二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 欲望Vortex【イナイレ、ボカロ短編集】蟻様、リク完了です ( No.37 )
- 日時: 2011/08/03 17:28
- 名前: 藍蝶 (ID: UgVNLVY0)
第4話「アキと血塗れた図書室と行方不明の少女」
「そんなに怒らないでくださいよぉ」
「でもアレは大事なものなんだぞ!」
「まぁまぁ。それより完成したんですよ、円堂さんの、」
ハルナがポケットを漁り始めた時、
<ピーッ、ピーッ>
「あれ?通信?珍しいなぁ。あ、円堂さんちょっとごめんね」
そう言って入口付近の壁に取り付けられたI●odの様なものの画面を押すと、パッとナツミが画面に映った。
「あ、ナツミさん!ナツミさんからの通信なんて、さらに珍しいですね」
「そんな事言ってる場合じゃないわ!」
のんきに喋るハルナに対して、ナツミはとても焦ってるようである。
「どうしたんですか?」
「セトリアさん……アキさんが、行方不明なのよ!」
「ええぇ!!?」
「え……!?」
話によると、寮のルームメイト曰く数日前からアキが見当たらなくなり、別の部屋にでも来ているのかと思って
他の部屋を片っ端から回るもいないし、挙句の果てには通信さえ繋がらなくなり、顔面蒼白になったという。
「捜索に当たれって事ですね。分かりました、出来る限り探します!」
プツッと通信が切れたと同時に、円堂が慌てて喋りだす。
「アキはさっきまで俺と一緒に居たぜ!?それで何とかの陣でここまで送ってくれて……」
「その話、本当ですか!?どこに行くとか言ってました!?」
「あぁ、薔薇の書斎って所に……」
その言葉に、ハルナの顔が青くなった。
「薔薇の書斎……って、それ、完全に死亡フラグ立ってるじゃないですか!通信はいいです、早く行きましょう!アキ先輩が移動の陣書いたんですよね。まだ残ってたらいいですけど!」
バンッ!と勢いよくドアを開けると消えかけの白い魔法陣が。
「この書き方、アキ先輩だ……!よし、飛び込みますよっ!」
そう言って円堂を担ぎ、魔法陣に飛び込んだ。
《キィィィィン》
廊下の隅にあった魔法陣から円堂と、それを担いだハルナが。
「ちょ、音無!?いや、ハルナ!だ、大丈夫なのか!?」
「円堂さんは軽い方ですよ。薔薇の書斎はこの先です!」
すると何処からか箒を取り出し、ハルナはそれに跨った。
「飛ばします。振り落とされない様に!仮にも……私は校内で箒の使い方が荒い人第1位なんですから!!」
次の瞬間ビュンッと箒がジェット機並みの速さで走り始めた。途中で壁や床に箒や足がぶつかりまくる。
「うわぁぁぁぁっ!ハッ、ハルナーーーーっ!これ死ぬ!俺死ぬ!!」
「我慢してくださいっ!すぐっ!着きます!っあ!見えました!ここ一番気をつける所ですよーーっ!!」
ハッ!!と言うと箒が急停止し、反動で一回転。ハルナは何ともない、と言わんばかりにそのままだが、円堂は振り落とされてしまった。
「うぐ……着いたか?薔薇の書斎」
「えぇ、着きました。でもドアが情報因子”錠(ロック)”で閉じられています」
「……それ、解除出来るのか?」
「勿論。私の能力は可能ですよ」
ハルナがドアに手を翳し目を閉じた。しばらくすると手が蒼い光で包まれ始める。
目を開いた途端、
<パリィィィィンッ!!>
目に見えない防御壁(シールド)は硝子の様に割れて散った。
「ハルナ、すげぇな!早速入ろ、」
「待って!」
ドアノブに手をかけた時、ハルナに声で止められた。
「一つ……言っておきたかった事がありました」
「何だ?」
「少し長くなりますが」
「おう、いいぜ。でもなるべく早くな!?」
「えぇ。……一年前、同じように一人の少女が失踪する事件がありました。その人は、この薔薇の書斎の一つの書物の封印を偶然にも解いてしまったのです。それ以来彼女はこの書斎から出て来る事はありませんでした。一部の人達は言ったのです。”これは、禁断を解いた報い”だと。少女の名前は……」
「きゃあああああああぁぁぁぁぁっ!!!」
書斎の部屋から、少女の叫び声が聞こえた。
その声の主は、
「アキ!!」
円堂は耐えきれず、思い切りドアを開けた。
そこにあった光景は。
新鮮であろう血に塗れた床。破壊された本棚、机。散らばった書物と千切れた刺付きの太い蔦。
目の前には無数の蔦が意思を持っているように舞い、その中の一つが掴んでいるのが……アキ!!
「アキィィっ!!?」
「アキ先輩っ!!!」
ボロボロのアキは力なく項垂れ、自分を締め付けている蔦に体を委ねている状態。
最後に、
「ドル……ビア……君」
とだけ呟いて、血と共に大理石の床に叩き落とされた。
「アキッ!」
円堂がアキに駆け寄ろうとするが、アキを縛っていた蔦がその道を阻む。
「あはは、愉快愉快。馬鹿みたぁい」
蔦の根元に隠れていたのは、薄紫の髪をひとくくりにして垂らしていて、白い、もうボロボロの着物を着ており、ケタケタと残酷に笑う少女だった。
その姿にハルナが確信を抱いたように呟いた。
「一年前消息を絶ったとされていた少女の名前は……
フユカ。フユカ=アイリーン」