二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 69章 感化 ( No.138 )
- 日時: 2018/02/13 23:13
- 名前: 霧火 (ID: OGCNIThW)
「…ゼブライカ、ご苦労様。貴方の痺れる様な走り、とても素敵だったわ」
ゼブライカを戻したボールを見つめ、カミツレは小さく息を吐いた。
「……失敗しちゃった。火傷状態になっている時はダメージを受けるし、物理技の威力も半減しちゃうのに、
私は《放電》じゃなくて《スパーク》を指示した。あれだけヒトモシとの距離があれば、
先に倒れるのは火傷でダメージを負うゼブライカの方…そんなの、考えなくても分かる事。
普段なら有り得ないミスだわ」
目を伏せて静かに話すカミツレは、言葉とは裏腹に穏やかな笑みを浮かべている。
「だけどあの時は、全力で向かって来た貴女達にこっちも全力でぶつかりたい──只、そう思った。
それだけしか頭に無かった。…私の敗因は貴女達に感化されて熱くなりすぎた事ね」
カミツレはリオに近付き、手を差し差し出す。
その手の平には稲妻の形をした金色のバッジが輝いていた。
「負けてしまったけど、こんな清々しい気持ちでバトルを終えたのは久しぶり…ありがとう。
これが私に勝った証、ボルトバッジよ」
「ありがとうございます、カミツレさん」
リオはバッジを受け取って頭を下げると──糸が切れた様にその場にしゃがみ込んだ。
「リオ!?」
「大丈夫。…気を張りすぎてたみたい。疲れちゃった」
目を見開き慌てて駆け寄って来た幼馴染にそう返すと、アキラは呆れた顔をした後、静かに笑った。
斯くしてリオは激闘の末、4個目のバッジをゲットしたのだった。
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ジムを出たリオ達は一先ずアキラの家に戻る事にした。
ドアを開けて1歩足を踏み入れたアキラに続いて、リオも家の中に入る。
「「ただいまー」」
「お帰りなさ〜い」
「!お母 「リマさんじゃないですか!いらしてたんですか?こんな近いうちにまたお会い出来るなんて
嬉しいです!」 ……」
リオの言葉を遮り、前に出て出迎えた女性──リマに話し掛けるアキラ。
(…そのうち、ヨーテリーの尻尾でも生えて来るんじゃないかしら)
リオは半眼で目を輝かせているアキラをじとっ…と見つめる。
「アキラ」
「何だよリオ、今、折角俺が」
「帰って来て早々に悪いんだけど、ベッド借りても良い?…ちょっとだけ寝たいの」
「へっ?あ、あぁ…」
「ありがとう。じゃあ……」
リオはアヤネとリマに会釈すると、奥にあるアキラの部屋に向かって歩き始める。
やがてドアが閉まる音がして、それを合図にアヤネがアキラの肩を叩いた。
「リオちゃんどうしたの?何だかグッタリしてたけど…」
「カミツレさんとのバトルで疲れたんだと。今日のリオは叫んだり動き回ったり、とにかく大変だったしな」
アキラは近くにあった椅子に座ると、膝に乗って来たイーブイを撫でる。
「けど…大声出したり動き回ったからって、確かにあの疲れ方は尋常じゃねぇよな」
そう続けたアキラの顔は強張っていて、心配そうに袖を銜えて引っ張っているイーブイにすら気付かない。
(ポケモンが傷付いたら同じ様に痛そうな顔して、ポケモンが攻撃する時はこっちが震える様な気迫で…
ポケモントレーナーなら自分のポケモンが傷付いたら悲しむし、バトルで熱くなるのは
珍しい事じゃねぇけど……リオの場合、ちょっと違ぇんだよな。そう、まるで)
「リオ自身が戦っている様な、そんな感じ」
自分の考えていた事をそのまま口にしたリマに、アキラは驚いて顔を挙げる。
そんなアキラに微笑んで、リマは天井を見上げた。
「あの子はポケモンの感情に敏感だから……きっと、ポケモン達に感化されたのね。思えば3歳の、
あの日から…」
「リマ」
「…うふふ。久々にアヤネと会ったら、何だか昔話したくなっちゃった♪お父さんに今日はアヤネの家に
泊まりますって伝えに行くわね〜」
天井からアキラ達へと視線を移してにっこりと笑うと、リマはモンスターボール片手に外に出た。
白銀が空へと飛び立つのを目で確認した後、アヤネは体を伸ばした。
「…さて!リマのお泊まりも決まった事だし、今日はご馳走です!2人をビックリさせちゃうわよ!!
アキラも手伝ってー」
ウキウキと台所に立つアヤネに、アキラは何も言わなかった。
リマが続けようとした言葉もアヤネの気持ちも──アキラには分かっていたから。
「1人で無茶だけはしてくれるなよ。頼むから…」
誰にも聞こえないくらいの声で呟いて、アキラは目を閉じた。
更新が遅くなった上に短くてすみません!
ぽちぽち打っていた文章がパソコンの不調で全部消えてしまい、こんなに日が空いてしまいました…
更新が遅くなった分、次の更新は早めにしたいと思います。
それでは、次回もお楽しみに!