二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 欲望Vortex【イナイレ、ボカロ短編集】蟻様、リク完了です ( No.45 )
- 日時: 2011/08/04 09:18
- 名前: 藍蝶 (ID: UgVNLVY0)
- 参照: 紗夜リク.《やっべ、シリアスと甘が9:1になった》
「赤色マントとその瞳」
影山が死んだ。
そのニュースを見た時、帝国に関わっていた有人含む人物たちは全員テレビに必死に噛みつくように見ていた。
影山が最後にルシェに送った可愛らしいオルゴール。そのどこか悲しげな音色は、影山の壮絶なる人生を物語っているようだった。
「有人?聞いてる?」
有人にしてはめずらしくボーッとしてる。先程から何度も話しかけてるのに。
「有人ー?……有人っ!!」
「っ、あ、すまない……何だ?」
「午後のミーティングもうすぐだよ」
「そうか」
今まで有人の考える事は分からない事が多かった。でも今は手に取る様に分かる。
きっと、影山の事だろう。
「……聞いて悪いかもしれないけど……影山の事、考えてた?」
しばらく沈黙が続いた。こうも続くとさも悪い事を言ったような罪悪感に蝕まれる。
やっと有人が口を開いた。
「だからどうしたというんだ」
有人らしい答えだった。言葉言葉に存在意義を考える。
「相談に、乗るよ」
「……しかし、」
「大丈夫。何でも言ってくれていいよ」
そう言うと、近くのベンチに座って有人は色々と話しだした。
「影山は、尊敬すべき人物だった。幼い頃あの園で影山に拾われなければ、きっとここにはいなかった。ありふれたただの中学生だったんだろうな。同時に憎むべき存在でもある。あの様な非常な行為はサッカー界では最も許されない。学校破壊、鉄骨、神のアクア、新帝国などがいい例だ」
有人の言う事は最もだ。影山がいなければ、もしかしたら雷門のサッカー部が廃部に等しい存在ではなかったかもしれない。
もしもだけど、全国大会では優勝を狙える強豪だったのかもしれない。
でも、それでは今いる有人はまだ園に居て、その手伝いでもしてたのかも。
「俺は悩んでいる。……影山の死を、悲しむべきか。それとも総帥の死を、喜ぶべきか。司令塔と言えども、悩み事の一つや二つ出来るものなんだな」
フッと有人が笑った。有人は見ている限りでは表情豊かだ。笑う時は笑う。悔しむ時は悔しむ。
でも、その瞳は見えない。大体分かるけども、目を隠すだけでこんなにも違うのか。
私は言った。
「有人はきっと自分の過去を分けちゃってる。真っ二つに」
「分けている?」
「そう。憎む過去と尊敬の過去。有人にとって二つの過去で影山を二人にしてるんだと思う。”影山”と”総帥”。私には有人に気持ちを完全に紐解く事は無理。でも、何となく分かる気が……するな。過去を完全にすてるなんて誰にも出来ないよ」
ニコッと私も笑った。ちょっと顔が引き攣ってる感じがするけど。
有人はそうだな、とだけ言うと私が見えない方へ顔を向けた。
ズズッと鼻を啜る音が聞こえて、泣いてる?と思い横顔を見てみる。
ゴーグルを外し、あらわになったその紅い瞳には、少し濁った滴が溜まっていた。
初めて見る気がした。有人の泣顔を。
私は有人を後ろから優しく抱きしめた。
「なッ……」
とっさに振り向いた有人の顔は真っ赤だった。涙のせいなのか、羞恥とかなのかは知らない。
ただ、有人のドレードマークの一つである瞳より明るい赤色のマントに顔をうずめた。
「全部終わったら、墓参りにでも行こうよ。佐久間さんとか連れて」
「……あぁ」
ガルシルドの野望を打ち砕くまで待っててください、と心の奥底でポツンと呟いた。