二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 54章 答え ( No.101 )
- 日時: 2018/02/13 19:13
- 名前: 霧火 (ID: OGCNIThW)
「フェイクさん。アキラはどうすれば目を覚ますの?ポケモン達を盗んだ真犯人はどこに居るの?
貴女は一体何者なの?」
リオは自分の下に居るフェイクに捲し立てる。
山男とナツキがそんな彼女を呆然と見つめる中、フェイクだけは苦笑してリオを見た。
「もー、そんな一気に訊かないでよー…ボクの口は1つしかないんだよー?」
フェイクの言い分は尤もで、リオは言葉に詰まる。
その事に気を良くしたのかフェイクは「それと、」と続ける。
「お腹の上に乗っかられると喋り難いから、退いてくれない?」
薄ら笑いを浮かべ、フェイクは馬乗りになっているリオの太股を叩く。
「…っ、でも退いたら貴女は逃げるでしょ?」
「こんな無駄にキツく縛られちゃ逃げられないって。シンボラーもボールに戻したしー」
「嘘の塊の様な貴様を誰が信じられるか。…まぁ、少年が目覚めるまで逃がす気も無いがな」
「黙れオヤジ。全っ然活躍してないくせに、偉そうな顔しないでくれるー?すっごい不愉快☆」
満面の笑みで毒を吐くフェイク。
頭に血が上り、今にも掴み掛からんとする山男をナツキとコロモリが必死に止める。
この状況にそぐわないコントみたいなやり取りに、リオは顳かみを押さえる。
そんなリオに視線を戻したフェイクは小さく笑う。
「ボクはその辺の往生際が悪い小物と違って無駄な抵抗はしないから安心して良いよー」
「それは、」
──嘘?
リオが続けるより先にフェイクは先程まで浮かべていた、人を馬鹿にした笑みではない──綺麗な笑顔を
見せた。
「さぁね。信じる信じないは君の自由だよ」
「……分かったわ」
少しの間を明けてリオはフェイクの上から退き、フェイクを壁に寄り掛からせる。
それにフェイクはにっこり、と効果音の付きそうな笑顔をリオに向けた。
「さて。体がすっかり楽になった所で、早速君の質問に答えていきますかー…まずは最初の質問から。
赤髪の彼なら最初に言った通り、ちゃーんと目を覚ますよ。ただ《催眠術》は掛かりやすい人と
掛かり難い人…個人差があるんだー。アキラ君は前者みたいだから、起きるのに時間が掛かってるだけ。
心配しなくても大丈夫だよー」
リオはアキラに視線を向ける。
未だに目を覚まさないアキラだが、時折手や足が動いたりしているので、フェイクの言う様に
命の心配はしなくて良さそうだ。
リオは静かに息を吐く。
しかし、それでもまだ半信半疑の人物が居た。
「本当だろうな!」
その人物──山男は低い声に怒気を含ませる。
フェイクは笑顔のまま…
「現在、この耳はムサいオヤジの声を生理的に受け付けておりません」
言ってのけた。
それはもう、清々しいくらいに…
「こ〜む〜す〜めぇええ!!!」
「うわあぁ!幾ら悪者と言えど、身動きの取れない人間に手を上げるのは些か問題があると思いますよ!?」
怒りで顔を真っ赤にして、再びフェイクに掴み掛かろうとする山男の腹に腕を回し、早口で説得するナツキ。
(さっきから思ってたけど、フェイクさんってあの山男さんに辛辣な気がする)
否、気がするのでは無く、正しくそうなのだが…
「じゃあ、次の質問の答え行くねー」
「…あ、お願いします」
あくまで山男は無視する方向らしい。
グルグルと両腕を振り回して奇声を上げている山男から顔を逸らし、フェイクは「えっとね、」と呟く。
「大事な物を失くした時って、つい色んな所を捜しちゃうよね。でも結局自分のポケットの中にあった…
なーんて事、あったりしない?」
「…そこまで極端じゃないけど、たまになら」
リオの言葉にフェイクは満足そうに頷く。
「それと同じ。視野を広げすぎるのは、かえって何かを捜すのに不利って事」
(つまり…犯人は遠くに行ってないって事?)
口許に手をやり、考え込むリオにフェイクは目を細める。
「…で、最後の質問。ボクにとってはこれが1番重要なんだけど」
少しだけ低くなった声音にリオは顔を挙げた。
フェイクが纏う空気が変わる。
「ボクはある巨大組織の特殊部隊に所属してる。今はあまり大きな活動はしてないけど、お偉いさんは
そのうち世界がビックリする様な事をするみたいだよ。今回の事件はボクが勝手にやった事だけど…
いつか、今日の事が可愛く思える日が来るんじゃないかな」
そう言って笑ったフェイクの顔は綺麗なのに、どこか恐かった。
列車内が静寂に包まれる。
とても何かを言える雰囲気では無かった。
「……」
何分…否、何秒経った頃だろう。
ガガッ、という無線の様な音が響き「あー、ボクの無線だー」というフェイクの声により、リオ達は漸く
この張り詰めた空気から解放された。
「はいはーい、もしも……って、煩ーい!もう少し小さな声で喋ってよ。ボク?ボクは絶賛縛られ中だよー。
…いやいや、ふざけてないって。捕まっちゃったの。うん、マジです。そっちの状況はどう?
……え?」
楽しそうに無線の相手と話していたフェイクの声が小さくなる。
そして驚いた様な、困った様な、複雑な表情のまま…
「……失敗した?」
ぽつり、と呟いた。