未、否ナツミは上品な微笑みから真顔に変えてこう告げた。
「私たちの世界にいる貴方は、今危機に立たされている。異次元空間操作は禁断の書物に書かれてあったものだけど、今回はこれしかないの。お願い、円堂君。私たちに力を貸して……」
ナツミが円堂の右手を両手で握りしめた途端、漆黒の空間が晴れた。