二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 6章 決着、遭遇 ( No.12 )
- 日時: 2020/06/23 18:42
- 名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)
イーブイを目掛けてヒトモシの炎が襲い掛かる。
ヒトモシは攻撃力こそないものの、代わりに特攻が高いポケモンだ。
特にリオはこの4年間(……と言っても修行したのは2年程度だが)その特攻を重点的に上げてきた。
(最初に1撃当ててダメージを与えたし、この攻撃が決まれば間違いなくイーブイは戦闘不能。
アキラはこの状況をどうするのかしら?)
そう思い、リオはアキラを見る。
「なっ……」
リオは驚愕する。
何故なら不利な状況だというのに、アキラは慌てるどころかバトルが始まった時と同じ、
余裕の笑みを浮かべていたからだ。
そして、
「決めるぞ!《目覚めるパワー》!」
イーブイは透き通った水色の球体を自分の周りに浮かび上がらせると、ヒトモシに向けて放つ。
球体は炎を掻き消すと、そのままヒトモシに命中した。
「ヒトモシ!!」
ヒトモシはあまりの衝撃に耐え切れず、岩の上から地面へと落ちる。
「ヒトモシには悪ぃが、男として、そう何度も喰らってやれねぇんだ」
こんな簡単に技を破られると思ってなかったリオは衝撃を受けながらも倒れたヒトモシに近付く。
「ヒトモシ大丈夫!?」
リオの問い掛けに頷いて立ち上がるヒトモシだが、想像以上にダメージが大きい。
「1回喰らっただけでこのダメージ…《弾ける炎》を消し去った事といい、今のタイプは
無難な所で〝水〟って所かしら」
《目覚めるパワー》は使うポケモンによって威力もタイプも変わる技だ。
しかし同じポケモンでも炎や水タイプの《目覚めるパワー》を覚える場合もある。
要するに決まりが無い、大きく言えば無限の可能性がある、そんな技なのだ。
「ご名答。水……正に俺にピッタリだろ?」
「どこが?」
「水も滴るっつー意味で」
・
・
・
。
「…………」
「だ、黙るなよ!ツッコミも無ぇとか、軽く傷付くだろ!」
顔を赤く染めて怒る主人にイーブイは呆れた眼差しを向ける。
そんなイーブイに冷静さを取り戻したのか、アキラは小さく咳払いをしてリオとヒトモシを見据える。
それに気付いたリオもまた、次に来るであろう攻撃に身構える。
(元々ヒトモシは体力が少ない。あと1撃与えれば俺達の勝ちだ。だが、最後まで諦めないのが
リオだ。逆転勝ちを狙ってリオは必ず大技で来る!)
(最初に攻撃を当てたとはいえ、こっちも今の攻撃で相当ダメージを受けた。多分あのイーブイは
攻撃より特攻を重点的に強化されている。それなら確実に勝つ為に、アキラは絶対あの技で来る!)
2人が動いたのは同時だった。
「行くぞイーブイ!最大パワーで《目覚めるパワー》!!」
「決めるわよヒトモシ!全力で《弾ける炎》!!」
ヒトモシは一回転して今までで1番大きな炎を、それに対抗するようにイーブイは大きく体を震わせ、
透き通った水色の球体を飛ばす。
弾ける炎と目覚めるパワーがぶつかり合い、辺り一面に水蒸気が霧状に発生する。
(霧が晴れた時、立っていた方の勝ち!)
リオは唾を飲み込む。
暫くすると霧が晴れ、2人は同時にフィールドを見遣る。
「ヒトモシ!/イーブイ!」
そこには、ぐったりと横たわっているヒトモシとイーブイの姿があった。
「ヒトモシ、イーブイ、共に戦闘不能。よってこの勝負……引き分け!」
2人が呆然とする中、ムトーの声が静かに木霊した。
「初戦は勝利で飾りたかったけど仕方ねぇな!イーブイは本当によく頑張ってくれたしな。
……と言うわけでリオ!バトルも済んだ事だし行くぞ、冒険の世界へ!」
「水を差すようで悪いんだけど、あと少しだけ待ってくれる?」
「ヒトモシ達も回復して元気になったしいざ出発!」と意気込むアキラに、申し訳なさそうに
リオが小さく挙手をする。
「何だよ忘れ物か?」
「……うん。ごめん、すぐ戻るから!」
頭を下げて謝ると、リオは草むらの中を駆けて行った。
「4ヶ月分のポケモンフードと、少ないけど木の実です」
「……いつもすみませんな、リオさん」
「いえ、私の方こそ暫く食料を届けるのが難しくなっちゃってごめんなさい」
リオとヒトモシは【電気石の洞窟】とは別の【天気研究所】裏にある洞窟の中に居た。
洞窟の奥に居るらしいポケモンに食料を届ける為だ。
「相変わらずあの者は頑固者でして少しもあの場から動かんし、私以外から食べ物を貰おうとせんのです。
……ですが、リオさんにはあの者も本当に感謝しとる筈です」
リオは洞窟の奥にどんなポケモンが居るのかは知らない。
しかし、小さい頃に偶然この洞窟に入り老人の
「奥にポケモンが居るが殆ど飲まず食わずで、ポケモンフードを食べさせてやりたいが、
自分は此処を離れられない」
……という話を聞いて以来、こうして月に1度ポケモンフードと木の実を届けている。
きっと騒々しいのも人間も嫌いな子なんだと判断したので、当然家族にも内緒だ。
『モシモシ?』
静かに話を聴いていたヒトモシが遠慮がちにフードを引っ張る。
目だけをヒトモシの方に動かすと、ヒトモシは入口の方を指差した。
「うん、そうよね。じゃあ友達を待たせてるので、私はこれで……」
「旅に出るんでしたな。どうかお気をつけて」
「はいっ、ありがとうございます!」
リオとヒトモシは笑顔で老人に手を振って洞窟を出た。
その時、奥の方でポケモンが咆哮したがリオ達は既に洞窟を出た後で、その声が聞こえる事はなかった。
「さて、用事も済んだ事だし戻りましょ。ヒトモシ、しっかり掴まっててね」
ヒトモシが頷いたのを確認するとリオは靴とニーソックスを脱いで手に持ち、水の中に足を入れる。
この川は深いと思われがちだが実はそんなに深くなく、靴を脱げばこうして簡単に歩いて渉れたりする。
……まぁ、これはこの辺りに棲む野生のポケモンと仲が良いリオにしか出来ない芸当だが。
「ん?」
律儀に道を開けてくれる水ポケモン達に感謝しながら川を渉っていると、視線の先に1匹のポケモンが居た。
そのポケモンはリオが今し方出て来た洞窟を見上げている。
子馬のような体躯に白い毛並み、頭にある赤い鬣は風でゆらゆらと揺れ、一本角は太陽の光を浴びて
キラキラと輝いている。
(水の上に立ってるから、あの子は水タイプかな?それにしては見た事が無いポケモンだけど)
リオが子馬ポケモン(勝手に命名)を観察していると、ふと目が合った。
視線を逸らさずにそのまま見つめ合う。
そして、
「っ!」
一鳴きしてリオの目の前まで一瞬で距離を詰めると、そのまま飛び跳ねて去って行った。
(今、匂いを嗅がれた?)
「何だったの?一体……」
リオは不思議なポケモンとの遭遇に戸惑いながらも、アキラが待つ家へと急ぐのだった。
リオvsアキラの幼馴染対決は引き分けで終わりました。
そしてリオとヒトモシは不思議なポケモンと遭遇しました。
あえて名前を表記していませんが、分かる人には分かるかもしれません。
次回、いよいよ旅に出ます(多分!←) では、次回もお楽しみに!