二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 61章 リオvsカミツレ ( No.123 )
- 日時: 2018/02/13 21:38
- 名前: 霧火 (ID: OGCNIThW)
「バトルを始める前にルールを説明するわ」
「ルール?」
リオは首を傾げる。
カミツレは唇に人差し指を当てて妖艶に笑う。
「ふふ。このジムではポケモン達にジム全体を使ってバトルしてもらうの。
ジェットコースターを使うも良し、数カ所ある足場を使うも良し。万が一落ちても
下にはネットが張ってあるから心配はいらないけど…ポケモンがネットに落ちた場合、
その子は戦闘不能としてカウントするわ」
「…随分変わったルールですね」
つまり、どんなにバトルをしているポケモンの体力が有り余っていても、ネットに落ちてしまえば
トレーナーはポケモンを交代せざるを得ない、という事になる。
「あと…私はこの場から動かないけど、戦況を見たり細かい指示を出したいのなら、チャレンジャーも
ジェットコースターに乗って移動する事が可能よ。足場に設置してあるスイッチを踏めば、ポイントが
切り替わってジェットコースターの進むルートも変わるわ」
一息つき、カミツレはリオを見据える。
「長くなっちゃったけど、大体のルールは分かったかしら?」
「はい」
「それじゃあ始めましょうか。審判お願いね」
カミツレは傍らに付き従っていた若い女性に声を掛ける。
茶髪の女性は頷くと腕を上げる。
「ではこれより、ライモンジム、ジム戦を始めます。使用ポケモンは3体。先に3体戦闘不能、
又はネットに落ちた方が負けとなります。では両者、ポケモンを!」
「エモンガ、スポットライトの中へ!」
『エモッ!』
カミツレが繰り出したのはモモンガに酷似した姿の、電気袋を持ったポケモン──モモンガポケモンの
エモンガ。
スポットライトの下に降り立ち、ポーズを取る姿は可愛らしいが表情はキリッとしている。
「エモンガね…それなら私は、バルチャイ!」
対するリオの先発はバルチャイだ。
「バルチャイ…?」
(!?何で電気・飛行タイプのエモンガに…相性は最悪なのに……)
リオの選択にカミツレは目を瞬かせ、アキラは驚愕する。
「来ないならこっちから行きます!バルチャイ、騙し討ち!」
バルチャイはフィールドに立ったままのエモンガに接近すると、後ろを翼で指す。
そして後ろを振り返ったエモンガの背中を思い切り翼で叩く。
エモンガは突然の背中の痛みにピョコピョコ跳ね回る。
「エモンガ、お返しよ!燕返し!」
『〜ッ、エモッ!!』
エモンガは腕のマントを広げて上昇すると、一気に滑空して物凄い速度でバルチャイに体当たりする。
「乱れ突き!」
バルチャイも負けてはいない。
後ろに傾きかけた身体をなんとか踏み留め、接近したエモンガの額を鋭い嘴で突つく。
3回突ついた所で攻撃は止まり、エモンガは再び上昇する。
バルチャイも後を追って翼を広げ上昇した。
「エモンガ、ボルトチェンジ!」
『エモ〜…ン、ガッ!』
エモンガは指先から球状の白い電気をバルチャイへと放つ。
効果抜群だが、バルチャイの闘志はまだ消えていない。
「バルチャイ反撃!風起こ…!?」
リオは口を開けて固まった。
攻撃しようとしたエモンガの身体が、吸い込まれる様にカミツレの持つボールへと戻ったからだ。
「《ボルトチェンジ》は面白い技でね。相手を攻撃したと同時に他のポケモンと入れ代わる技なの。
…という訳でエモンガ交代。エモンガ、スポットライトの中へ!」
流れる様にカミツレはボールを投げる。
姿を現したのは又してもエモンガ。しかし先程のエモンガより小柄で、目はクリッとしていて大きい。
「エモンガ、アクロバット!」
エモンガは高速で、軽やかに動き回ってバルチャイを翻弄する。
そして焦っているバルチャイの背後を取ると一回転して、その勢いで攻撃する。
攻撃が急所に当たり、バルチャイの身体は下へ真っ逆さまに落ちる。
「バルチャイ!」
「これでフィニッシュよ。電光石火!」
疲れが溜まっているバルチャイに、光の速さでエモンガが迫る。
「リオ!このままだとネットに落ちるぞ!!」
(バルチャイの落下先は色の付いていないレール。そして、その近くには赤色のレール……)
キィーッ
(一か八か、賭けるしかない!)
「羽休み!」
指示を出したと同時に、リオは走って床の赤色のスイッチを押した。
スイッチの色は赤からピンクへ変わり、ポイントが切り替わったジェットコースターは
落ちて来たバルチャイを乗せて進む。
『チャ、イ…』
バルチャイは羽を畳み目を閉じる。
見る見るうちに治っていく傷に、カミツレとエモンガの表情が変わる。
「…回復し終わる前に決めるわよエモンガ。アクロバット!」
滑空してバルチャイを追うエモンガ。
しかしジェットコースターの速度は速く、エモンガは中々攻撃に移れない。
そして──
『チャチャイ!』
「よし、回復完了!風起こし!」
元気を取り戻したバルチャイは、滑空していたエモンガに下から強烈な風を起こす。
四方八方に飛ばされて目が回ったのか、エモンガの目は渦巻きを描く。
『エ、モ……』
「エモンガ!?」
「チャンスよバルチャイ!上昇して乱れ突き!!」
フラフラと足場に降り立ったエモンガに、勢いを付けて鋭い嘴の突きをお見舞いする。
1回…
2回……
3回………
そして4回目の攻撃が急所に当たり、エモンガの身体は足場から落ちてネットに落ちた。
「エモンガがネットに落ちたので戦闘不能とします。よって、バルチャイの勝ち!」
『エモ……』
「戻ってエモンガ。貴女の華麗なバトル、美しかったわ…」
落ち込むエモンガをボールに戻し、カミツレはリオに向き直る。
「もしかして…バルチャイを出したのは貴女の作戦だったのかしら?」
質問を投げかけたカミツレにリオは頷く。
「飛行タイプのポケモンの多くは、飛ぶ際に風の影響を受けます。エモンガは滑空が得意なポケモン……
滑空とは鳥が広げた翼を動かさずに飛ぶ方法。そういった飛び方をするポケモン、
特にエモンガみたいに体重が軽いポケモンは余計風の影響を受けやすい。だから強烈な風が吹けば
必ずバランスを崩すと践んでいました。でもこの中は風なんて吹かないし《風起こし》を覚えているのは
電気タイプが苦手なこの子だけ」
リオは足元に降り立ったバルチャイの頭を撫でる。
「それで、いざバルチャイを出してダメージを与えてから《風起こし》で反撃しようとしても、
エモンガは想像以上に速いし攻撃してボールに戻ったり…ずっと翻弄されてばっかり。
正直バルチャイを出したのは、殆ど賭けでした」
「凄い覚悟ね…クラクラしちゃう」
カミツレはスポットライトを見上げると、目を閉じて息を吐いた。
「でも今度は私の番。ジムリーダーの名にかけて、貴女以上に輝いて貴女も、貴女のポケモンも
クラクラにしてみせるわ」
そう言って視線をリオに戻したカミツレは、綺麗で自信に満ち溢れた笑みを浮かべていた。