二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 75章 動き出す ( No.148 )
日時: 2018/06/09 12:39
名前: 霧火 (ID: RjvLVXA1)

扉を開けて足を踏み入れると、まず視界に映ったのは中央に置かれた漆黒のテーブルと椅子、
それに巨大なスクリーン。
テーブルの両側には白と黒のソファーが設置されていて、そこで横になって寛いでいた2人が
同時に体を起こした。


「ビッくん!おっかえり!」

黒のソファーから降りてぱたぱたと駆けて来たのは、腰近くまである白髪に赤い瞳、薔薇の模様が描かれた
黒のキャミソールを着た少女。


「おかえり、ビッちゃん」

白のソファーから降りてゆっくり歩いて来たのは、腰近くまである黒髪に青い瞳、蝶の模様が描かれた
白のビキニと同色のショートパンツを着用した少女。


髪と服の色が対照的な2人だが、顔は瓜二つだ。


「よう、モノクロシスターズ。自由奔放なお前等がここに居るなんて珍しいな」
「ボスに呼び出されたからね!アリスさんはとっても律儀なのだ!」
「眠かったけど…アリスもセシルも、遅刻しなかったもん」
「へー。偉いな、2人共」

自分の前に並んで誇らし気に胸を張るアリスと、目を擦るセシルにビッシュは顔を綻ばせ、頭を撫でる。
お世辞にも優しいとは言えない不器用な撫で方。


「えっへん!」
「……」

しかしアリスは満足げに笑って、セシルは恥ずかしそうに俯いた。


「…ビッシュってば罪作りな男だよねー」
「は?」

ビッシュの肩越しにやり取りを見ていたフェイクが呆れ眼で呟いた。
何の事だと言おうとしたビッシュの横を通り過ぎる。
この罪作りな仲間が、後ろで真っ赤な顔で震えている少女の非難を浴びる事は必至──それならば自分に火の粉が掛かる前に退散するに限る。


(ボクは何も聞こえなーい)


案の定聞こえて来た修羅場の様な会話に耳を塞いで、フェイクは我関せずとモンスターボールを拭いている
少女に近付く。


「お久ー☆メールも来てたんだー」
「…ボスは偉い。イコール、命令に従うのは道理。」


明るく声を掛けたフェイクに冷たい目を向けたのは、銀髪ボブヘアーの少女。
ヒウンシティでリオが出会った、コマタナを使う少女だった。


「相変わらずのボス主義思考だねーボクだったら集合なんて面倒だからバックれるのにー」

テーブルの上に腰掛けて笑ったフェイクにメールは目を細め、モンスターボールの開閉ボタンに指を伸ばす。
しかしボタンを押すより先にボールはフェイクに奪われてしまい、行き場を無くした指が固まる。
得意気にボールを玩ぶフェイクにメールは更に目を細めた。


「………返して。」
「もー、直ぐそうやってコマタナ出すの禁止ー!ほら、ちゃーんと時間通りに来たじゃんかー」

フェイクの言葉にメールは時計を見て──細めていた目を元に戻した。


「ボスの命令に背いたらダメだから。」
「んー…まっ、努力はするよー」
「…ダメだから。」
「はいはい」
「また漫才してら…相変わらず仲良いな、お前等」


ボールをメールに投げ返してテーブルから降りると、ビッシュが声を掛けて来た。
…若干窶れた気がするのは気のせいだろうか。


「生還おめでとー♪ところでさー、背中のは何?子泣き爺?」

ニヤニヤしながらフェイクはビッシュを、正確にはビッシュの背中で蠢く2人を指差した。


「ビッくん、だっこー」
「ビッちゃんなら2人くらい余裕」
「何だよその理屈!?普通に無理だからな!?つーかいい加減降りろ!」
「「やだもーん」」

ソファーの前で上体を反らすビッシュと、離れまいとビッシュの首と背中にしがみつくアリスとセシル。


(漫才してるのはどっちだよー)


フェイクがそう言おうとした時、突然メールが立ち上がった。
驚いてメールを見上げるとメールの目は真っ直ぐに時計の針を見つめていた。
そして時計から目を逸らすと、今度は未だに格闘している3人に近付く。


「そろそろ時間。ボスが来る。離れて席について。」
「分かってる!ほら、遊びは終わりだ降りろ!」
「だがアリスさんは断る!」
「右に同じく」
「…………」

キリッと答えたアリスとセシルにメールは黙る。
しかし何を思ったのかソファーの上に立つと、アリスとセシルの腰を抱き、あろう事かビッシュの背中に
足を乗せて2人を引っ張り始めた。


「いででででで!!おまっ…メール!俺様の首と腰は頑丈じゃねーんだぞ!?」
「ビッシュなら大丈夫。」
「だから何なんだよお前等!揃いも揃ってその理屈は!?」
「…むぅ」

そんな微笑ましい(?)光景に頬を膨らますシャルロット。
引き攣った顔でこちらを見たビッシュに、フェイクは笑顔で親指を立てる。


「やったねビッシュ!修羅場が増えるよ!」
「おいやめろ」

真顔でビッシュが突っ込んだ時、扉の軋む音と同時に1人の男が入って来た。
その瞬間、全員の視線が男へと向けられる。
白衣を整えながら男が口を開いた。


「楽しそうな所悪いけど、取り敢えずビッシュが可哀想だからアリスとセシルは離れようか?」
「「…はーい」」

渋々といった感じに離れた双子に男は頷き、続いてメールを見遣る。


「君もだよメール。足を退けて、席に座りなさい」
「はい。……ボスの仰せのままに。」


ビッシュから離れて深々と頭を下げたメールに、ボスと呼ばれた男はにっこりと笑った──





1ヵ月以上の更新停滞、大変申し訳ありませんでした…!
異常なまでの暑さにやられて文字を打つ意欲はおろか、正直パソコンに向かう気も起こりませんでした……
夏(というか暑さ)に滅法弱い人間なのでこれからの時期、更新が今まで以上に出来なくなるかもしれませんが
今までサボッた分、明日もう1話更新したいと思います。