二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 66章 リオvsカミツレ⑥ ( No.131 )
- 日時: 2018/02/13 22:54
- 名前: 霧火 (ID: OGCNIThW)
「ゼブライカ、スパーク!」
カミツレの言葉が終わると同時に、全身に電気を纏ったゼブライカは駆け出した。
ジムの中だというのにゼブライカが駆ける度に雷鳴が鳴り響く。
(!さっきより速くなってる!)
「スモッグ!!」
リオは目の前に来たジェットコースターに乗り、声を張り上げて指示を出す。
煙で相手の視界を悪くして動きを封じる作戦だ。
しかしヒトモシが口を開けるよりもゼブライカは速かった。
ヒトモシは真正面から《スパーク》を受け、後方──カミツレが立つステージに吹っ飛ばされ、
床の上をゴロゴロと転がる。
言わずもがな《スモッグ》は不発だ。
「大丈夫!?」
一歩遅れてリオの乗ったジェットコースターが停まった。
リオはジェットコースターから飛び降りると仰向けに倒れているヒトモシに声を掛ける。
その声に目をカッと見開くと、足を上に挙げてヒトモシが起き上がった。
ゼブライカの踏み込みが甘かったのか、ダメージは少なそうだ。
安堵の溜め息を吐いた後、リオは考えを巡らせる。
(ゼブライカの《スパーク》は強力だけど、幸い《二度蹴り》はゴーストタイプであるヒトモシには
効果が無い。《ニトロチャージ》の方はゼブライカの動きを見るに、攻撃と同時に
自分の素早さを上げる技みたいだけど、ヒトモシには効果は今一つだから決定打にはならない……
でも、)
リオはレールの上に佇むゼブライカを見据える。
(あと1つ…最後の技が分からない。全部が物理技だとバランスが悪いから1つだけ特殊技かもしれないし、
攻撃力に長けているなら最後の技も物理技かもしれない。…どちらにせよ用心しないとね)
深呼吸して、リオは左側のレールを指差す。
「ヒトモシ!あのジェットコースターに乗って!」
『モシ!』
リオが指差した先には、バルチャイの回復の手助けをしてくれたジェットコースターが走っていた。
ヒトモシは頷くとジェットコースターに飛び乗る。
音を立てて動き出したジェットコースターをゼブライカは静かに目で追う。
「ゼブライカ」
『……』
ゼブライカは後ろ脚に力を入れ、レールを思い切り蹴った。
その跳躍力は凄まじく、軽々とカミツレ達の頭上を飛び越えレールに着地すると
ヒトモシのジェットコースターを追い掛ける。
エモンガとは比べ物にならない程のスピードでゼブライカは駆ける。
ヒトモシとの距離は徐々に詰められて行く。
その光景にアキラは息を呑み、リオは渇いた笑いを浮かべる。
「速ぇ…!」
「まさかこんなに速いなんてね…目覚めるパワー!」
ヒトモシは後ろを振り返ると冷気を纏った水色の球体をレール目掛けて放つ。
球体がレールに当たって弾けると、中の冷気が外に出て、レールの一部を瞬く間に凍らせた。
その上へタイミング良く(ゼブライカからすれば最悪のタイミングだが)乗ったゼブライカは脚を滑らせて
前に倒れる。
「ゼブライカ!!」
「チャンスよ!弾ける炎!」
「『!』」
いくら《ニトロチャージ》の効果で素早さが上がっているとはいえ、倒れた身体を瞬時に起こす──
況して攻撃を避ける事など出来る筈も無く《弾ける炎》を喰らったゼブライカの身体は
レールから落ちる。
背中を下にして落ちるゼブライカ。
このまま行けばネットに落ちたゼブライカは戦闘不能と見做され、リオ達の勝利が決まる。
「二度蹴り!」
『ブルルッ』
──だが流石はジムリーダーと、そのエースポケモンと言った所か。
ゼブライカは空中で体勢を立て直すと後ろ脚でレールを蹴り、ネットに落ちる事なく
カミツレが立つステージへ着地した。
「むー…やっぱりそう簡単には落ちてくれないわよね」
「ええ。それにしても、貴女のヒトモシ思ったよりやるわね。……ゾクゾクしちゃう」
「まだまだこれからです!もう1度、弾ける炎!」
恍惚としてヒトモシを見つめるカミツレ。
リオはバトルの流れを掴む為、直ぐさま次の指示を出す。
ヒトモシもリオの想いに影響されたのか、今までより速く、そして大きな火花を帯びた炎を発射する。
「ニトロチャージ!」
湯気と炎を纏ったゼブライカはバチバチと音を立てる炎の中に自ら突っ込んだ。
そして炎を通過すると、その先に居たヒトモシに攻撃する。
互いの技が相手に命中し、衝撃で数歩後退する2匹。
しかし思いの外ゼブライカのダメージは少なく、リオは誰に問いかけるワケでも無く、
只「どうして、」と疑問の声を漏らす。
その呟きに答えたのはカミツレだった。
「この技は貴女のヒトモシに大きなダメージを与える事は出来ないかもしれない…だけど、
炎を纏う事でゼブライカのダメージを軽減する事は出来るわ」
「!」
迂闊だった──そう思い、リオは唇を噛んだ。
確かにヒトモシを倒す決定打にはならない。だが技は形を変えて今、こうしてヒトモシを苦しめている。
(甘い考えは捨てなきゃ…そうしないと頑張ってくれたバルチャイやチラーミィ、
今戦っているヒトモシの頑張りを無駄にする事になる。……そんなの、)
「そんなの絶対に嫌!!!」
「「『!?』」」
突然叫んだリオにその場に居た全員が何事かと驚いて、体を硬直させた。
唯一ヒトモシだけは嬉しそうにリオを横目で見た。
「ヒトモシ、スモッグよ!」
『ヒト、モ〜……!』
「…ハッ!ゼブライカ避けるのよ!」
口から黒い煙を出すヒトモシを見て我に返ったカミツレが早口で言う。
しかし煙は広範囲に広がり、最早避ける事など不可能で、あっという間にゼブライカを包み込んだ。
カミツレの顔に焦りが見え始める。
「早く煙から脱出して!」
「逃がしませんよ!スモッグに向かって、弾ける炎!」
口から出る煙はそのままに。
蝋燭の炎を振って自分に点いている炎とは別の、火花を散らした炎を黒い煙へ向けて放つ。
炎は《スモッグ》に引火し、炎は大きさを増し──やがて爆発した。
「…ゼブライカ!!」
爆発で、将又爆風によってゼブライカは煙の中から出て来た…否、吹き飛ばされた。
何とか後ろ脚で踏ん張りネットに落ちる事は避けたが、ススで汚れた身体はフラフラだ。
暫く気丈にも立っていたゼブライカだが、とうとう前脚を折って座り込んでしまった。
「戦意喪失か…?」
アキラの呟きにリオはゼブライカを見た後、カミツレに視線を向ける。
(カミツレさんはゼブライカを戻す気は無いみたい。審判の人も何も言わないし…
つまり、バトルはまだ続いてる)
リオはゼブライカを指差し、そっと目を閉じた。
「…弾ける炎」
目を開けた時…果たしてリオにどんな光景が待っているのか──
あけまして…と言っても年が明けて2週間経ちましたが(遅い)おめでとうございます。
今年も亀更新になるかと思いますが、どうぞ《ポケットモンスターBW 道標の灯火》を
宜しくお願いします。